最近の国内外の副作用等の報告状況

 紹介が遅れましたが、8月4日に薬事・食品衛生審議会の平成22年度第1回医薬品等安全対策部会が開催され、2010年1月1日から3月31日までに厚労省に報告のあった医薬品の副作用報告についての集計結果が公表されています。

 このデータは、医薬品との因果関係が不明なものを含め製造販売業者等から報告されたものをもとに作成されていますが、同一症例に複数の被疑薬が存在し、該当する症例が複数の企業からそれぞれ報告された場合は重複してカウントされているために、ここに示した報告件数がそのまま症例数にはならないそうです。また厚労省では、個別に医薬品との関連性を評価したものではないとしています。

平成22年度第1回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会(2010年8月4日開催)
  厚労省資料(8月12日掲載) 議事録(11月25日掲載)

 資料4-2によれば、この間に4件以上の報告のあった医療用医薬品成分は下記のとおりです。(薬効分類コード421-430、625の一部、631以降は除く)

分類 医薬品名 剤形 副作用名(数字は件数)
113 カルバマゼピン 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹12、スティーブンス・ジョンソン症候群4、発熱4
不明 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹21
113 ゾニサミド 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹8
113 フェニトイン 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹4
113 ラモトリギン 経口 発疹6
114 アスピリン 経口 膠原性大腸炎12
114 アスピリン・ダイアルミネート 経口 脳出血24、出血性胃潰瘍9、狭心症4
114 セレコキシブ 経口 薬疹4
116 エンタカポン 経口 幻視4
117 マレイン酸フルボキサミン 経口 企図的過量投与5
117 ミルタザピン 経口 自殺既遂10、アカシジア5、痙攣5、躁病5、自殺念慮4
117 塩酸パロキセチン水和物 経口 パーキンソニズム10
117 炭酸リチウム 経口 治療薬毒性5
123 臭化ジスチグミン 経口 コリン作動性症候群13
131 ラニビズマブ(遺伝子組換え) 注射 網膜色素上皮裂孔7、硝子体出血4、脳梗塞4、網膜出血4
211 ジゴキシン 経口 治療薬毒性4
212 コハク酸シベンゾリン 経口 低血糖症6
不明 低血糖症4
212 塩酸アミオダロン 経口 間質性肺疾患10、甲状腺機能亢進症5
212 塩酸ベプリジル 経口 間質性肺疾患5、心電図QT延長5
214 エプレレノン 経口 高カリウム血症4
214 バルサルタン 経口 血圧低下13、死亡7、拡張期血圧低下4
218 アトルバスタチンカルシウム水和物 経口 横紋筋融解4、血中クレアチンホスホキナーゼ増加4
218 ベザフィブラート 経口 横紋筋融解6
218 ロスバスタチンカルシウム 経口 血中クレアチンホスホキナーゼ増加5、横紋筋融解4
219 インドメタシンナトリウム 注射 消化管穿孔7
232 ランソプラゾール 経口 膠原性大腸炎10
239 インフリキシマブ(遺伝子組換え) 注射 ニューモシスティスジロヴェシ肺炎13、注入に伴う反応10、肺炎6、肺結核5、結核性腹膜炎5
243 チアマゾール 経口 無顆粒球症12
243 プロピルチオウラシル 経口 抗好中球細胞質抗体陽性血管炎4
245 プレドニゾロン 経口 骨壊死13、B型肝炎4、細菌性関節炎4、腫瘍崩壊症候群4、脊椎圧迫骨折4
249 インスリン アスパルト(遺伝子組換え) 注射 抗インスリン抗体陽性6、コントロール不良の糖尿病4
249 インスリン グラルギン(遺伝子組換え) 注射 低血糖症8
249 インスリン デテミル(遺伝子組換え) 注射 低血糖症5
249 インスリン リスプロ(遺伝子組換え) 注射 低血糖症4
249 ジェノゲスト 経口 貧血4、不正子宮出血4
249 酢酸ゴセレリン 注射 間質性肺疾患4
249 酢酸リュープロレリン 注射 間質性肺疾患5
254 レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール 経口 深部静脈血栓症5
269 タクロリムス水和物 経口 肺炎7、間質性肺疾患6、腎障害4
不明 エプスタイン・バーウイルス関連リンパ増殖性障害5、ポリオーマウイルス関連腎症5、肺炎4
333 フォンダパリヌクスナトリウム 注射 ヘモグロビン減少10、処置後出血8、腹腔内出血4
333 ヘパリンナトリウム 注射 ヘパリン起因性血小板減少症34、硬膜外血腫5
333 ワルファリンカリウム 経口 胃腸出血5、INR増加4
333 シロスタゾール 経口 脳梗塞4
333 硫酸クロピドグレル 経口 急性心筋梗塞5、間質性肺疾患4
392 デフェラシロクス 経口 腎機能障害5、全身性皮疹5、悪心4、血中クレアチニン増加4
394 アロプリノール 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹12、薬疹5、血液量減少性ショック4、心原性ショック4
395 アルテプラーゼ(遺伝子組換え) 経口 脳出血6、出血性脳梗塞5
396 グリメピリド 経口 低血糖症11、低血糖昏睡7
396 ミグリトール 経口 肝機能異常4
396 リン酸シタグリプチン水和物 経口 低血糖症16
396 塩酸ピオグリタゾン 経口 心不全5、脳梗塞4
399 アザチオプリン 経口 脱毛症5、汎血球減少症4
399 アダリムマブ(遺伝子組換え) 注射 間質性肺疾患6、器質化肺炎5、蜂巣炎5、ニューモシスティスジロヴェシ肺炎4、肺炎4
399 アレンドロン酸ナトリウム水和物 経口 顎骨壊死24、骨髄炎12
399 エタネルセプト(遺伝子組換え) 注射 間質性肺疾患8、肺炎6、ニューモシスティスジロヴェシ肺炎4
399 シクロスポリン 経口 可逆性後白質脳症症候群6、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ増殖性障害5、血栓性微小血管症5、サイトメガロウイルス感染4、リンパ腫4、肺炎4
399 ゾレドロン酸水和物 注射 顎骨壊死23、低カルシウム血症8、骨髄炎7、発熱4
399 パミドロン酸二ナトリウム 注射 顎骨壊死4
399 ピルフェニドン 経口 特発性肺線維症4
399 メシル酸ガベキサート 注射 アナフィラキシーショック5
399 メシル酸ナファモスタット 注射 アナフィラキシーショック19
399 メトトレキサート 経口 汎血球減少症20、間質性肺疾患17、リンパ増殖性障害15、ニューモシスティスジロヴェシ肺炎12、感染6、リンパ腫5
不明 リンパ増殖性障害5、ニューモシスティスジロヴェシ肺炎4
399 塩酸ラロキシフェン 経口 深部静脈血栓症5
442 ブシラミン 経口 間質性肺疾患4
611 テイコプラニン 注射 血小板数減少4
613 アモキシシリン 経口 出血性腸炎4
613 スルバクタムナトリウム・セフォペラゾンナトリウム 注射 アナフィラキシーショック6、クロストリジウム・ディフィシレ大腸炎4
613 セフトリアキソンナトリウム 注射 アナフィラキシーショック7
616 リファブチン 注射 食欲減退5、肝障害4
621 サラゾスルファピリジン 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹4
624 メシル酸ガレノキサシン水和物 経口 アナフィラキシーショック4、横紋筋融解4
624 リネゾリド 注射 血小板数減少9、汎血球減少症6、白血球数減少4
624 レボフロキサシン 経口 低血糖症8、アナフィラキシーショック7、痙攣4
625 ザナミビル水和物 吸入 幻覚8
625 バルガンシクロビル塩酸塩 経口 白血球数減少9、汎血球減少症5、血小板数減少4、好中球数減少4
625 リバビリン 経口 好中球数減少7、貧血4
625 リン酸オセルタミビル 経口 異常行動17
625 塩酸バラシクロビル 経口 急性腎不全8、脳症8、意識変容状態7
629 スルファメトキサゾール・トリメトプリム 経口 アナフィラキシー反応4
629 塩酸テルビナフィン 経口 肝機能異常4

 資料4-2:国内副作用報告の状況(医療用医薬品)[PDF:552KB]より引用

 関連性が疑われるというものではありませんが、今回もビスホスホネートによる骨壊死などが目に留まりました。詳しいデータが出たらチェックしましょう。

 一方、一般用医薬品についての副作用報告では、スティーブンス・ジョンソン症候群などの皮膚症状や肝障害がが目立ちますね。(個人的には、商品名もはっきり書いた方がいいと思います)

 資料4-3:国内副作用報告の状況(一般用医薬品)[PDF:185KB]

 詳細については、医薬品医療機器総合機構HP(http://www.info.pmda.go.jp/)の「副作用が疑われる症例報告に関する情報」のページでの検索も可能です。(以下同機構サイトへリンク)

 副作用が疑われる症例報告に関する情報について(平成16年度以降の報告)
 副作用が疑われる症例報告の活用方法について(PDFファイル)

 一方、海外における添付文書の変更や当局の発表をまとめたものをあわせて発表されてしています。今後はこれらの知見を踏まえ、添付文書の改訂が行われるものと思います。やはり代表的な重篤な副作用は、患者さんに伝えることが必要だと改めて感じさせられます。

 資料4-5:外国における新たな措置の報告状況[PDF:371KB]

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11月27日リンク追加


2010年08月27日 12:17 投稿

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