第4回日本版EHR事業推進委員会(総務省)

 TOPICS 2011.10.24 2011.11.16 で紹介した、日本版EHR事業推進委員会の第4回会合が8日に開催され、各事業の報告書の概要が示されています。

 第4回日本版EHR事業推進委員会(2012.05.08 開催)
 資料→リンク 議事要旨→ 未掲載(掲載され次第リンク予定)

資料4-1 処方情報の電子化・医薬連携事業 報告書概要

 利便性への期待感があったものの、継続利用については意見が分かれたようです。

 現在も実証中ですが、次のような課題や改善点が挙げられています。

  • 医療機関の医師と薬局の薬剤師の間の情報(コメント)交換が片方向(薬剤師→医師)、かつ処方に対する調剤実施時のタイミングに限定されるため、コミュニケーションの活発化が難しい。
  • 医療機関に対するメリットが現段階で構築したシステムではそれ程見出せないないため、参加機関数の拡大が図りにくい
  • 患者へのモニタ勧誘時において、特に高齢の患者は本事業の意義を理解していただきにくかった。
  • 患者に服薬管理を継続的に実施してもらうことは、なかなか難しいとの薬剤師の意見も多かった。
  • 「将来、処方箋を電子化するにあたって参照されるべきモデル」を目指すべきである観点からは、国際的な標準規格に準拠した形式のメッセージや標準とされるコード等を用いて設計されなければならない。
  • おくすりカレンダーをスマートフォンで活用したい(住民)
  • 受け取った薬剤の写真や効能、効果及び注意点なども参照できると良い(住民)
  • 医療費などがお薬以外もまとめてわかると便利(住民)
  • 参加医療機関数・患者数を増やしてもらいたい(薬局)
  • 薬局から送信される調剤実施情報が閲覧できたことによるジェネリック医薬品への変更状況の把握は診療の充実に繋がる(医療機関)

資料4-2 「天かける」医療・介護連携事業 報告書概要

 こちらは、結構いい結果が出たようです。以下のような課題が出ています。

  • 医療機関では、「内容の濃い診療が実現」が多数。しかし、連携による情報の豊富さは、重要な情報にたどり着くのに時間がかかる。
  • 介護施設・在宅医療・介護支援施設では、「容態の把握が速やか」が判明。詳細な容態把握により、引き受け可否判断の向上、見守り密度の高度化につながる。
  • 急性期⇒回復期⇒維持期(在宅・介護)の進行において、中間的役割の回復期医療機関の情報連携率(電子化・開示)が極めて低い。
  • 患者・利用者では、情報連携で多職種に見守られている事での「安心感」は大きい。しかし、連携システムの馴染みが薄く、高齢者からの同意取得時の困難がある。
  • 在宅医療・介護では、共有すべき情報(ADL、薬、リハビリ、緊急時対応など)の標準化が必要。
  • 回復期を含めたシームレスな医療を継続するためには、「回復期病院の電子化率の低さ」が障害。
  • 救急時の搬送先決定など、医療の原点となる「救命救急対応の非電子化」も連携の障害。
  • EHRを閲覧することで、重複検査が11%減少
    ・患者負担(身体的・経済的)の軽減、医療費の抑制につながる。
    ・検査結果確認のためにのみ訪れる再受診も不要。
    ・再度検査が必要な場合でも、医師から患者への再度の検査の必要性の説明ができるため、「同じ検査をまた実施するのか」などのトラブルが防止。
  • 画像、検査結果、処方の参照が多く、これらの情報が、医療の質の向上に役立つ
  • EHRの利用で内容の濃い診療が実現
    ・情報共有によるデータ量の豊富さが、診療支援に連携。
    ・患者とのデータを参照しながらの詳細な会話で、より深い信頼関係が構築。
  • 否定的意見が皆無。導入過渡期の運用上の使い勝手等の問題は存在。
  • 健康情報・予防医療の分野への利用も視野に入れた活用の姿が期待。

 一方、継続的運営体制については次のような注文が出ています。

  • 初期導入費用は、医師会等の民間の経営基盤から捻出することは困難。国・自治体からの初期の支援による弾みが必要。
  • 運用継続経費に関しては、社会保障財源での確保を行っていくべき。基本的に受益者負担が原則と考えると、患者も受益者であることから、医療保険や介護保険の、報酬点数の評価の中で応分の負担が必要。

資料4-3  共通診察券事業 報告書概要

 一定の成果があったようですが、次のような課題などが示されています。

  • 処方情報の電子化のクリック数が多い。PC操作に時間をとられる(医療機関)
  • 申し出がないと患者がカードを持っているか分からない(医療機関)
  • 患者が暗証番号を覚えている必要があり、患者の暗証番号入力の負担が大きい(医療機関)
  • 薬の引換票と処方箋を一緒にFAXするが、引換票と処方箋との突合が手間である(薬局)
  • 自分の情報を家にいながら見られるのは便利。自分の健康にもより興味が持てる(住民)

関連情報:TOPICS
 2011.11.16 第2回日本版EHR事業推進委員会(総務省)
 2011.10.24 第1回日本版EHR事業推進委員会(総務省)


2012年05月10日 00:49 投稿

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