医薬品の分類についての指針(英医薬品庁)

 英語力が乏しいので紹介するかどうか迷いましたが、日本でも参考になりそうなので、ちょっと触れておきたいと思います。

 英国では、医薬品はPOM(処方せん医薬品)、P(薬局医薬品)、GSL(自由販売医薬品)の3分類に分けられていますが、今回MHRA(英国医薬品庁)が発表したこの指針(Guidance)は、医薬品分類を変更する際の考え方を、パブリックコメントを経てまとめたものです。

MHRA publishes medicines reclassification guidance
(MHRA Press Release 2012.12.06)
http://www.mhra.gov.uk/NewsCentre/Pressreleases/CON213182

How to change the legal classification of a medicine
http://www.mhra.gov.uk/home/groups/comms-ic/documents/publication/con213177.pdf

 英国の医薬品政策もまだ十分に理解できていないので、正直のところ内容についてはまだ詳しくは理解できませんが、どのような手順でスイッチを進めるか、ベネフィット-リスクの考え方などが示されています。

Benefit Considerations
• Improved access
• Improved clinical outcomes
• Improved public health
• Enhanced consumer involvement in healthcare
• Economic benefits

Risk Considerations
• Unintended misuse
•Intentional misuse with therapeutic intent
•Worsened outcome due to self-management
• Intentional overdose
• Accidental ingestion

 PJによれば、この指針によりスイッチのスピードが図られるとしており、業界団体なども歓迎しているようです。

 日本でも下記のようなものがありますが、こういった視点でもまとめられる必要があるのではないかと思いました。

「セルフメディケーションにおける一般用医薬品のあり方について」 中間報告書
 ~求められ、信頼され、安心して使用できる一般用医薬品であるために~
(一般用医薬品承認審査合理化等検討会 平成14年11月8日)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/11/s1108-4.html

関連資料:
Improving the decision-making process for nonprescription drugs: a framework for benefit-risk assessment.
(Clin Pharmacol Ther. 2011 Dec;90(6):791-803.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22048228
(指針で引用されている論文)

Annual Review 2012: Securing our Future Health – Time for Real Engagement
(PAGB 2012)(業界団体の年次報告)
http://www.pagb.co.uk/publications/pdfs/annualreview2012.pdf
(トリプタン製剤をモデルに上記Benefit-Risk について示している。下記国際会議で発表)

48thAESGP Annual Meeting(Nice, France | 6-8 June 2012)
http://www.aesgp.eu/events/Nice2012/

Self- Care A Winning Solution for citizens healthcare professionals health systems
http://www.aesgp.eu/media/cms_page_media/68/Self-Care%20A%20Winning%20Solution.pdf
(欧州各国の状況が紹介されている)

Conference Report
http://www.aesgp.eu/media/reports/NiceConferenceReport.pdf

関連情報:TOPICS
 2012.11.01 エパデール問題、スイッチへの意義とプロセスの共通認識が必要
 2011.07.29 スイッチOTC医薬品の選定要件は?(厚生労働科学研究)

参考:
POM to P reclassifications to get quicker
(PJ Online 2012.12.06)
http://www.pjonline.com/news/pom_to_p_reclassifications_to_get_quicker
MHRA to ‘halve’ time taken for POMs to reach pharmacy status
(Pulse 2012.12.07)
http://www.pulsetoday.co.uk/commissioning/commissioning-topics/prescribing/mhra-to-halve-time-taken-for-medicine-to-reach-pharmacy-status/20001105.article

 


2012年12月07日 23:37 投稿

コメントが1つあります

  1.  英国を含む欧州においては、欧州共同体の基本的枠組みで、新薬として承認され、処方せん医薬品として「試用」された後、その安全性・有効性が確認されたならば、非処方せん医薬品として取り扱う方向での検討が行われることとされています。 今回の英国医薬品庁(MHRA)のガイドラインは、このPOMからP、さらにPからGSLへのスイッチの手順について考え方を示したものです。
     引用されている論文は、欧米の3人の専門家の共同著作で、リスクと便益を考慮して判断を為すべき、またその判断の結果、リスクと便益が変化するもの(であり、変化の結果を更に評価し、見直すことが必要)と指摘しています。
     翻って、日本ではこのような基本方針が欠如し、スイッチは例外的なものとされたままです。 但し、リスクと便益についても、何を項目として認知し、またその数値化をどう実現するかも難しいことであることに変わりはありません。