こんな進め方ではスイッチOTCが増えることはない

 4日、8月27日に日本薬学会が選定した18成分(TOPICS 2009.4.28)をスイッチOTC化の候補とするかどうかの審議を行った厚労省の薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会の議事録が公開されています。

薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会議事録(2009年8月27日開催)
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/txt/s0827-5.txt

 8月29日のTOPICSで、ドンペリドンなど下記の成分のスイッチ候補として保留になったことは既にお伝えしましたが、議事録をみるとその理由を垣間見ることができます。(議事録後半の方です)

成分名 部会での発言(保留の理由等)
オフロキサシン(点眼)  医師の診断により適切な使用が必要であるとの御意見をいただき、今回、保留としております。(厚労省事務局発言)
ノルフロキサシン(点眼)
ナジフロキサシン(外用)
コレスチミド(経口)  陰イオン交換樹脂ということで、多剤服用者でのほかの薬の吸着が問題であるという御指摘を受けてお りますので、今回は保留としております。(厚労省事務局発言)
オメプラゾール(経口)  プロトンポンプ阻害薬ですが、消化器病学会や内視鏡学会など、一番この辺りに詳しい関係学会へのコンサルテーションというか照会がなされていないのは、問題ではないかと思います。
 H2ブロッカーが世の中に出て、しばらく経ってPPIが出て、私たち臨床医にとってはすごく魔法の薬が出たということで感動した覚えがあるのですが、そのくらい効果のある薬ですし、歴史的にもH2ブロッカーに比べるとまだ浅いということから、もう少し関係各学会の意見を聞いてからの方がいいかと思います。(委員発言)
ラベプラゾールナトリウム(経口)
ランソプラゾール(経口)
アルファカルシドール(経口)  アルファカルシドールとカルシトリオールですが、これはどちらもビタミンDの活性型のもので、アナログですが、これは実はアルファカルシドールで言うと1μgが通常量になっているのですが、カルシウム製剤などを服用しておられる方がもしおられたら、高カルシウム血症になりやすいのです。ですから、この辺りのことが十分に認知されるかどうかは少し怖いというのが、私たちはもともと薬剤を投与する側からでもいつも注意する場所なのです。
 ですから、単に高カルシウム血症のチェックというよりは、そういった条件がかなり制約されてくるということで、通常量の半量、0.5μg 程度にしておく必要があるのかを感じているところです。半量でも十分効果はあるので、そういったことを感じています。
 カルシトリオールは、透析学会の理事会でもこれは出て、私は同じ意見を言ったのですが、実はアルファカルシドールもカルシトリオールもよく使うのは、骨代謝学会や骨粗鬆症学会です。ですから、もし聞かれていて返事がなかったのならあれば結構ですが、一度意見を聞いていただければと考えます。ここの学会は結構ビタミンDについては気を遣っていると思うので、できればお聞き願いたいと思います。
 アルファカルシドールに比べてカルシトリオールの方が作用に、より即時性があり、効果も強ですので、カルシトリオールはアルファカルシドールの半量でよいと考えます。ですから、こちらの方が日本薬理学会がおっしゃっているようなチェックがより必要になってくる薬剤だと思います。よろしくお願いします。(委員発言)
カルシトリオール(経口)
ドンペリドン(経口)  私の専門のところからお話しますと、吐き気止めには、これともう一つメトクロプラミドという二つ大きいのがありますが、メトクロプラミドの方は妊婦には禁忌になっていないのですが、ドンペリドンは動物実験が根拠となって妊婦は禁忌となっております。
 私どものセンターに相談に来る症例の中に、つわりと知らずにドンペリドンを処方されて、妊娠が分かった後にホームページを見て禁忌薬だということで、びっくりして飛び込む方が跡を絶ちません。
 ということから、これを一般薬にしたときに妊婦の取扱いをどうするのか、医療用のものと整合性が取れる見込みがあるのかどうか、その辺の問題が解決しなければいけないかと思います。(委員発言)

 どうも医系の委員さんは、薬剤師がきちんと情報を提供して販売できそうもないので、スイッチは好ましくないと言わんばかりですね。関係団体に確認して下さいと言っていますが、期日までに返事がないということなのですから、関係する学会としては特段反対していないということではないのでしょうか?

 ドンペリドンなどは、一時的な吐き気を訴えている人に対して、是非スイッチしてもらいたい薬です。(処方せん医薬品ではないので販売できないことはありませんが) 販売時にきちんと確認すれば、つわりの人に売ってしまうということはまずありえません。(テクニックはいりますが)

 また、ビタミンD剤で高カルシウム血症が心配というなら、酸化マグネシウムで高マグネシウム血症は心配いらないという議論(TOPICS 2009.08.08)は何だったのでしょう。

 関係学会や医師(の委員)の顔色を見ながらのこのような手順では、おそらく10年経っても英国のようにスイッチされる薬は出てくることはないといっても過言ではないでしょう。

 厚労省はセルフメディケーションを推進したいのであれば、将来展望を持って、医師を説得してでもどんどん推し進めるべきです。そして、また繰り返しになりますが、今回のコレスチミドなど関係学会が反対しているのならば、その理由を公表すべきです。あまりにも密室的な審議です。

 こんな状況が続くようであったら、ドンペリドンなどは薬局医薬品のまま積極的に販売することを考えた方がいいかもしれませんね。

関連情報:TOPICS
  2009.08.28 日本は本気でセルフメディケーションを推進する気があるのか?
  2009.04.28 厚労省、スイッチ候補18成分を公表
  2009.02.01 欧米におけるスイッチOTCの状況
  2008.12.05 英国におけるスイッチOTC25年の歩み


2009年11月05日 23:30 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    11月25日に開催された一般用医薬品部会で、ロキソニンのOTC品が承認されたようです。

    詳しいことが分かり次第、別記事を建てます。

  2. アポネット 小嶋

    2010年2月25日に行われた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会で、アルファカルシドールとカルシトリオールの2成分についてはスイッチが了承されたようです。(ビタミンDではそれほど画期的とはいえませんが)

    一般薬部会  PPIスイッチ化「再び見送り」 
    (日刊薬業WEBフリーサイト 2010年2月25日)
    http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226552508966.html?pageKind=outline

    医療介護CBニュース(2010年2月25日 一定期間を過ぎるとログイン必要)
    http://www.cabrain.net/news/article/newsId/26532.html

     去年8月の委員会では関係団体に確認して下さいと言っていましたが、やはり関係学会は特段反対していなかったようですね。

    発売は早くても来年の後半ですかね。

    一方、同時に審議されたPPIの方は今回も保留だったそうです。

    他の成分はどうなってしまったのでしょうね。