今度こそ、処方薬の市販拡大なるか?

 医療用医薬品(処方薬)からのOTCへのスイッチ推進が言われ続けていながら、未だ目玉となるスイッチが行われず、他国から大きく遅れている日本ですが、例によって、日経が観測記事を27日掲載しています。

処方薬を大衆薬に転用しやすく 店頭販売を拡大
(日本経済新聞 2015.03.27)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H56_W5A320C1MM8000/

 年内に新しい仕組みを作るとのことですが、これまでも取組みが行われていないわけではありません。

 今回の報道のきっかけは、19日開催の規制改革会議で、健保連が2011年に日本薬学会がイッチOTC化を推進する医療用医薬品の候補として日本薬学会が選定した「一般用医薬品としても利用可能と考えられる候補成分」10成分のうち6成分(→TOPICS 2011.04.28)などについてスイッチした場合、日本全体では約1,500億円の削減効果が期待できるとのプレゼンを行ったもので、もしかすると厚労省は本当にこれらへのスイッチへ本腰を入れるのかもしれません。

第32回健康・医療ワーキング・グループ
(規制改革会議 2015.03.19)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150319/agenda.html

資料1-1 市販品類似薬の保険給付範囲の見直し等について(健保連)
スイッチOTC化について
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150319/item1-1.pdf#page=19

 しかし個人的には、日経の今回の報道には懐疑的です。

 というのは、なぜならこれまでも厚労省は、医療用医薬品のスイッチに対し、医師会や関係学会の顔色を見ながら、積極的に行ってこなかったからです。いくら健保連がシュミレーションで医療費が削減可能と言ってもおそらく掛け声でとどまるでしょう。

 このサイトの記事を読まれている方はご存知かと思いますが、それはこの間、メーカーの詳細な販売ガイダンスがあったにもかかわらず、いわば医師会の圧力によって「このお薬の使用は医療機関を受診された方に限られます」との文言を加えさせられた(→TOPICS 2013.01.09)エパデールのスイッチ問題や、上記にもある、「一般用医薬品としても利用可能と考えられる候補成分」(TOPICS 2012.11.01コメント)が2011年を最後に公表されていないことからもうかがえます。

厚労省のこれまでの不透明ともいえる対応については、批判や疑問の声があることは以前紹介しました。

TOPICS:
 2013.10.08 スイッチOTCの承認審査が不当に妨げられている(OTC医薬品協会)
 2013.01.11 一般用医薬品への転用の在り方などに関する質問主意書
 2012.12.28 スイッチOTCについてオープンな議論を求める要望書

一方、海外の状況ですが、スイッチで進んでいるのは、何と言ってもニュージーランドです。(オセルタミビルやファムビルの内服などもスイッチ)

TOPICS:
 2013.06.11 ニュージーランドのPharmacist Only Meidicines

 上記記事のコメント(→リンク)で書きましたが、日本のようにメーカーが一般用医薬品として開発したものを審議するのではなく、一定期間の使用経験で安全性が確認された成分について、メーカーがまず再分 類(処方せんなしでの販売を認める)の申請を行い、委員会では安全性や適正使用の他、社会の必要性などを検討して、適応症や販売の包装単位を決めて再分類 するという仕組みのようです。

Classification Process(MEDSAFE)
http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/classificationprocess.asp

 英国でも以前は、MHRA(医薬品庁)が、スイッチの方針を打ち出し、関係学会からの意見を収集しながらも、MHRAの主導で、シンバスタチン、アジスロマイシン(クラミジア限定)、タムスロシンなど日本では考えられないような成分もスイッチされています。(もちろん受診勧告などの仕組みも設けている)

 ただ、最近ではスイッチに関するガイダンスが示されてからは、少しスイッチの頻度は鈍っているように思われます。

TOPICS:
2012.12.07 医薬品の分類についての指針(英医薬品庁)

Guidance
Medicines: reclassify your product
(MHRA 2014.12.28)
 https://www.gov.uk/medicines-reclassify-your-product

 一方、米国では品目は少ないものの、生活者の利益を優先して、オキシブチニンの貼付剤などの独自の製品が最近スイッチされています。

TOPICS:
 2012.09.05 米FDA諮問委、オキブチニン貼付剤のスイッチを審議へ
 2012.11.10 生活者がOABの判断をすることは難しい(米FDA諮問委)
 2013.01.26 米FDA、オキシブチニン貼付剤のスイッチを承認

 米国のやり方は、承認の審議にあたってすべての事前の資料を公表し、諮問委員会で一般の発言も含めて審議するという方法です。
 
 また2012年3月には、OTCの活用を検討する公聴会もおこなわれています。

TOPICS:
 2012.03.01 OTCを活用した薬剤師の新しい役割を検討へ(米FDA)
 2012.03.23 OTCの活用を検討する注目の米FDA公聴会が始まる
 2012.04.23 OTC医薬品の活用を検討する米FDA公聴会(続報)

 振り返ると、日本のスイッチにおいては、メーカーは安全使用や適正販売ということばかりにものすごいエネルギーを投じる必要に迫られており、しかも医師会や関係学会の顔色をみなければならないという現状があります。

 こういった状況が続く限り、私は新たなスイッチはこれからも永久にすすまないと思っています。

 個人的には、厚労省が日経が報じた新たな仕組みをつくるのであれば、まず米国で行われたような公聴会を行い、どこまでがセルフメディケーションで対応が可能なのか、そしてOTC医薬品を活用しながら国が推進する地域包括医療の中で、医療との連携(受診勧告)をどのように行うかの議論と共通認識をつくることが必要ではないでしょうか?

 そして、承認前の情報の積極公開も必要かと思います。

 企業知的財産権とかの理由で 委員会は審議は非公開、承認審査書は正式に承認されてからでないと公開されないというのが現状ですが、スイッチすることがどこまで企業秘密になるのか正直なところよくわかりません。

 フッ化物洗口液(TOPICS 2015.03.13)に関する記事でも書きましたが、こういった情報の提示することなく、スイッチの可否をパブリックコメントにかけるのは、ナンセンスだど思います。

 厚労省には、生活者の視点で、どのような成分がスイッチ可能(必要)なのかということを議論したうえで、スイッチを実現しやすくする仕組みをまずは検討してもらいたいものです。

関連情報:TOPICS
 2012.11.01 エパデール問題、スイッチへの意義とプロセスの共通認識が必要
 2011.07.29 スイッチOTC医薬品の選定要件は?(厚生労働科学研究)
 2009.11.05 こんな進め方ではスイッチOTCが増えることはない


2015年03月30日 02:21 投稿

コメントが7つあります

  1. 処方薬はとにかく多すぎる。(休眠状態のものや、後発品もぞろぞろ出てきて、いや、厚労省の後押しで洪水のごとく出てきて、これだけの種類や数は全く不要だ・・・。患者の方が後発品の複雑なネーミングで訳がわからなくなっている・・・。)
    これは製薬メーカーや医師会の政治力によって、そうなっている。
    その被害を被っているのが、国民・・・。
    国民や患者の税金、保険料、そして、一部負担で、薬剤費は賄われているが。
    医者が薬剤費を捻出しているわけではない。でも、医者は自分たちの負担で処方薬を患者に出して、それを有難がるように仕向けている。
    これは医者や製薬メーカーが死に物狂いで守りたいとする国民皆保険制度にある。
    この制度は患者のためになっていないところが多い。むしろ、医者や製薬メーカーの金儲けのための制度となっている。
    でも、この制度も財政逼迫のもとで、破綻状態になっている。
    もう、今までのように、医者が無駄な処方薬を多く抱える時代を社会が許さなくなったのだ。それを医者や製薬メーカーがしっかりと自覚・認識しなければならない。
    厚労省や健保連は医者の顔色を伺って、OTC薬スイッチ化に遠慮するべきではない。
    厚労省や健保連は誰のために存在しているのか。医者のためか、それとも製薬メーカーのためか・・・。
    そうではないだろ・・・。国民や患者のために、その存在意義があるのではないか。
    国民皆医療制度に一番欠けているのは、軽・中・重病への適正配分が全く機能していないことだ。セルフメディケーションでまかなえる軽病や中病の一部にも、この制度の出来高払いを悪用して、薬剤費を湯水のごとく使っている。
    患者もOTC薬の全額負担に比べれば、処方薬の一部負担を有り難がって、薬剤費に対するコスト意識を失っている。それとともに、患者自身が薬漬けにされていることも分かっていない。
    セルフメディケーションは患者の健全なコスト意識と薬意識を高めることになる。
    ただ、それはあくまでもセルフメディケーションができる範囲内で、重病へと移行すれば、やはり、医者の診察により適正な薬物治療を受けなければならないが。
    セルフメディケーション→受診勧奨へとつなげる良環境を、変革するべき国民皆保険制度の下で早急に整備しなければならない。
    最後に、もう一度、言いたい。
    国民皆保険制度を悪用して、医者や製薬メーカーが処方薬を多く抱えて金儲けできる時代は、もう、終わった・・・・。
    日本社会全体(国民や患者も含めて)で、それをしっかりと認識するべきだろう。
    ただ、健全なセルフメディケーションの下で、OTCスイッチ薬をしっかりと受け継ぐ薬剤師、それを取り巻く面々も、そのことをしっかりと自覚・認識しなければならないが・・・・。

  2. 日経新聞の記事によるOTC薬スイッチ化の品目は過活動膀胱、プロトンポンプ、過敏性腸症候群などで、効果発現が比較的早く確認できるものに限定されていた。
    これらの品目に対して医師会の同意がどこまで得られるのか。特に、プロトンポンプ製剤などは医師の臨床的観察下におくべきものと、反論されることが予想される。
    過去からのスイッチ化の経緯を見てきて思うのは、常に医師会の反対で潰されてきたことだ。今回も、厚労省や政府がどこまで本気になっているかどうかわからないが、また、期待倒れになる可能性は十分にある。
    その典型が、エパデールだ・・・。
    医師会のゴリ押しで適正使用期間という試験販売が前提に課せられたことによって、日水製薬は製薬メーカーの金儲けとしての先行き不透明感を顕にして販売を中止した。
    残る一社の大正製薬も、このエパデールのスイッチ化販売への意欲低下が見られる。
    生活習慣病の境界領域におけるOTC薬スイッチ化は、このエパデールなどの事例によって暗礁に乗り上げてしまった。
    それならばということで、薬業界は検査薬からのアプローチによる生活習慣病スイッチ化を目論んで、自己採血検査などのセルフメディケーションから初めているようだが、これも、医師会から感染症などの問題等で理解が得られていない現状だ・・・。
    欧米に比べてはるかに立ち遅れた日本のOTC薬スイッチ化を促進させるためにはどうすればいいのか。
    解決策としてはスイッチ薬として相応しい品目の再検討(国民の生活目線でスイッチ薬を選定する仕組み作り)、そして、社会的コンセンサスと受け入れる側の環境整備などが必要で、それをもって、政府、厚労省の主導のもとで、エパデールのように中途半端なやり方に陥らないように、強引に推し進めるしかないのではないか。
    でも、それが複雑な利害を絡めた政府、厚労省にどこまで出来るかどうかだ・・・・。
    事の本質はそこにかかっている・・・。
    といっても、受け入れる側のドラックストアや大手スーパーなどは、志の高いOTC薬剤師などを軽んじて、医薬品たるOTC薬スイッチ品目を雑品化扱いして、チラシ等に出して儲けの出せる利益商材にしてしまうのだろな・・・。嘆かわしい話だ・・・・。

  3. 下記の理解でいいのでしょうか。
    勉強になりました・・・。有難うございます。
    ① 日経新聞に『処方薬を大衆薬に転用しやすく 店頭販売を拡大』という記事があった。
    処方薬(医療用医薬品)を大衆薬(一般用医薬品)に転用することを「スイッチOTC化」というが、この要望を従来の製薬企業からのみではなく、消費者や健康保険組合からも受け付ける仕組みとすることで、転用を促進しようということらしい。
               ↓
    ② 日本における大衆薬の危険性と実現不可能な解決策
               ↓
    ③ こういった諸々の事情を考慮すると、この方向へと進むことは考えづらく、徐々にスイッチOTCを進め、同時に病院を受診しづらい状況とすることで、公的医療費の削減を図ることになるだろう。

  4. 非常に例えが悪くて申し訳ないのだが。
    今の日本の医薬分業論、そして、OTC薬スイッチ化論は、幕末から明治維新にかけて、日本の形が大きく変わったことに照らし合わせて考えてみると、大いに参考になるところが多いように思う。
    当時の日本は幕府の力が弱まり、薩長、土佐などによって、政権が朝廷に返還された大きな激動期でもあった。旧態依然とした幕府体制では欧米列強から日本を守ることができない。それに打ち勝つために、富国強兵を急ぐための国づくりをしなければならなかった。それに、大きく動いたのが、突出した力を持っていた薩摩や長州、そして、調整役の土佐であった。
    日本の新しい国づくりの青写真を描いたのが、有名な土佐藩の脱藩浪士の坂本龍馬だった。
    坂本龍馬は誰を相手に交渉すれば、事態を大きく動かすことができるかという眼力を持っていたと言われている。そして、その交渉術も、相手の価値観がもはや通用しないことを悟らせ、相手がどのような身の置き方をすれば、双方にとってメリットがあるかということを十分に納得させたと言われている。
    今の日医は正に旧態依然とした医療界の幕府体制みたいなもの(力は弱まっていないかもしれないが・・・。)で、自分たちの価値観が取り巻く世界情勢からしても通用しなくなっていることを悟らせなければならない時代に入ったきたということではないだろうか。
    その価値観(日医にしてみたら、ちっぽけな価値観と言われるかもしれないが)とは医師が特例で調剤できるという不完全医薬分業、そして、何でもかんでも処方薬を抱えて、OTC薬として相応しいものをスイッチ化させない。
    この二つの価値観ではないかと思っている。
    確かに、当時と現在とは時代背景の違い、国情の違い、取り巻く世界情勢の違いはあるとしても、変革を促さなければならないところは同じだと思う。
    そうしなければ、日本の医療制度は世界の医療制度に比べても、立ち遅れたものとなってしまう。
    緩やかな変革か、急進的な変革か、どちらを選択するべきかわからないが、とにかく、過去の変革を見てきても、重要局面では劇的なところがあったように思われる。
    それから、もう一つ、興味深いところはペリーなどの黒船来航によるところだ。
    これによって、旧幕府は開国を迫れて、それによって自滅の道を歩むことになり、明治維新へとつながっていくわけだが。
    この黒船が世界の巨大製薬メーカーで、今の日本の国民皆保険の負の部分の甘い蜜にたかっていることは間違いない。
    旧幕府、つまり、日医が政府を取り込んで、この黒船と悪しき条約を結んで、それを助長させている。それによって、日本の国の形(皆保険制度)はボロボロにされてしまう。
    それに立ち上がったのが、薩長、土佐であるが、現在で言えば、それは酷税、保険料、一部負担に喘ぐ国民ではないだろうか。
    国民は上述に対して無知であってはならない。
    薩長や土佐の幕末、維新の志士のように、今の国民も時代を動かす確かな眼力をもって、それに立ち上がらなければならない。
    坂本龍馬は暗殺されて志半ばにして終わってしまったが、今、このアポネットRはまだまだ、健在だ・・。
    表現に無理があり、大げさな言い方になるかもしれないが、このアポネットRが今の国民が確かな眼力を持てるように、これからも坂本龍馬的な存在であってもらいたい・・・。
    最後に、表現が不適切、史実に正確でないところがあれば、ひらにご容赦願いたい・・・。

  5. 薬物治療は患者が医者や薬剤師と一緒に考える時代に入ってきている。
    医者お任せの薬物治療の時代は終わった。
    その一里塚が、セルフメディケーションのOTC薬、そして、スイッチ薬だ・・。
    まだまだ、医療現場はそのようになっていないが。
    いずれ、そうなることを願いたい・・・。

  6. 開かれた薬物治療とはなにか。
    結論から言うと、もう、医者だけが独占的に薬物処方する時代は終わった。
    また、製薬メーカーと一緒(癒着して)になって、医者が必要不可欠以外の無駄な処方薬までを抱え込む時代は終わったということです。
    前者は患者が医者、薬剤師と相談して処方設計にコミットすること。
    そのためには院外処方の方がいい。これなら患者がコミットしやすくなるため。
    後者は処方薬として必要不可欠以外の無駄な薬は全てOTC薬スイッチ化にする。
    これが進まないのは下記の二点。
    ・医療の中で、医者に万能の権限を与えて特権階級にしてしまったこと。
    ・医療に、物質主義優先(薬という物質)による経済的価値観が絶対存在しているため。
     特に、日本は国民皆保険制度の出来高払いで、上述を悪用しやすい医療環境にあるた め。
    まあ、経済社会は物質主義(メーカーがモノを作って金儲けするしくみ)によらなければ成り立たないので、後者は現実的にどう考えるかだが・・・。

  7. アポネット 小嶋

    3月19日開催の規制改革会議 健康・医療WGの議事録がアップされました。

    規制改革会議 健康・医療WG 2015.03.19 議事録
    http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150319/gijiroku0319.pdf

    薬局に行くのが面倒だから、医療機関でスイッチOTC(保険から外れた薬)を販売してはどうかという意見が出ています。

    スイッチOTC(一般用医薬品)と医療用医薬品の役割の違いという共通認識がどうもないようです。