デキストロメトルファン濫用による有害事象は少なくない(米国)

 TOPICS 2010.05.09 の記事で紹介した、デキストロメトルファン(DXM)濫用による潜在的リスクとベネフィットについての検討を行う諮問委員会(Drug Safety and Risk Management Advisory Committee Meeting)の開催(9月14日)に先立ち、FDAのウェブサイトに、DXMについてのレビューをまとめたFDA、業界団体CHPAの資料が31日掲載されています。

Briefing Information for the September 14, 2010 Meeting of the Drug Safety and Risk Management Advisory Committee(2010.8.30 Update)

 DXMは1958年に承認された成分ですが、資料によればDXMの米国における濫用は深刻で、DXMの不適切な使用による緊急治療室(ER)への受診は2004年の4,634件から、2007年には10,410件と急増しているほか、2004年から2008年までの5年間に濫用が原因のDXMによる有害事象の報告は230件に達し、うち98%の226件が重篤な事例で、このうちの102件が死亡例だったそうです。(年齢別では17歳~30歳の若者に集中)

 こういったデータを踏まえ、14日の諮問委員会では次のような点が審議されるようです。

  • 濫用の可能性を示す証拠があるか
  • 濫用は特定の集団(年齢層)で確認されるか
  • CHPAが行う濫用防止の取り組みは効果をあげているか
  • さらなる対応は必要か
  • DXMをコントロールが必要な成分に指定し、処方せんによる販売のみとするか

 AP通信によれば、処方せん医薬品に分類を変更することは、利便性やOTCメーカーなど現場に与える影響が大きく、18歳未満への販売禁止などの勧告にとどまるのではないかとしています。

 14日の諮問委員会に注目したいと思います。

関連情報:TOPICS 2010.05.09 デキストロメトルファン濫用問題で9月にFDA諮問委開催へ

参考:U.S. FDA looks to curb abuse of cough medicine
     (CTV.Ca 2010.9.1 AP配信)
http://www.ctv.ca/CTVNews/Health/20100901/FDA-cough-medicine-100901


2010年09月03日 01:14 投稿

コメントが5つあります

  1.  サイトには、FDA(事務局)が取りまとめた資料と共に、メーカー団体であるCHPAの整備した資料も掲出されています。 こちらでは、次のような主張がされています。
    ○ CSAによる規制薬物枠組みへの組み込み(処方せん医薬品)では、事態の解決とならない。(そもそも、CSAの枠組みで、そのような授権はされていない。)
    ○ DXM製剤は、50年余に渡り、安全な咳止め薬として流通してきた。
    ○ FDAの途中での見直しでも、GRASE(安全かつ有効と一般的に見なされる)と宣言されている。
    ○ 米国民のニーズに対応するものとして広く使用されている。
    ○ DXMは、それ自身、習慣性の薬物ではない。
    ○ 乱用は、青少年に見られるが、大人になるにつれ、消失している。増大していない。
    ○ 乱用防止には、啓発;購入年齢制限;原末等の流通規制;乱用薬物調査の改善;等が重要。

  2.  また、日本では、咳止め薬として、引き続きコデイン又はヒドロキシコデイン製剤が流通しているのに対し、米国ではモノグラフ上では残っているのにかかわらず、コデイン製剤は流通していません。(処方せん医薬品の鎮痛剤としての流通は有ります。)
     従って、もしもDXMを処方せん医薬品にした場合、OTCの咳止め薬はほぼ全滅という事になります。
     更に、CHPAの資料では、医師の処方によるOTCのDXM使用が相当程度あることを示唆し、それをしのぐ量の処方せん医薬品たるDXMの流通もある事が示されています。(処方せん医薬品の乱用にも注意が必要な状況とされています。)
     米国では、OTCは必ずしも薬局での販売に限定されておらず、薬局が54000軒に対し、医薬品小売店は75万軒を数えるとしています。
     

  3. アポネット 小嶋

    本来なら、公平にCHPAのレビューについても紹介すべきところを、詳しく紹介して頂きありがとうございます。

    一部に濫用の実態があったとしても、OTC医薬品の成分としての必要性を考えれば、やはり販売方法などについて工夫(オーバー・ザ・カウンター)で落ち着くのではないかと思います。

  4.  9月14日に、米FDA諮問委員会が開催されました。 米CHPA(スポンサーとして意見陳述したOTC製薬団体)のサイトでの声明によれば、CSA(乱用物質規制法)による規制物質としてDXMを指定して規制するということは否定された模様です。
     なお、CHPAは、DXM製剤の販売年齢制限(18歳未満へは販売禁止)、DXM原末バルクの反b内規制(登録医薬品製造業者に限った販売とする)事なども提唱しています。
     

  5. アポネット 小嶋

    まいけるさん、いつもありがとうごさいます。

    ほぼ同時の投稿になりましたが、WEBの情報を基に記事を書きましたのでよろしくお願いします。

    デキストロメトルファンOTC咳止め薬の再分類は不要(FDA諮問委)
    (TOPICS 2010.9.15)
    http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/100916.html