エパデールOTC正式承認へ、新たに検討会設置も(Update)

 19日、スイッチOTCや新薬の承認を最終的に審議する薬食審の薬事分科会が開催され、注目のエパデールOTC(エパデールT、エパアルテ)や新薬の承認が了承されました。いよいよエパデールOTCが正式承認の運びとなります。(正式承認はおそらく1か月以内。但し試験販売という話もあるので、実際の販売開始にはさらに時間がかかる)

エパデールOTC、薬食審分科会で承認了承- 生活習慣病で初のスイッチOTCに
(医療介護CBニュース 2012.12.19)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38843.html

生活習慣病薬 初の市販承認へ
(NHK NEWS WEB 2012.12.19)
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121219/k10014301841000.html

薬事・食品衛生審議会 薬事分科会(日刊薬業行政資料)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226585919036
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226585918847

エパデールTの添付文書案
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226585918847#page=62

(効能)
健康診断等で指摘された、境界領域の中性脂肪値の改善
(注 「境界領域」:健康診断などにおいて中性脂肪が正常値よりもやや高めの値(150mg/dL以上300mg/dL未満)を指す。)

【注意】
狭心症、心筋梗塞、脳卒中と診断されたことがある人、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高血圧症で治療中の人や医師の治療を勧められた人は、この薬を服用しないでください。

(用法・用量)
20才以上1回1包(イコサペント酸エチル600mg)を1日3回食後すぐ服用

【注意】
(1)定められた用法・用量を厳守してください。
(2)空腹時に服用すると成分の吸収が悪くなるので、食後すぐに服用してください。
(3)かまずに服用してください。(軟カプセルのため、かむと油状の成分がでてしまいます)
(4)中性脂肪異常値改善のためには4週間以上、服用を続けていただくことが必要です。
(5)本剤の服用期間の目安(効果が安定する)は、3~ 6ヵ月です。
(6)本剤の服用3ヵ月後には、健康診断等で血液検査を行い、中性脂肪値の改善を確認することをお勧めいたします。

(次の人は服用しないで下さい)
(1)20才未満の人.
(2)出血している人.
(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等にて出血している場合、止血が困難となることがあります)
(3)出血しやすい人(出血を助長することがあります)
(4)手術を予定している人(出血を助長することがあります)
(5)次の医薬品を服用している人。
ワルフアリン等の抗凝血薬、アスピリンを含有するかぜ薬 解熱鎮痛薬、抗血小板薬、インドメタシンを含有する鎮痛消炎薬、チクロビジン塩酸塩やシロスタゾール等の抗血小板薬
(出血傾向が強くなることがあります)
(6)脂質異常症(高脂血症)、糖尿病又は高血圧症と診断され現在医師の治療を受けている人、あるいは健康診断等で医師の治療を勧められた人
(7)親、兄弟姉妹に原発性高脂血症と診断された人がいる人
(8)狭心症、心筋梗塞、脳卒中と診断されたことがある人
(9)妊婦又は妊娠していると思われる人
(10)授乳中の人(動物試験で乳汁中への移行が認められています)

 CBニュースの記事によれば、日医の中川委員が、「生活習慣病で重要な食事・運動療法がおろそかになる」「一般用医薬品部会での決め方が強引」との注文をつけたようですが、一般用医薬品部会と同様、承認の了承が行われたとのことです。

 その一方で、中川委員は先日の医師会の見解(TOPICS 2012.11.21)で示した、生活習慣病分野でのスイッチOTCについて議論の場を設けることを要望、厚労省も生活習慣病分野でのスイッチOTCのあり方について、新たに検討の場を設けるとの見解を示したようです。(この分科会は非公開なので、記者さんの聞き取りによるものだと思う)

 英国では先日、医薬品の分類を変更する際の考え方が示された(TOPICS 2012.12.07)他、ニュージーランドでも医薬品の分類に関する基準作りが現在すすめられているなど、海外でもスイッチのあり方が検討されています。

Classification of Medicines
Minutes of the October 2012 Classification Committee Meeting
(ニュージランドMEDSAFE  医薬品の分類に関する委員会議事録 2012.10.30開催、議題5-2)http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/mccMin30Oct2012.htm

 海外では生活者の利便性や医療資源の有効活用から、PPIやトリプタン製剤、内服の抗ウイルス薬(タミフル、ファムビル)、抗菌薬(トリメトプリム、アジスロマイシン)、タムスロシン、抗肥満薬、緊急避妊薬、ワクチンなども処方せんなしでの販売が認められている国もあります。 

OTC ingredients(AESGP)
http://www.aesgp.eu/facts-figures/otc-ingredients/
(成分名を入れて、検索をかけるとスイッチ状況がわかります)

 日本でもこの際、生活習慣病分野だけではなく、生活者へのヘルスケア支援や保険医療システムのあり方も含め、幅広い視点でスイッチOTCのあり方について検討してもらいたいものです。(抗肥満薬の審議も控えているので、検討はなるべく短期間で。そうしないとスイッチの推進が図られない)

関連情報:TOPICS
 2012.11.21 生活習慣病分野におけるスイッチOTCのあり方に見解(日医)
 2012.11.01 エパデール問題、スイッチへの意義とプロセスの共通認識が必要
 2012.10.22 エパデールスイッチへの期待と不安
 2012.09.26 インフルエンザワクチンとトリメトプリムの再分類(NZ)
 2011.02.22 海外におけるスイッチOTCの状況(Update)
  (一覧表へのリンクは切れています、上記リンクで確認を) 
 2009.01.14 大正製薬、抗肥満薬オルリスタットの開発・販売権を取得

21:50 更新


2012年12月19日 21:02 投稿

コメントが8つあります

  1. アポネット 小嶋

    各紙、スイッチOTCの審査が凍結されるのではないかと伝えています。

    生活習慣病領域のOTC薬、審査「凍結」
    薬事分科会 日医が“あり方”の見直しを要望、新検討会を設置へ
    (RISFAX 2012.11.20)
    http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=40130

    厚労省 生活習慣病のOTC薬化、見直し検討の場を設置へ
    (日刊薬業WEBフリーサイト 2012.11.19)
    http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226571360553.html?pageKind=outline

    抗肥満薬オルリスタットの取扱いはどうなるのでしょう?

    生活習慣病関連に該当すれば、承認・販売は大きくずれこみますが。

    また、生活習慣病関連だけでなく、ほかの領域などにも影響を与えなければいいのですが。

  2. アポネット 小嶋

    医療介護CBニュースさんがタイムリーな記事を掲載しています。

    スタチンをOTCにした英国医療のその後
    (医療介護CBニュース 2012.12.20)
    http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38842.html

    関連記事:TOPICS
     2012.10.22 エパデールスイッチへの期待と不安

    スイッチOTC拡大スキームの境界
    ― 英・シンバスタチンの先例をどう考えるか -
    (医薬ジャーナル論壇 2009年3月号)
    http://www.iyaku-j.com/iyakuj/system/dc8/index.php?trgid=16072

  3.  医師会は、開業医の患者減少を懸念し、スイッチの拡大をすべて阻止する考えと伝えられています。 2002年に厚労省の研究会が出した中間報告書では、セルフメディケーションの拡張がうたわれていますが、体外診断薬の果てまで、医師の管轄に押し込める覚悟のようで、そのために検討会の開催と、検討中のスイッチ凍結を主張しているようです。
     そのうち、体重測定も重要な医療情報であり、体重を図ることも医師の監督下で行えと言い出すのでしょうか?

  4. アポネット 小嶋

    大正製薬には気の毒ですけど、これで抗肥満薬(オルリスタット)の審査は相当遅れそうですね。

    しかし海外では、多くの国でオルリスタットがOTCになっていることを考えると、検討会での結論待ちでは、ちょっと問題もあるのでは。

    トリプタンなど、生活者にとってスイッチが望ましい成分はこの他にもたくさんあります。

    医師会は今回の検討会でおそらくこういったものについてのスイッチも懸念を示すことになるのでしょうか。

    確かに、第一類の適切な販売が行われていない現場に問題があるとの意見もありますが、今回の混乱はやはり、医療資源の有効活用や生活者の利便性をも考慮して、スイッチとしてどういうものが適当なのかというはっきりとした原則論や基準をきちんと決めてこなかったことが最大の原因です。

    厚労省も検討会の設置を了承したなら、このあたりの基本的な考え方を出してもらいですね。新政権にでもそのあたりは期待したほうがいいのでしょうか。

    また、日薬やOTC医薬品協会などの団体も、もっと海外の現状を紹介して、セルフメディケーション支援としてのスイッチのあり方を示してくれるといいんですけどね。

  5. まず、エパデールとスタチンは特性としてどのように違うのか。つまり、安全性と有効性の観点から考える必要があります。

    その上で、エパデールはOTC薬としてふさわしいが、スタチンは英国の先例をじっくり見て検討する必要があるようです。

    私が問題にしているのは、エパデールのステージにおいて、セルフメディケーションを踏まえた上で、生活習慣病のOTC薬→処方薬の薬物治療(潜在予備軍の多い境界領域を含めて)を視野に入れてどうあるべきか。要は医師が生活習慣病の薬物治療をOTC薬→処方薬までを視野に入れて、どこまでを薬剤師に任せるか。そして、医師はどこからを担当すればいいのか。その役割分担をセルフメディケーションを理解した上で考えなければならないと思います。

    これは患者のみならず、消費者(生活者)も一緒に考えていかなければならない問題です。

    その視点が医学会には欠落しています。

    検討の場を設けるのはいいのですが、医学会の独善的な方向に流れてしまうと、健全な検討の場とはなりえない。そこを憂慮しています。

    患者、消費者(生活者)のメリット(使用者たちの薬物勉強への啓蒙も含めて)を最大限に考えた理想の医療構築でなければなりません。

    それと、限りある医療資源の適正配分をどう考えるか。OTC薬と処方薬を切り離さずに、同じ医薬品としての視野を持ってしっかりと検討してもらいたいと思っています。

    このエパデール問題が裏目に出て、この検討の場によって、これからの生活習慣病のスイッチOTC薬化が立ち遅れることを懸念しています。

  6.  日本では、医学会は、日本医師会の下部機関です。 職能団体として学識にも責任を持つという意味合いからは、素晴らしいことかもしれませんが、利害相反が懸念されかねません。
     また、英国ではスタチンのOTCとしての販売は既に停止されていますが、安全性に係る論議からではなく、偏に経済活動として引き合わなかった事に依っています。
     医師会の視野には、医師が主導する以外の医療は存在せず、セルフメディケーションとは医師の指示の下に患者が文句を言わずに従うことと理解されています。
     世界医師会では、患者を中心に置いた医療が唱えられ、各国医師会もそのような取り組みとなっている中、日本の現状は特異なものとなりつつあります。

  7. アポネット 小嶋

    28日、正式に承認されたそうです。

    新たに承認された第一類医薬品
    (一般用医薬品販売制度ホームページ)
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/newdaiichirui.html

    PMDAの承認審査情報のページにもエントリーされましたが、審査報告書は現時点では準備中でした。

    審査報告書が掲載されましたら、記事を立てる予定です。

  8. アポネット 小嶋

    薬事分科会の議事録が7カ月を経てようやくアップされました。

    激しいやりとりがあったことがうかがわれます。

    2012年12月19日 薬事・食品衛生審議会薬事分科会議事録
    (厚労省 2013.07.24 掲載)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000379t5.html