新型インフルエンザワクチン接種に関するパブコメ結果が公表

 すでにどこかの記事で一部を紹介したの思うのですが、先月6日から1週間行われた「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種について」(素案)についてのパブコメの結果が公表されました。

「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種について」(素案)に対する意見募集の結果について
 (2009年10月21日公示)

 パブコメには2,993人(個人及び団体)から、4,345件の意見が寄せられ、「医療従事者に薬剤師・事務職員等を含めるべき」(105件)との意見に対しては、「新型インフルエンザの発生により急激に増大することが懸念される患者の診療にあたる医療従事者の重症化を防ぎ、医療体制を維持することを目的としています。」と回答しています。しかし、もし地域の薬剤師から重症者が続出して(現実にはありえないでしょうが)、医療体制を維持することができなくなったらどうなるのでしょうか?

 厚労省は、自らのウェブサイトには掲載していませんが、薬剤師からの問い合わせがあった場合の問答集をすでに都道府県に配布しています。(下記の文書は他県でも同じものがあります)

新型インフルエンザワクチンに関する質問と考え方
 (群馬県、アクセス時は10月7日時点の情報)

10月18日時点の情報は下記ページに

ワクチン接種事業に関する質問と回答
(新型インフルエンザ対策本部 平成21年10月18日)
  http://www.phcd.jp/shiryo/shin_influ/091018_vaccine_sesshu_faq.pdf

 私は、気になったので海外はどうなっているか少し調べてみました。

 国によっては、日本同様、薬剤師を対象として含まないケースもあるようです。これは、日本と異なり十分時間をかけて(全ての患者に)服薬指導を行わないということがその背景にあるのではないかと考えています。

(1)米国

 8月28日付のCDCのMMWRで、“health-care and emergency medical services personnel”のうちの一つとして、優先接種の対象となっています。

Use of Influenza A (H1N1) 2009 Monovalent Vaccine Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)
(MMWR 2009.8.28)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5810a1.htm#box

(2)英国

 保健省が当初発表したリストでは、優先者に薬剤師が含まれていなかったことから、反発の声が挙がりました。その後、患者さんに直接接している薬剤師であれば地域ごとに対応するようにということになったようです。

Professional facing Q and A – Swine flu vaccinations announcement
(英国保健省2009.8.14)
http://www.dh.gov.uk/en/Publichealth/Flu/Swineflu/
InformationandGuidance/Vaccinationprogramme/DH_104321#_2

Community Pharmacists included on H1N1 vaccination list
(PSNC 2009.9.4)
http://www.psnc.org.uk/news.php/568/
community_pharmacists_included_on_h1n1_vaccination_list

(3)豪州

 保健省が9月1日に発表したリストでは、Priority Groupsとして、Health care and community care workers と定義しています。

Information on the national vaccination program
(豪州 Health Emergency)
http://www.healthemergency.gov.au/internet/healthemergency/
publishing.nsf/Content/national-vaccination-program#priority

 日本では、ワクチン供給の絶対数が少ないことからやむを得ないのかもしれませんが、米国などでは、Healthcare Worker は医師・看護師だけではなく、医学生やボランティアなどのスタッフも含んでいます。「新型インフルエンザの発生により急激に増大することが懸念される患者の診療にあたる医療従事者の重症化を防ぎ、医療体制を維持することを目的としています。」というなら、米国のような考え方も必要だと思うのですが。

関連情報:TOPICS
  2009.09.06 新型インフルエンザワクチン接種に関するパブコメ

10月22日 9:40リンク追加


2009年10月22日 01:40 投稿

コメントが3つあります

  1. http://www.phcd.jp/shiryo/shin_influ/091018_vaccine_sesshu_faq.pdf
    ↑ 問6 薬剤師は優先接種対象の医療従事者に含まれるか?
    (答え)
    薬剤師については、一般的には対象外となるものと考えられる。
    ただし、新型インフルエンザ発生時に、病院内で、重症化リスクの高い患者について、新型インフルエンザによる重症化防止に携わる場合であれば、対象となることも考えられる。

    どこで見つけたか忘れたのですが・・・・(すみません)
    院内の薬剤師のようですが・・・・表現からは・・・

    しかし、何故保健所の職員が?
    どういう時に搬送するんです?
    保健所の職員が搬送等に借り出されるよりも、調剤薬局の薬剤師がFAXで配達をせざるをえない状況・・・それどころか、薬を取りに来た患者と接触し、感染源となる可能性の方が大きいと思いますが。

    おまえらごときが意見言うな、黙って医者から言われたら配達すればいいんだ、って態度に見えて嫌ですね。
    何故断言されるのか。
    今はワクチン本数が限られているから、まずは重症化しやすい人に接種させたい。
    FAXを認めたが、まだ体制が十分に整備されてないので、FAX対応が整備されて条件が整った段階で検討する。
    ぐらいのオブラートに包んだ表現してくれてもいいと思いますけど。

    しかし。
    介護保険の訪問看護は対象外とか。特老の看護師はOKでも介護スタッフは対象外とか。
    後者はすごい問題じゃないですか?
    介護職員の待遇改善は、給料を少し上げればいいって問題じゃないって思いますけど。
    介護職員が集団感染して、スタッフがどんどん1週間休んだら、その施設はどうしろって言うんです?
    ただでさえ、集団生活なので、感染が広がりやすいのに。
    何か全く現場を知らないような気がします。

  2. アポネット 小嶋

    ぼんたさん最新情報ありがとうございます。本記事に追加させてもらいました。

    紹介されたファイルは、全国保健所長会(http://www.phcd.jp/)というウェブサイトに掲載されている情報で、10月7日に都道府県におこなった通知の追加版でしょう。ときどきチェックしていたのですが、見落としていました。

    それにしても、どうしてこういった情報が私たちのところに迅速に伝わらないのでしょうか?

    医師会も同じ状況なのかもしれませんが、日薬や県薬からのあまりの情報のなさに、仲間の間から「薬剤師会なんかやめたいね」といったそんな不信感も広がっていますよ。

    インフルエンザ患者に濃厚に接触する可能性は、医師や看護師だけではないはずです。厚労省の医系技官は、医療(や福祉)は医師と看護師だけがいれば成り立つとでも思っているのでしょう。おろらく薬剤師や介護職員は代わりはいくらでもいるとでも思っているのでしょうね。

  3. しかし、情報に関して言うなら、何かDrも同じようで怒ってますね。

    「厚労省はしきりに観測情報ばかりをお流しになられます。観測情報が悪いとは言いませんが、依りによって摩訶不思議な事にマスコミに「のみ」ご熱心に流されます。そのため情報展開は、
    厚労省 → マスコミ → 国民(含む医療機関)
    こう伝播されるのですが、国民からの確認の問い合わせは「なぜか」医療機関です。」
    神戸の小児科さんのブログの中の一文ですが。

    全くその通りです。
    厚労省の迷走。世間の顔色ばっかり伺ってます。
    専門職に意見を言うのは「悪」と言った風潮がありますが、医療業界で、第三者が的確な判断をできるとは思いませんけど。
    あくまでも「参考意見」で、主になるのは業界の専門職じゃないでしょうか?
    臨床の最前線ではないでしょうか?
    何か順番がおかしい。ゆえに必要な情報がなく、あっち行ったりこっち戻ったり、ドタバタ劇ですね。
    それにしても、薬剤師会は「全く何もしない」ですね。