薬局・薬剤師の業務実態の把握とそのあり方に関する調査研究

2015年の厚生労働科学研究で、いち早くWEBで読めるようになった報告書です。業界紙の他、ツイートやブログでも取り上げられているので紹介しておきます。

厚生労働科学研究成果データベース
http://mhlw-grants.niph.go.jp/

薬局・薬剤師の業務実態の把握とそのあり方に関する調査研究
(2015年度厚生労働科学研究)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201523020A
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/25692

この研究は、薬局の特徴や地域の違いを考慮した10薬局でのタイムスタディ調査と、残薬等の先駆的な取組みを行う薬剤師21名への聞き取り調査結果で、概要は薬事日報さんが紹介しています。

処方箋1枚調剤は12分前後、薬剤師配置基準に「合致」 厚労科研で薬局の実態調
(薬事日報 2016.06.20)
http://www.yakuji.co.jp/entry51536.html
https://www.m3.com/news/general/435145

タイムスタディ調査の考察では、「1処方箋の全体時間は、10薬局という限られた調査対象の中では、9分50秒~14分34秒で、1薬局40枚で1薬剤師が必要としている現状に概ね合致していると考えられる」と指摘(この部分が薬事日報のタイトルの根拠)する一方で、「薬歴や患者ヒアリングからの患者の薬物療法に関しての状況の確認や、ジェネリックの説明、残薬確認、在宅医療への積極的関与、さらには、かかりつけ薬局・薬剤師の制度導入に伴い、調剤対応中の電話相談や窓口相談等も対応していく必要がある」と指摘し、「これらすべてを薬剤師が実施することには限界もあり、かつ非効率的である」と結論付けています。

そう、この12分というのは調剤実務に限った所要時間がなんですよね。さらにかかるのが、薬歴への記載、OTC販売など薬局薬剤師が行うべき業務はまだたくさんあるのに、1日40枚までは大丈夫ってことにはならないと思います。

ツイッターやブログでも同様の指摘が行われています。

薬剤師1人つき処方箋40枚は改善せよ!
(ライター薬剤師の黒いブログ 2016.06.20)
http://tkcnr.jp/blog-entry-931.html

特に薬局に1人しか薬剤師がいない状況、いわゆる「1人薬剤師」の負担は大きく、1人で調剤業務全部から指導、薬歴まで書くのに40枚は多すぎます。

今やこの処方箋40枚につき薬剤師1人というのは逆に足かせになり、経営者に利用されている部分の方が大きいと思います。

同感です

他にもこういう声も

また、後者の薬剤師への聞き取り調査でも、「機械化の発展等により一部の業務は効率化・円滑化されている面もあるものの、高齢化等の課題から多剤併用が増えている中、ジェネリックの説明やお薬手帳の確認、一包化調剤、薬歴確認、薬剤交付・指導業務について、その業務時間が増えている」と指摘した上で、「機械化やICT 化の発展により効率化・円滑化できる業務はその活用を促進する」「薬剤師の行うべき本質的な調剤業務等の見直しも今後必要」としています。さらに、「薬局・薬剤師の適正業務の内容とその業務量の明確化を行うとともに、その業務実態についての見える化の実施も必要」としています。

かかりつけ薬剤師や健康サポート薬局が制度化されましたが、必要性を感じながらも新たな業務や活動に参画したくてもできない状況があるかと思います。個人的には、こういった調査は、健康サポート薬局の制度化の前に行うべきだったと思っていますが、こういった研究を行ったこと自体は評価したいと思います。(今後も継続して欲しい)


2016年06月23日 15:58 投稿

コメントが2つあります

  1. この1日40枚を基準に調剤報酬が決められてると大昔指導の時に聞いた記憶があります。総額(経済実態調査などから平均的な額を出す)÷40枚が、総額÷30枚になった場合、1枚当たりの単価が上がってしまい調剤基本料や指導料を上げないといけなくなります。よって、何とか1日40枚を維持したいんでしょうね。
    でも、どう考えても「地域に貢献する時間」や「在宅へ行く時間」は時間外で、今どきありえないくらいブラックですね。「薬剤師が足りない!」と言えない日薬の力不足も痛感します。
    それと、総額の算出には厚労省としては調査してないと思います。つまり、全自動分包機があるか無いかとか、音声認識システムがあるか無いか、とか、です。
    病院などは調査して現状に合わせる様にしてるはずですけど。

    しかし、この調査に680万?この厚労省だけじゃないですが、こんなお金も無駄ですよね・・・・・外部委託してないで自分らでやれよって思いますけど。

  2. アポネット 小嶋

    「患者のための薬局ビジョン」の「ビジョン実現の ためビジョン実現のため主な政策」で、

    薬局におけるタイムスタディ調査を実施し、調剤技術の進展、機械化の状況など、最新の状況に応じた薬剤師業務の実態を把握する。また、薬局の再編の状況や薬剤師業務の対人業務へのシフトの状況を踏まえつつ、薬剤師の将来需給見通しを適時作成する。

    と記されているのを思い出しました。

    この研究はおそらく今年度も続くと思います。

    今度はOTC販売(これはあんまりする気はないだろうけど)や、在宅活動に焦点を当てて、タイムスタディを実施して欲しいですね。

    関連記事:TOPICS 2015.10.23
     患者のための薬局ビジョンが公表
      http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/151003.html