論文・報告あれこれ 2012年8月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ)
概要・コメント
08.26 Simvastatin: updated advice on drug interactions – updated contraindications
Drug Safety Update Volume 6, Issue 1 August 2012)

英国医薬品庁のシンバスタチンの相互作用についての更新情報。イトラコナゾール、ケトコナゾール、Posaconazole(本邦未発売)、エリスロマイシン、クララリスロマイシン、テリスロマイシン、HIVプロテア-ゼ阻害薬、Nefazodone(本邦未発売)に加え、シクロスポリン、ダナゾール、Gemfibrozil(本邦未発売)が併用禁忌となった。(承認量/処方量が日本とは異なるので一概に比較はできないが、日本では併用注意のままのものが多い)
08.26 電話による薬局における生活習慣の相談,指導実施に関する調査
(医療薬学 37(6), p361-366,2011)
慢性疾患を有している患者に対して、薬局での保健指導を推進させる目的の検討事項内容を検討するため、食事および運動等に関する保健指導実施の現状と健康関連測定機器の取り扱い状況について調査を行ったもの。都内564薬局を無作為抽出し、薬剤師に電話調査を行った。
08.26 再発を繰り返す誤嚥性肺炎に影響を及ぼす因子の検討
(医療薬学 37(6), p 367-370,2011)
誤嚥性肺炎の再発予防対策の現状の把握と再発に影響を及ぼすと考えられる因子の検討を行った市立四日市病院の報告。嚥下機能を低下させる薬剤の処方の有無の確認や低アルブミン血症の改善が重要だとした。
08.26 精神科チーム医療における薬剤師の活動とイラストを導入した服薬指導の評価
(医療薬学 37(4), p209-215,2011)
精神科医と検討して作成した、症状・処方理由・薬効・注意事項などのイラストによる説明についての報告。研究者らは退院後の服薬意識の継続にも有用な方法であるとした。
08.26 転倒事故に及ぼす睡眠薬の選択の影響とその防止策
(医療薬学 37(4), p253-260,2011)

医療安全対策チームにおける薬剤師としてのヒヤリハット報告の転倒報告の調査を行い、睡眠薬による転倒防止策を講じて評価・検討を行ったもの。
08.26 Inappropriateness of Medication Prescriptions to Elderly Patients in the Primary Care Setting: A Systematic Review
PLoS ONE Published Online Aug 22,2012)
高齢者の不適切な薬物療法についての19の研究(うち14の研究でBeers criteriaが使用)をレビューしたもの。プライマリケアでは20%が不適切な処方だとした他、よく処方されるものとしては、低リスクの有害事象を伴うものとして、プロポキシフェンとドキサゾシンが、またハイリスクの有害事象を伴うものとして、ジフェンヒドラミンとアミトリプチンを挙げた。
08.26 A Survey of the FDA’s AERS Database Regarding Muscle and Tendon Adverse Events Linked to the Statin Drug Class
PLoS ONE Published Online Aug 22,2012)

アトルバスタチン、シンバスタチン、フラバスタチン(日本未発売)、ロスバスタチン、プラバスタチンの6つのスタチンについて、FDA有害事象報告システムのデータを用いて横紋筋融解症など筋肉関連の有害事象の発症リスクについて差異があるかどうかを調べた研究。発症リスクは、ロスバスタチン>アトルバスタチン・シンバスタチン>プラバスタチン・ロバスタチンの順で高かった。同様の研究は日本の研究者も行っている(→リンク
08.26 離島診療所における漢方治療
(日本東洋医学雑誌 63(1), p31-36,2012)
3年間にわたる離島診療所における診療での漢方治療についてまとめたもの。設備が十分でなく、また家族を含め総合的に患者を診療することが求められる離島では漢方治療は有用であると考えられた。また、処方は利水剤が多い傾向があり、研究者は離島という環境が関連しているのではないかとした。
08.26 東日本大震災後の揺れ感に対する治療経験
(日本東洋医学雑誌 63(1),p37-40,2012)
東日本大震災を契機に揺れ感を強く訴える患者15例についてまとめたもの。不安感と心下痞硬を伴う場合に半夏厚朴湯が著効し、不安感のない例には半夏白朮天麻湯や苓桂朮甘湯が有効だとした。
08.26 医学生の意識と漢方医学の習熟度
(日本東洋医学雑誌 63(1),p57-64)
山口大学医学部医学科4年生に対し、講義終了後に筆記テストを施行し、同時に行ったアンケート調査を照合したもの。学士編入で入学した医学生は一般入試の医学生に比し,有意に良い成績を修めた他、漢方服用で効果を実感した医学生はそうでない医学生に比較し有意に好成績であった。(たぶん他の学科でも同じような結果が出ると思うけど)
08.21 日本食品標準成分表の食品群と中医営養学の食性との関連性
(日本栄養・食糧学会誌  65(4) p155-160,2012)
「食品群」と漢方や中医で使われる「食性」との関連性を調べたもの。調味料や香辛料類にからだを温める「食性」を持つ物が多いことや穀類や藻類などにからだを冷やす「食性」を持つ物が多いなど、いくつかの「食品群」と「食性」とのあいだに統計学的に有意な関連が明らかになった。
08.21 Professional Standards for Hospital Pharmacy Services
(Royal Pharmaceutical Society 2012.07)

英国王立薬剤師会がまとめたもの。

  1. Patient centred
  2. Episode of care
  3. Integrated transfer of care
  4. Effective use of medicine
  5. Medicines expertise
  6. Safe use of medicines
  7. Supply of medicine
  8. Leadership
  9. Governance and financial management
  10. Workforce

の10のSTANDARDSで構成されている

08.21 Pharmacotherapy for mild hypertension
(The Cochrane Library Published Online 15 AUG 2012)

軽度高血圧(BP140-159/90-99)の薬物療法に関するメタアナリシス。高血圧薬による治療はプラセボに比べて冠動脈疾患でRR 1.12(95% CI 0.80, 1.57)、脳卒中でRR 0.51(95% CI 0.24, 1.08)、心血管イベントでRR 0.97(95% CI 0.72, 1.32)となり、はっきりとしたベネフィットは示されなかった。
08.21 Garlic for the prevention of cardiovascular morbidity and mortality in hypertensive patients
(The Cochrane Library Published Online 15 AUG 2012)
ニンニクに血圧低下効果があるかどうかを調べたレビュー。エビデンスは十分でなかった。
08.21 Outcome measurement of extensive implementation of antimicrobial stewardship in patients receiving intravenous antibiotics in a Japanese university hospital
Int J Clin Pract Published online 31 Jul 2012)
(オープンアクセス)
岐阜大学附属病院における抗生剤の適正使用に関する報告
08.13 患者自己負担率の引き上げによるセルフメディケーション推進に関する研究
(医療と社会 22(2) p127-138,2012)
アレルギー性鼻炎および花粉症について自己負担率引き上げによる医療サービス需要の抑制効果を調べた研究。保険証の自己負担率を1割づつ上がると想定したときの判断を基に解析した。その結果、自己負担率が1割増加することで医療サービス需要の予測確率が14.56%減少する一方、セルフメディケーション需要の予測確率が17.888%増加し、自己負担率引き上げはセルフメデフィケーションの推進に一定の影響があるとした一方、自己負担率が6割まで引き上げられると、自然治癒の選択が医療サービス需要を上回ることも明らかになった。
08.13 レギュラトリーサイエンス
(日本薬理学雑誌 139(5) p215-218,2012)
1987年に内山充氏によって提唱されたレギュラトリーサイエンス(RS)についての総説。RSの重要性は最近まで広く認識されるには至らなかったが、21世紀に入って徐々に重要性が認識され、2011年には国の科学技術政策の中で最も重要な科学の一つと認められたという。厚生労働科学研究でも「医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究」というカテゴりーがあり、さまざまな研究が行われている。
08.13 Age-Related Cataract Is Associated with Type 2 Diabetes and Statin Use
(Optometry & Vision Science 89(8) p1165-1171,2012)
(いまのところオープンアクセス)

白内障の発症リスクを要因ごとに調べた研究。オッズ比は加齢1.22、女性1.01、喫煙1.52、2型糖尿病1.60、スタチンの使用1.57となった。水晶体膜における正常な細胞発生とレンズ透明度のために高コレステロールが必要とするという報告があり、スタチンがこの水晶体におけるコレステロール生合成を阻害することで、白内障のリスク増をもたらしている可能性を示唆した。
08.13 Depressive Symptoms and Suicidal Thoughts Among Former Users of Finasteride With Persistent Sexual Side
(J Clin Psychiatry Online First Aug 7,2012)

フィナステリド元使用者で性的副作用が持続する人61人に、よくうつ症状や自殺の考えなどについてインタビューして解析したもの。フィナステリドには、性機能や抑うつに関する神経刺激性ステロイドのレベルを減らすことが分かってとり、本研究でも元使用者に症状を訴えた人が多かった。
08.13 Calcium and Vitamin D Supplementation During Androgen Deprivation Therapy for Prostate Cancer: A Critical Review
Oncologist Published Online July 25, 2012)

前立腺がんのホルモン治療に際し、骨粗鬆症予防にカルシウムやビタミンDサプリメントが使用されることがあるが、骨粗鬆症を予防しないばかりか、心臓血管病やaggressive prostate cancer のリスクを増す可能性があるとした研究。
08.08 Tobacco sales in pharmacies: a survey of attitudes, knowledge and beliefs of pharmacists employed in student experiential and other worksites in Western New York
BMC Research Notes 2012, 5:413 Published: 6 August 2012)
(オープンアクセス)
薬局でたばこを販売することの是非などについて尋ねたWEB調査の結果。日本でも同様の調査が必要だと思う。
08.08 Decrease in the number of intoxications and suicide attempts using drugs containing acetylsalicylic acid or paracetamol
(Danish Pharmacovigilance Update, 21 June 2012)

デンマークにおける救急受診(搬送)とOTC鎮痛剤の販売に関係をまとめたもの。2011年3月17日から、18歳未満への販売制限18歳に引き上げることで、救急受信の件数は減ったという。
08.08

Effect of Honey on Nocturnal Cough and Sleep Quality: A Double-blind, Randomized, Placebo-Controlled Study
(Pediatrics published Online August 6,2012)

海外では、小児用OTC咳止め薬の使用が禁止(制限)され、蜂蜜での対応が勧奨されていますが、その有用性について調べたRCT。研究者らは、小児の上気道感染症における咳や睡眠障害の治療法の一つとして好ましいとした。
08.03  気管支喘息患者の吸入流速とその規定因子に関する検討
(昭和医学会雑誌 71(6) p 610-615,2011)

昭和大学呼吸器・アレルギー内科外来に通院中の成人喘息患者をを対象に、吸入流速(吸気流速)(peak inspiratory flow: PIF)を調べた研究。高齢(特に女性)にPIFが低下している傾向があり、ICS を選択する場合は可能な限りPIF の測定を行うことや、デバイスの選択には留意する必要があるとした。
08.03 特集:失神—診断の進歩—
(昭和医学会雑誌 Vol. 71(2011) No. 6)
失神に関する特集企画。心原性失神は薬物治療が原因となることが少なくないという
08.03 Factors Related to Medication Adherence of Cognitively Impaired Patients in Community Pharmacies
Pharmacology & Pharmacy, 2012, 3, 376-388)
認知機能が低下した患者へのドネペジルによる薬物のアドヒアランスについて、全国28都道府県からランダムに選んだ120の地域薬局にアンケート調査を行ったもの。Advance Pharma Research Office の 七海 陽子氏らが執筆。日本における薬歴についても詳しく紹介している。(日本語のものはあるのかなあ)
08.03 In utero exposure to antidepressants and the use of drugs for pulmonary diseases in children.
Eur J Clin Pharmacol. 2012 Jul 20.)
(オープンアクセス)
妊娠中の抗うつ薬の使用が生まれてくる子どもへの肺機能への影響を調べたコホート研究。リスク増は認められたが値は小さく、母親の喫煙も影響する可能性があるとした。
08.03 保険薬局における非高齢者のカルシウム拮抗薬服用後の胃酸分泌抑制薬に関する処方状況調査
(医療薬学 37(4) p203-208,2011)
TOPICS 2011.08.07 で紹介した論文の日本語版。内容はほぼ同じようです。
08.03 乳幼児が誤飲する可能性のある金属製アクセサリーからの有害8元素の溶出
(薬学雑誌 132(8) p959-968,2012)

乳幼児が誤飲する可能性のある大きさの金属製アクセサリー117製品、184検体についてISO玩具規格で記載されている有害8元素(アンチモン、ヒ素、バリウム、カドニウム、クロム、鉛、水銀及びセレン)の溶出量についての調べたもの。ISO玩具安全規格の溶出限度を超えた製品が29で、鉛を溶出した製品が多かった。
08.03 シンポジウム 味覚障害診療ガイドライン作成に向けて
(口腔・咽頭科 Vol. 25(2012) No. 1)
味覚障害に関する特集企画。チオール基、カルボキシル基、アミノ基を持ち、五員環、六員環キレートを作る構造式を持つ薬剤では、体内の亜鉛とキレート結合しやすく、結果的に亜鉛欠乏を来たし味覚障害が生じることが考えられていとるいう。(味覚障害)
また、治療法とその効果については。亜鉛の他、ビタミンB12、ベタネコール、セファランチンなどで有効性が認められているという。

2012年08月26日 22:20 投稿

コメントが1つあります

  1. シッフズジャパン鈴木

    2型糖尿病患者は白内障になり易いのに、高脂血症治療薬スタチンの併用で更に悪くするような処方は見直すべきです。