へき地等では薬剤師を活用すべき(経済財政諮問会議)

 10日、内閣府の経済諮問会議が開かれ、「基本方針2008」に向けての議論が行われました。このうち有識者議員から「社会保障の徹底した効率化努力を」とした資料が提出され、私たちに関連したいくつかの課題が示されています。

 平成20年度第14回経済財政諮問会議(2008.6.10開催)
   http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0610/report.html

「社会保障の徹底した効率化努力を」
 (有識者議員提出資料、平成20年度第14回経済財政諮問会議 2008.6.10)
 http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0610/item5.pdf

 このうち、「現行制度の効率化」については、以下のような課題が示されています。

1.後発医薬品の使用促進

 わが国の後発医薬品使用割合は約17%(数量ベース、2004年度)であり、非常に低い。欧米諸国並みの40%まで引き上げるべきである。これにより、2011年度までで約2,200億円(3年間平均すると毎年約700億円)の国費削減(医療費ベースでは約8,800億円)が可能となる。

2.検査等の適正化

 医療機関間の連携や医療機関情報の開示により、重複した検査や受診をしないで済むようにすべきである。これにより、2011年までで約600〜1,000億円(3年間平均すると毎年約200〜300億円)の国費削減(医療費ベースでは約2,300〜4,100億円)が可能となる。

3.不正・不適切な保険請求の是正

 保険請求の適正化に向けた指摘や取組がなされている事項について、検証を行うとともに、それを踏まえたチェックシステムの見直しや監査・指導の徹底を行うべきである。

4.医療のIT化(レセプト・オンライン化等)の推進

 医療IT化のスピードを速めるべきである。レセプトのオンライン化により、レセプト審査費用の削減だけでなく、データ解析による重複検査の削減や過剰投薬の改善など医療費の削減に結びつく。(98年から6年間でレセプト・オンライン化率を9.5%から94%に引き上げたところ、年間医療費の約20%の削減効果があった韓国の事例有。また、データ解析で、感染症の実態把握や医療の標準化など質の向上となり、ムダな医療費の削減にも役立つ)
 また、医療保険への加入漏れや二重加入の防止をはじめとする保険事務の効率化等のため、社会保障カード(仮称)の導入を急ぐべきである。

 1.について舛添厚労相は、「後発医薬品使用割合を40%まで引き上げる提案については、利用可能な後発医薬品を考えると30%でも相当満杯の状態。後発医薬品を使うときに必要だった医師の印をなくすことでここまで広がってきているが、安全性の問題、それから後発医薬品が体に合うのか合わないのかといった問題がある。厚労省が掲げている24年度まで30%に引き上げるということで努力しているが、実際にここで金がどれだけ出るかというのは、今の時点ではそうはっきりとは言えない。」と述べ、後発医薬品のさらなる使用促進は難しいとした見解を示しています。

 一方今回注目したのは、「新たな課題へ取り組むにあたって 〜医療人材の確保のために〜」という項目で示された「へき地等での薬剤師・看護師の活用」という課題です。

 提出資料によれば、「不足している医療人材の確保は、将来の医師数の拡大だけに頼ることなく、早期の対策として子育て期の女性医師の就労支援や関係職種の活用・役割分担見直し等を進めることにより対応すべきである。」とし、医師確保が困難な地域では、中核的医療機関の支援・監督の下で、薬剤師・看護師が連携し、薬剤処方や初期対応を行えるようにするとした、薬剤師の役割拡大について具体的な案が今回初めて示されました。英国のように、看護師・薬剤師などへの処方権拡大につながっていくのでしょうか?

 これについて委員からは、新たな看護師を訓練して新しい看護師の資格をつくるというのが大事であるという発言が示された一方、舛添厚労相からは「看護師の質を上げるための養成にも金がかかる。決して医療の周辺人材を活用したからといって、ただでできるわけではない」として、必ずしも医師不足の有効な解決策にはならないとした意見を示されましたが、薬剤師の活用については具体的な意見は示されなかったようです。まだまだ、薬剤師の存在意義は理解されていないのかもしれません。

 今回の提案は医師養成にお金をかけるよりも、他の医療従事者を有効活用しようとする経済的な理由が大きいですが、薬学教育は6年制であり、臨床的教育・法整備等が整えれば、一定の範囲内での薬剤処方は可能だと考えられます。

 日薬も日医からの反発が当然あるとは思いますが、是非、「薬学6年制で、社会のニーズに応えられることが可能である。今回の提案を歓迎したい」とのアドバルーンをあげてもよいのではないでしょうか。

 関連情報:医療分野における情報化促進のための国内外の実態調査報告書の公表
       (2006年4月25日 総務省)
       http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060425_2.html
      TOPICS 2007.12.25 規制改革会議、医療従事者の役割分担の見直しを求める

6月11日 0:40掲載 10:30更新


2008年06月11日 00:40 投稿

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