最近の国内外の副作用等の報告状況

 紹介が遅れましたが、3月19日に薬事・食品衛生審議会の平成21年度第3回医薬品等安全対策部会が開催され、2009年9月1日から12月31日までに厚労省に報告のあった医薬品の副作用報告についての集計結果が公表されています。

 このデータは、医薬品との因果関係が不明なものを含め製造販売業者等から報告されたものをもとに作成されていますが、同一症例に複数の被疑薬が存在し、該当する症例が複数の企業からそれぞれ報告された場合は重複してカウントされているために、ここに示した報告件数がそのまま症例数にはならないそうです。また厚労省では、個別に医薬品との関連性を評価したものではないとしています。

平成21年度第3回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会(2010年3月19日開催)
  厚労省資料(3月26日掲載) 

 資料3-2によれば、この間に5件以上の報告のあった医療用医薬品成分は下記のとおりです。(薬効分類コード421-430、625の一部、631以降は除く)

分類 医薬品名 剤形 副作用名(数字は件数)
111 セボフルラン 吸入 悪性高熱5
111 プロポフォール 注射 アナフィラキシーショック5
112 ブロチゾラム 経口 先天異常16
113 カルバマゼピン 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹21、スティーブンス・ジョンソン症候群15、薬疹7、肝障害5
不明 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹8
113 ゾニサミド 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹5
113 バルプロ酸ナトリウム 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹5
113 ラモトリギン 経口 スティーブンス・ジョンソン症候群6
114 アスピリン 経口 上部消化管出血8
114 アセトアミノフェン 経口 肝障害6
114 セレコキシブ 経口 薬疹7
114 ロキソプロフェンナトリウム 経口 中毒性表皮壊死融解症7、スティーブンス・ジョンソン症候群5、皮膚粘膜眼症候群5
116 塩酸アマンタジン 経口 幻覚6
117 アリピプラゾール 経口 悪性症候群8
117 プロナンセリン 経口 悪性症候群5
117 ミルタザピン 経口 自殺既遂9、痙攣8、アカシジア6
117 塩酸パロキセチン水和物 経口 アクティベーション症候群5、幻覚5
117 炭酸リチウム 経口 治療薬毒性9
122 臭化ロクロニウム 注射 アナフィラキシーショック10
123 臭化ジスチグミン 経口 コリン作動性症候群20、下痢6
131 ラニビズマブ(遺伝子組換え) 注射 網膜出血5、網膜色素上皮裂孔5
212 コハク酸シベンゾリン 経口 低血糖症9
212 塩酸アミオダロン 経口 間質性肺疾患9、甲状腺機能亢進症6
注射 死亡5
212 塩酸ベプリジル 経口 心電図QT延長10、トルサード ド ポアン6、間質性肺疾患6、徐脈5
212 塩酸メキシレチン 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹7
214 カンデサルタンシレキセチル・ヒドロクロロチアジド配合剤 経口 低ナトリウム血症5
214 バルサルタン 経口 高カリウム血症15、血圧低下11、死亡8、脳梗塞5
218 アトルバスタチンカルシウム水和物 経口 横紋筋融解11、血中クレアチンホスホキナーゼ増加6
218 ベザフィブラート 経口 横紋筋融解5
218 ロスバスタチンカルシウム 経口 横紋筋融解6
219 ポリスチレンスルホン酸カルシウム 経口 大腸穿孔5
223 カルボシステイン 経口 薬疹5
225 テオフィリン 経口 痙攣6
232 ファモチジン 経口 薬疹5
232 ランソプラゾール 経口 膠原性大腸炎8
239 インフリキシマブ(遺伝子組換え) 注射 肺炎8、ニューモシスティスジロヴェシ肺炎8、注入に伴う反応7、間質性肺疾患5
239 メサラジン 経口 下痢5
241 下垂体性性腺刺激ホルモン(1) 注射 卵巣過剰刺激症候群7
243 チアマゾール 経口 無顆粒球症11、抗好中球細胞質抗体陽性血管炎6、先天性皮膚形成不全5
243 プロピルチオウラシル 経口 抗好中球細胞質抗体陽性血管炎7
245 トリアムシノロンアセトニド 注射 眼内炎5
245 プレドニゾロン 経口 ニューモシスティスジロヴェシ肺炎33、骨壊死9、B型肝炎7、腸壁気腫症6
249 インスリン アスパルト(遺伝子組換え) 注射 低血糖症7、低血糖昏睡6、抗インスリン抗体陽性6
249 インスリン グラルギン(遺伝子組換え) 注射 低血糖症9
249 インスリン デテミル(遺伝子組換え) 注射 低血糖症8
249 ヒトインスリン(遺伝子組換え) 注射 低血糖症5
255 硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸 注射 直腸潰瘍5
259 コハク酸ソリフェナシン 経口 尿閉5
317 高カロリー輸液用総合ビタミン剤(4) 注射 アナフィラキシーショック7
333 フォンダパリヌクスナトリウム 注射 処置後出血15
333 ヘパリンナトリウム 注射 ヘパリン起因性血小板減少症24
333 塩酸チクロピジン 経口 上部消化管出血8
333 硫酸クロピドグレル 経口 間質性肺疾患9、肝細胞損傷7、急性心筋梗塞6、狭心症6
392 デフェラシロクス 経口 腎障害6、発熱6
394 アロプリノール 経口 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹8、スティーブンス・ジョンソン症候群6
395 アルテプラーゼ(遺伝子組換え) 経口 脳出血9
395 セラペプターゼ 経口 スティーブンス・ジョンソン症候群5
396 グリメピリド 経口 低血糖症9
399 アザチオプリン 経口 骨髄機能不全8、汎血球減少症6
399 アダリムマブ(遺伝子組換え) 注射 肺炎16、間質性肺疾患14、ニューモシスティスジロヴェシ肺炎12、発熱7
399 アレンドロン酸ナトリウム水和物 経口 骨壊死15、骨髄炎14、大腿骨骨折6
399 エタネルセプト(遺伝子組換え) 注射 間質性肺疾患12、肺炎6、ニューモシスティスジロヴェシ肺炎5
399 シクロスポリン 経口 中毒性ネフロパシー6、サイトメガロウイルス感染6、感染5
399 ゾレドロン酸水和物 注射 骨壊死23、骨髄炎14、白血球数減少6
399 タクロリムス水和物 不明 エプスタイン・バーウイルス関連リンパ増殖性障害6
399 ミコフェノール酸モフェチル 経口 ニューモシスティスジロヴェシ肺炎43、敗血症6、エプスタイン・バーウイルス関連リンパ増殖性障害5
399 メシル酸ナファモスタット 注射 アナフィラキシーショック17、血圧低下5
399 メトトレキサート 経口 ニューモシスティスジロヴェシ肺炎23、汎血球減少症15、間質性肺疾患13、骨髄機能不全11、リンパ増殖性障害9、血小板数減少5
注射 骨髄機能不全10
不明 間質性肺疾患7、ニューモシスティスジロヴェシ肺炎6
520 芍薬甘草湯 経口 低カリウム血症5
613 アモキシシリン 経口 多形紅斑6
613 スルバクタムナトリウム・セフォペラゾンナトリウム 注射 アナフィラキシーショック10
613 セファクロル 経口 アナフィラキシーショック10
613 セファゾリンナトリウム 注射 アナフィラキシーショック6
613 セフトリアキソンナトリウム 注射 アナフィラキシーショック7
613 セフメタゾールナトリウム 注射 アナフィラキシーショック5
613 タゾバクタムナトリウム・ピペラシリンナトリウム 注射 急性腎不全6
613 ピペラシリンナトリウム 注射 アナフィラキシーショック5
614 アジスロマイシン水和物 経口 下痢5
614 クラリスロマイシン 経口 肝障害5
615 塩酸ミノサイクリン 注射 肝障害5
617 アムホテリシンB 注射 低カリウム血症7
624 メシル酸ガレノキサシン水和物 経口 アナフィラキシー反応7、低血糖症6
624 リネゾリド 経口 血小板数減少6
注射 血小板数減少16
624 レボフロキサシン 経口 低血糖症11、蕁麻疹7、肝機能異常5
625 ザナミビル水和物 吸入 異常行動41、幻覚32、譫妄15、意識消失12、幻聴8
625 バルガンシクロビル塩酸塩 経口 白血球数減少8
625 リバビリン 経口 ヘモグロビン減少19、貧血12、好中球数減少9、間質性肺疾患8
625 リン酸オセルタミビル 経口 異常行動20
625 塩酸バラシクロビル 経口 急性腎不全14、脳症12、意識変容状態9、神経系障害6、譫妄5
629 イトラコナゾール 経口 多形紅斑6
629 塩酸テルビナフィン 経口 肝機能異常8、肝障害6

 資料3-2:国内副作用報告の状況(医療用医薬品)[PDF:570KB]より引用

 関連性が疑われるというものではありませんが、ブロチゾラムの先天異常、ビスホスホネートによる骨壊死、ニューキノロンによる低血糖などが目に留まりました。詳しいデータが出たらチェックしましょう。

 一方、一般用医薬品についての副作用報告では、スティーブンス・ジョンソン症候群などの皮膚症状や肝障害がが目立ちますね。(個人的には、商品名もはっきり書いた方がいいと思います)

 資料3-3:国内副作用報告の状況(一般用医薬品)[PDF:195KB]

 詳細については、医薬品医療機器総合機構HP(http://www.info.pmda.go.jp/)の「副作用が疑われる症例報告に関する情報」のページでの検索も可能です。(以下同機構サイトへリンク)

 副作用が疑われる症例報告に関する情報について(平成16年度以降の報告)
 副作用が疑われる症例報告の活用方法について(PDFファイル)

 一方、今回の部会では、海外における添付文書の変更や当局の発表をまとめたものをあわせて発表しています。今後はこれらの知見を踏まえ、添付文書の改訂が行われるものと思います。やはり代表的な重篤な副作用は、患者さんに伝えることが必要だと改めて感じさせられます。

 資料3-5:外国における新たな措置の報告状況[PDF:368KB]

 関連情報: TOPICS
     2009.11.15 最近の国内外の副作用等の報告状況
     2009.05.13 最近の国内外の副作用等の報告状況
     2008.12.03 最近の国内外の副作用等の報告状況
     2008.08.01 最近の国内外の副作用等の報告状況
     2007.07.18 最近の国内外の副作用等の報告状況


2010年04月04日 20:10 投稿

Comments are closed.