12歳未満は、コデイン配合製品を使用しないよう勧告(カナダ)

 以前、授乳婦がコデインを服用した場合、ごく稀ではあるが、コデイン服用後代謝の過程(迅速代謝)でできたモルヒネが乳汁に移行し、これを飲んだ乳幼児が呼吸抑制などの有害事象を起こす可能性があるという報告があるとして、添付文書が変更されたことを紹介しました(TOPICS 2009.12.02)が、Health Canada は6日、授乳婦だけではなく、12歳未満の子どもについても使用しないよう勧告を行っています。

Health Canada’s review recommends codeine only be used in patients aged 12 and over
(Health Canada 2013.06.06)
http://healthycanadians.gc.ca/recall-alert-rappel-avis/hc-sc/2013/33915a-eng.php
 
 海外では、コデインは日本のように咳止め成分ではなく、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどとの合剤で鎮痛薬として使われるケースが多いのですが、Health Canada のアナウンスによれば、咳止めとしても一部使われれているようです。

 また、以前の記事でも示しましたが、日本ではOTC医薬品の咳止め成分としてコデインが配合されているのはアネトンなどごくわずかで、多くがジヒドロコデインですが、その代謝産物として出てくるジヒドロモルフィンなどが中毒死に関わるとの研究もあり、やはり同様の留意が必要かもしれません。

The Role of Dihydrocodeine (DHC) Metabolites in Dihydrocodeine-Related Deaths
J Anal Toxicol (2010) 34 (8): 476-490.)
http://jat.oxfordjournals.org/content/34/8/476.abstract
http://jat.oxfordjournals.org/content/34/8/476.full.pdf

 おそらく、2010年に英MHRAが18歳未満にコデイン含有咳止め液剤を使用すべきではないとする勧告(TOPICS 2010.10.13)に続くものだと思いますが、日本における対応との差を感じます。(サイト内検索で記事があった。すっかり忘れていた)

 その時の記事の一部を改めて示すと(下記は英国の話です)

Public Assessment Report – Oral liquid cough medicines containing codeine: should not be used in children and young people under 18 years では、一連のOTC風邪薬・咳止め薬の小児への使用制限に関連したさまざまなレビューが行われており、

  • 子どもの咳は大人の咳と原因や背景が異なる
  • わずかだが気管支収縮作用があり、慎重な使用が必要
  • 過量服用による呼吸抑制の問題
  • 2010年3月9日までにコデインの関連が疑われる有害事象の報告が1284例あり、うち48例が16歳未満、さらに5例が液剤使用(うち7ヶ月児の1例は死亡、関連性ははっきりしない)によるものだった
  • 2008-2009年の2年間に中毒センターに、咳止め液剤による中毒事例(誤用によるもの)が23例あり、うち20例は5歳未満の症例だった
  • コデインは他剤の吸収を遅らせる可能性がある

などが指摘されていました。(日本はこういったレビューをきちんと行っているのだろうか?)

 ちなみに日本では2009年12月に、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩、リン酸ヒドロコデインセキサノールのいずれかを含有するOTC薬について、添付文書の[してはいけないこと]の項に「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」が追記されていますが、将来的にはこの年齢での適応から削除することも検討する必要があるかもしれませんね。(こういったものが、ネットで簡単に買えていいんですかねえ?)

 なお、カナダでは2008年に6歳未満の小児への風邪薬の使用しないよう勧告しています。(たぶんこのときはコデインは対象成分に含まれていなかった)

関連情報:TOPICS
  2012.08.16 コデイン類配合小児用かぜ薬は指定第2類でいいのだろうか?
  (ネット販売が解禁になったら、リスク区分だって意味ないけどね)
  2010.10.13 コデイン含有咳止め液剤は18歳未満は使用すべきでない(英国)
  2009.12.02 コデイン類服用中は授乳を避けるべし
  2007.08.18 コデイン服用後の有害事象は遺伝子の型によって左右される
  2008.12.19 カナダ当局、6歳未満にはOTC風邪薬・咳止めを使用しないよう勧告

参考:
Kids under 12 shouldn’t take codeine-based meds: Health Canada
(Ctv.Ca 2013.06.06)
http://www.ctvnews.ca/health/kids-under-12-shouldn-t-take-codeine-based-meds-health-canada-1.1313842
Codeine not recommended for children under 12
(CBC.Ca 2013.06.06)
http://www.cbc.ca/news/health/story/2013/06/06/codeine-children.html

2017年05月17日 リンク再設定


2013年06月07日 16:11 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    EMA(欧州医薬品庁)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)は6月10-13日に会合を行い、12歳未満はコデイン配合製品を使用しないよう勧告を行っています。

    PRAC recommends restricting the use of codeine when used for pain relief in children
    (EMA 2013.06.14)
    http://www.emea.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2013/06/news_detail_001813.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

    PRAC では、コデインを鎮痛剤として使用後の子どもの死亡例などをレビュー、(迅速代謝により生じた)モルヒネによる呼吸抑制などの中毒リスクが高いとして今回の措置に踏み切ったようです。

    なお、今回のデビューでは、鎮咳剤として配合されているものについては検討を行っていないとのことです。

  2. アポネット 小嶋

    EMAのPRACの勧告を受け、英医薬品庁も改めて注意喚起 を行っています。

    MHRA confirms codeine not to be used in children under 12 years old
    (MHRA Press Release 2013.06.28)
    http://www.mhra.gov.uk/NewsCentre/Pressreleases/CON287048

    Codeine: restricted use as analgesic in children and adolescents after European safety review
    (Drug Safety Update June 2013)
    http://www.mhra.gov.uk/Safetyinformation/DrugSafetyUpdate/CON287006
    https://www.gov.uk/drug-safety-update/codeine-restricted-use-as-analgesic-in-children-and-adolescents-after-european-safety-review