医療従事者の3〜5割がワクチン接種を望まず（海外調査）

　日本では現在，新型インフルエンザのワクチン接種の優先順位をめぐってさまざまな議論が噴出していますが，海外ではワクチン接種は受けたくないと思っている医療従事者が少なくないという調査結果が相次いで報告されています。

香港の医療従事者の過半数が「ワクチン接種したくない」、報告
　（AFP　BBNEWS　8月26日）
　http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2634161/4495686
元記事（リンク切れしたらすみません）
Many healthcare workers say ‘no’ to vaccine: study
　（AFP　2009.8.26）
　http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5jeA3BzrUH1bAXPEjdp16erQpIX-w

Many Health-Care Workers May Shun Swine Flu Shot
　　（HeaｌthDay　2009.8.26）
　http://www.healthday.com/Article.asp?AID=630363

　AFP記事にあるように，SARSの流行などがあったあの香港の医療従事者の約半数以上ワクチンをが受けたくないと答えた点は多いに注目されます。

Willingness of Hong Kong healthcare workers to accept pre-pandemic influenza vaccination at different WHO alert levels: two questionnaire surveys
（BMJ 2009;339:b3391 Published 25 August 2009）
　　http://www.bmj.com/cgi/content/full/339/aug25_2/b3391

　また，英国内での調査も同様の結果が相次いで報告され，感染予防策をすすめたい英国政府は頭を痛めているようです。

Swine flu:Doctors who refuse vaccine ‘putting patients at risk’
（Telegraph 2009.8.26）
http://www.telegraph.co.uk/health/swine-flu/6087782/
Swine-flu-Doctors-who-refuse-vaccine-putting-patients-at-risk.html

　上記記事によれば，英国における医療従事者の季節性インフルエンザに対するワクチン接種率は従来から高くなく（昨年は16％），今回の新型インフルエンザでも3〜5割の医師・看護師などがワクチンは接種しないと答えています。

　BMJの調査報告も含め，こういった背景にはワクチンの有効性（もしかしたら，医療の現場にいて効果の限界を肌で感じているのかもしれません）や副作用に懸念があるためで，とりわけ1976年に米国で豚インフルエンザが発生したときに作られたワクチンで，ギラン・バレー症候群が発症したということが頭によぎっているのかもしれません。

　WHOなどでは，当時とは技術が向上して副作用は起こりえないとしていますが，国内での治験なしで海外のワクチンの輸入と使用の承認を検討している厚労省は，是非ワクチンのベネフィット・リスクについて，国民はもちろんのこと，医療従事者にもきちんとわかりやすく伝えてもらいたいものです。

関連記事：
　混乱の極みの日本の新型インフルエンザワクチン供給・割り付け
　　　（内科開業医のお勉強日記　2009.8.26）
　　　　http://intmed.exblog.jp/8865840/

　新型インフルエンザ：不確かさから幻想へ？−仏政府の対策についての考察―
　　　（国境なき医師団　2009.8.12）
　　　　http://www.msf.or.jp/news/2009/08/1944.php

Guillain-Barré syndrome and its relationship to swine influenza vaccination in Michigan, 1976-1977. （Am J Epidemiol 1984;119:880-9）
　http://aje.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/119/6/880

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2009年08月27日 02:11 投稿