医薬品ネット販売を認める判決に思う

 この間、今回の判決についての記事やWEB上での書き込みを見てみました。

 まじめな議論もWEB上ですすめられています。

どう思いますか? 一般医薬品のネット販売OKの判決
(BLOGS Discussion 2012.04.27)
http://blogos.com/discussion/2012-04-27/iyakuhin/

一般用医薬品のネット販売を認める判決、あなたはどう思う?
(CNET JAPAN 2012.04.27)
http://japan.cnet.com/news/business/35016637/

「ネット 薬」→ツイッター・ツイート
「ネット 医薬品」→ツイッター・ツイート

 一部に薬剤師と思われる方からの反論もありますが、「対面販売がされていないじゃやないか」といった趣旨の意見に押されていますね。

 長年にわたり先人たちは「一般用医薬品(大衆薬)は、薬剤師のいるところで供給されるべきもの」という常識を築き上げてきました。(国よっては現在でもこれが守られています)

 しかし、あらゆる面で効率を優先する時代の要請によって、自らの手でこれをなし崩しにしてきた以上、やはりいくら薬剤師がクスリのリスクを訴えたとしても、「既得権の確保」というレッテルを貼るだけで、多くの生活者は耳を傾けないですね。

(以下は、6年前にまとめた考えに加筆したものです。基本的に考えは今もかわりません。)

  • 大衆薬の販売の主力となっている量販店は80年代後半より、くすりの効率的な販売機会を高めるため、「お客様の選択の自由」の名の下にセルフ化を推進し、「薬剤師を介す必要のない販売スタイル」を確立し、「価格訴求とPOP」という、薬剤師による相談販売を必要としないスタイルを社会に認知させてしまった。
  • 薬剤師が確保できないことが根本理由なのに、休日夜間の医薬品販売ができないことを規制緩和という言葉を巧みに使い、さらにはマスメディアまでも動員して、自分たちの行動を正当化してきた。(2003年ドンキホーテ問題→関連ブログ、これが結局登録販売者制度の導入につながった)
  • 調剤や漢方などの薬局の専門化が進み、日頃使われる一般用医薬品(かぜ薬・胃腸薬・皮膚病薬)の販売は、経営効率や専門性を出すうえでは必ずしも必要のないものとの認識ができてしまった。
  • またそこで勤務する薬剤師たちも、調剤業務などに追われ、大衆薬に関する幅広い知識を得る時間がなく、また関心を持つ必要がなかった。
  • 薬剤師の助言を必要としない、配置販売が日本の伝統とはいえ、正当化されている。
  • また、旧薬事法の特例販売業を取得して、指定第二類医薬品が通販されている現実がある(→TOPICS 2009.07.05 、これには漢方薬(第2類)を通販できなくなった薬局からの反発が大きい

 一方、現時点では判決の要旨(→リンク)しかないのではっきりとしたことは言えませんが、今回の逆転判決という判決は、ネット販売を省令で禁止したことについて高裁はこれを無効として販売権を有することを判断をしたにすぎず、ネット販売と店頭販売のどちらが安全かということは判断されていません。(ネット販売を禁じる部分の無効確認・取り消しなど、省令に関する以外の部分は棄却)

一般用医薬品のネット販売規制は違法(逆転判決)
(企業法務ナビ4月27日)
http://www.corporate-legal.jp/houmu_news682/

 (つまり、厚労省が上告をしたとしても、薬事法の条文を変えて、禁止を明記しない限り、ネット販売を法律で規制できない可能性も。同じような解釈となると、調剤ポイントもOKということになる?)

 RISFAXによれば、厚労省ではOTC薬のインターネット販売による副作用の発生状況などについて、今年度中に調査研究を行うとのこと。でも、副作用の報告手段が十分に知られていない現状で、そもそもデータが挙がってくるのでしょうか? 私はろくな結果が出ないと思います。(一般用医薬品でも利用が可能な、オンラインによる患者副作用報告(TOPICS 2012.03.26)の周知が先)

 私は、そろそろ「誰が、生活者のための一般用医薬品販売するべきか、どちらが優れているか」という議論ばかりではなく、現状の問題点を検証し、「どのようにすれば、誤用や乱用(自己判断による不適当な連用も含む)を防ぎ、生活者がより安全に正しく一般用医薬品を利用できるか」ということについての議論を改めて行うべきではないかと考えます。(現在の薬事法を否定することにつながることにもなってしまうかもしれないけど)

 これには、ネット販売のメリット・デメリットの検討や、店舗販売のあり方も含みます。

  • 一般用医薬品の誤用や連用による副作用や相互作用の弊害を添付文書や外箱により具体的に明記する。ネットでの購入ではこのリスクをはっきり示した上で購入のページに進ませる。
    (かぜ薬や咳止めは連続使用は3日までにとどめる、連用により肝障害のリスクが高まる、依存性があるなど。海外ではそういう表示が外箱やWEB販売で明記されている)(→
    TOPICS 2010.06.04
  • 一般用医薬品は症状の緩和のために,症状に応じて一時的に用いるのが本来の姿であり、連用や濫用をさけるため、総合感冒薬や解熱鎮痛剤などの大包装品の販売を中止する。大包装品のニーズがあるものについては、オーバー・ザ・カウンターでの販売に限定し、ネットでの販売も制限する。(海外では包装単位でも(リスク)区分が異なる場合あり)
  • 店舗販売では相談による購入が促されるよう、大量陳列など商品選択の判断に影響を及ぼす陳列方法は是正する方向で検討する。
  • 店舗販売においては、薬剤師(登録販売者も?)が直接生活者の自宅など配達して、必要な情報を直接提供した場合は、第1類、第2類医薬品の販売も認める。(頼まれて買いに来る人に十分な説明ができないよりはよっぽといい)
  • ネット販売では副作用になったときの対処法や連絡先を具体的に示す(一部サイトでは導入済みですが、副作用報告のサイトへのリンクなど)
  • ネット販売業者は第三者機関の認証制度を導入し、ルールを守れない販売業者については販売ができないような仕組みをつくる。
  • 偽造医薬品などの健康被害から守るため、個人輸入についてもきちんとしたルールをつくる。(ケンコーコム・シンガポールはきちんとしていますが)
  • 職能団体が中心になって、軽度症状に対する対応法についての啓発を行う。(「頭痛でこの一般用医薬品を使用される方へ」などといったリーフレットなどを作成して販売時に活用する)
  • くすりとの関わり方、副作用(特に予見できないもの)については、日頃から啓蒙する方法を検討する(薬剤師会が中心になって、学校や地域の場で積極的に行う)

 一方、一部の方も指摘していますが、医薬品のネット購入には「自己責任」というリスクも伴います。この「自己責任」を可能とするには、「十分な判断基準を持ち合わせているかどうか」がまず前提となります。

 現在、生活者はどのような判断基準で医薬品をを買い求めているのでしょうか? 「店頭では高い薬を買わされるかもしれない、だから自分でじっくり選んで買いたいといった」と意見も少なくないようですが、「薬剤師による客観的な情報」よりも、「TVや新聞、雑誌などの広告媒体やインターネットによる情報」が優先されている可能性はないのでしょうか?

 また、ネット購入者は自己判断で一般用医薬品を使用することによって生じた副作用などの問題について、受け入れる覚悟はできているのでしょうか?(医療リテラシーという表現を使っていた書き込みもあった)

 そして私は、「ネット販売で市場が活性化する」という考えには疑問があります。薬は必要な人が必要なものを必要最小限使用できるのがあればよいと思うからです。

 皆さんのご意見をお待ちしています。

関連ブログ:
医薬品のネット販売規制について国民が考えたいこと
(みゃんこがゆく!! 4月27日)
http://myankoblog.seesaa.net/article/267223280.html

関連記事:
医薬品のネット販売 安全性か、利便性か 26日の高裁判決で再燃も
(産経新聞 4月25日)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120426/trl12042600000000-n1.htm

関連情報:TOPICS
  2012.04.26 東京高裁、医薬品ネット販売を認める判決
  2010.03.30 医薬品ネット販売規制は適法(東京地裁判決)
  2012.03.27 OTC医薬品や薬局をめぐる問題は今も変わらず?
  2010.06.04 コデイン配合OTC薬販売規制、鎮咳去痰薬のみで十分?
  2010.05.01 コデイン配合OTC鎮痛薬の販売規制が開始(豪州)
  2009.09.04 ジヒドロコデイン配合OTC風邪薬,事実上使用禁止へ(英国)
  2009.08.31 若い世代ほど、注意が必要なOTCをネットで購入(国内研究)
  2009.07.05 特例販売業のかけこみ取得で伝統薬の新規通販は可能
  2009.05.23 パブコメ結果に関わらず、改正省令は原案通り公布へ
  2009.01.09 OTCアシクロビル軟膏を性器ヘルペス治療に転用?
  2008.10.11 風邪薬販売時に薬剤師からの情報提供は必要とされていない?

(この記事は、アポネット研究会の見解を示したものではありません)


2012年04月29日 11:43 投稿

コメントが15つあります

  1. 暴論かもしれませんが、個人的には当然の流れと思っています。
    昔のパパママ薬局がドラッグストアに流れていったように、今度はネット販売なんじゃないですか?
    安全がどうとか言いますけど、ドラッグストアで「安売り」の文字と山積みされてる薬のどこに安全があるんでしょう?
    ドラッグを蔓延させた行政や薬剤師会、そこがこの問題の発端でしょう。
    調剤が欲しかったから、折り合いをつけた日薬に責任があるでしょう。
    もうとっくの昔に崩れているんですよ。

    私は昔ながらの対面薬局ですから、もちろん、おかしい人には売りません。対面の必要性は十分認識しています。
    厳しいこと言うと、ドラッグの名前を挙げて、いくらでもそこで買ってこれると言いますよ。

    時代の流れを見てて、何でOTC(私達)を守ってくれないんだ?ってずっと思ってました。調剤だけでいいのか?って。
    それがここへ来て、1類だの2類だの、わけのわからん事言い出して。
    完璧役人的発想で、そんな面倒な事言えば、逆にお客さんの反感かいますよね。

    もう今の流れは変えられないでしょう。
    結局簡単に買えて、どこかで重大な被害出ないとわからないんじゃないですか?厚労省以外は、利便性ありきと判断してるんですから。
    自己責任もですが、裁判所も行政刷新会議もこの選択を忘れないで欲しいと思います。

    薬剤師として不適切だとお叱りを受けるかもしれません。申し訳ありません。私は自分の信念に基づいて販売するだけです。

    しかし、今回の事で、「省令」の軽さを改めて知った気がします。

  2. アポネット 小嶋

    >昔のパパママ薬局がドラッグストアに流れていったように、今度はネット販売なんじゃないですか?

    だから、日本チェーンドラッグストア協会がネット販売容認の方向に舵を切ったんですね。

    私は、80年代から広がったセルフ販売と一般用医薬品を扱わない「調剤専門薬局」の台頭が、薬局のイメージと生活者の一般用医薬品の購入についての意識を大きく変えてしまったと考えます。

    TOPICS 2010.07.12  OTCはドラッグストアで購入するもの~一般消費者の認識?

    いっぺん植えつけられてしまった意識を変えることは容易ではありません。

    ドラッグストアしか知らない若い人は、一般用医薬品は自分で棚から選んで買うものだと考えている人も少なくないのではないでしょうか。

    日薬がどのような見解を出すか楽しみですね。
    (判決の日にコメントの一つも出てこないこと自体、関心が低いってことでしょうね)

  3. ネット販売で市場が活性化する」という考えには疑問があります。薬は必要な人が必要なものを必要最小限使用できるのがあればよいと思うからです。
     市場活性化が目的ではありません。どの業界もそうなれば越したことありませんがその時の経済状況によりますからねぇ。
    また、ドラッグ業界での薬剤師及び特に登録販売者の積極的な説明は皆無に等しく既に形骸化しています。籠盛りどんどん安売りどんどんタイムセール行け行けが現状です。
     私は次の観点から、レトリックでおかしな規制に何故するのかが甚だ疑問なのです。

  4. (1)環境変化にどう対応するか、規制改革と業態開発。

    “小売業は環境変化対応業である”・・・この基本的考え方に立って、医薬品小売業を見ると、場合によってはその逆方向に進んでいたり、また立ち止まったままで流通経路や消費経済から取り残されている一面が多々見うけられる。それは多分に資格、営業許可条件下で、一般用医薬品販売は小売業であることを忘れているからではないだろうか?

  5. 医薬品の販売方法について、全て対面販売で手渡しするように指導しているが、これは薬事法第37条の店舗販売以外での販売方法の制限とはまったく無関係である。また法の趣旨ということによる指導も、所詮法的根拠のないものである。勘ぐれば、経営近代化(ネット通販等)を嫌う業界・団体等の圧力に屈した不当な行政指導介入と言われないとも限らない。
     時代を読めば消費者の高学歴化、知識の高度化によって医薬品の選択水準が飛躍的に高くなっている。むしろ、店舗販売者よりも高い場合があろう。消費者は利益商品の説教押し売り販売よりも自分で選択したい、そして質問したことに正しく答えられる人がいてほしいということだが、監視行政は消費者の無知を前提に一律に介入しているようにみえる。このため販売方法など業態開発は遅くなり、健康を自ら守るという国民のニーズに水をさす結果、医薬品小売業の業態開発によるマーケットサイズの拡大チャンスをつぶしてしまう。言うまでもなく、業態開発とは、消費者の新しいライフスタイルの局面に合わせて、マーチャンダイジングとマーケティングを構築することである。
     今日の医薬品小売業に対する行政の態度は、監視によって業態開発の意欲を減退させる面が多く、医薬品小売業を振興させるプラスの行政指導は皆無といってもよい。有資格者を裸のままで寒い荒野に放置しているような冷淡なことを平気でしている面がある。

    (2)対面販売とセルフ販売及びネット通販

    対面販売で問題が発生しないとも限らない。そもそも、その根拠も示せない。それに何も対面販売が不要だとも言っていない。それはそれで必要である。
     数年前までは薬についての知識が学校教育にはなく、政府啓蒙事業も少ないので、先進国の中でも消費者の医薬品知識が低かったが、医療費増大、診療トラブル増加にともない、次第に自己防衛意識が強くなり高学歴社会と相まって医薬品への関心は尻上がりになってきた。また店頭における利益商品の押しつけ販売には批判がある(特にドラッグストア)。消費者調査でも9割以上はセルフ化及び近年は通販化を希望してる。
     薬によっては、消費者が自分で選択する事が可能であり、また市販品は用法用量に制限が付されていて使用には差支えない。 これに対して薬剤の選択を誤らないようにするためには対面販売がまだ必要である。
    しかし、それでも商品の最終選択権はお客様にあり、店舗でセルフ販売であろうが、また今回の通販問題であろうが管理できる体制を整えておかなくてはならないし、問題が起きないよう制度的に確立しておくことは当然である。
    対面販売においても、相談アドバイスが趣旨であって、売りたいものを押し付けるものではない(特にドラッグストアの販売キャンペーン)。よい相談アドバイスの結果、消費者がそれを求めるのであれば、それは結果的には自然であろう。
     ネット販売で怪しげな云々は、むしろ店舗や巷でも同様なことがございます。例えば、医薬品・健康食品の誇大表現POPや極端な話法、巷で合法ドラッグとカモフラージュし売られているMDMAや偽薬、懲悪な麻薬販売など挙げれば切りがありませんが、これらはネットでなくとも違法であり薬事法で厳罰される。

     従来、医薬品ネット販売は認められていたが、2009年改正前の医薬品販売等体制及び環境整備検討会有識者会議でメンバーを見ると、天下りとまでは言わないにしても薬剤師会・全登協・JACDS・置き薬協会といった新規参入されては困る団体のお歴々が並び、ネット事業者は入ってない。ネット販売は危険だから禁止すべき、対面による販売で注意を聞かなければならない、という考えが植え付けられ、引き合いに出された例が、ネットでは中国の偽ダイエット薬が販売されていた、などという事例だが偽薬はネットでなくとも違法で冷静に考えればネットの安全性とは無関係であり、ネットで危険というのなら具体的被害があったのか厚労省に聞くと驚くべきことに、把握してないと回答。厚労省は、社会に平穏に定着していた販売慣行を客観的データもなく潰してしまい、既得権益と行政の連携による新参者の排斥。良薬は口に苦しと言うが、医薬品販売を巡る規制は消費者には不便でも、既得権を持つ人には甘いのである。
     大店法などの規制改革は、鎖国政策ならともかく、このグローバルな時代に共存共栄していくためには必要を得ません。しかし、役所役人の権益で改革してもらっては困ります。環境変化への対応は必然であり、国民がしっかり研究し、無駄や理不尽がないか、それを改革する行政等をしっかり監視しなければなりません。

  6. アポネット 小嶋

    >七赤金星さん

    記事が認証されていないのに、1日の9:45に気づきました。一番最後に投稿されたコメントをアップして、重複していたものは削除しました。もし抜けている部分がありましたら、再投稿お願いします。ご迷惑かけてすみません。いつもコメントありがとうございます。

    「ネット販売で市場が活性化する」の部分は、私の思い込みの部分もあると思いますので、お許し下さい。

    >ドラッグ業界での薬剤師及び特に登録販売者の積極的な説明は皆無に
    >等しく既に形骸化しています。籠盛りどんどん安売りどんどんタイム
    >セール行け行けが現状です。

    さすがに、医薬品のタイムセールはないと思いますが、やはりこの現状をさしおいて、ケンコーコムさんたちは、「私たちはきちんと情報を提供する努力をしているのに」という思いがあるんでしょうね。

    それと、「一般用医薬品販売業は小売業」ではありますが、「一般用医薬品を販売する薬局は医療機関」でもあります。これは切り離して考えた方がよいのでしょうか?

    また海外では、ネットでの医薬品購入のニーズはそれほど多くはないとのこと(薬局や薬店が適正配置されたり、必要な医薬品の取扱いがある)

    TOPICS 2012.03.22 海外におけるセルフメディケーション(厚生労働科学研究)

    ツイッターでも、「ネット販売が解禁されても、そんなに買う人はいないのではないか」との声もありますが、医薬品販売時に専門家が関与しないことに慣れてしまっている生活者は、結構利用するのではないかと思いますがいかがでしょうか。

    あと資料です。MLで教えてもらいました。国立国会図書館が時々の国政上の課題に関する簡潔な解説シリーズだそうです

    医薬品のインターネット販売をめぐる動向
    (国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 727(2011.11. 1.)
    http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/pdf/0727.pdf

    新聞の社説です(直リンクはまずいんだけど)

    日本経済新聞4月30日→リンク
    「消費者のなかには、からだが不自由で外出しにくい、買う薬を他人に知られたくない、という人もいる。ネット販売の解禁は特にそうした人びとが切望していた。」

    信濃毎日新聞4月30日→リンク
    「しかし、風邪薬や漢方薬まで通販をやめる必要があるとは思えない」
    「通販が危険―と一概には言えない。薬を使う人の体調に気を配りながら通販を続けてきた業者もいる。」

    西日本新聞4月30日→リンク
    「重要なことは、どのような購入手段であっても、薬を必要とする人の安全性が確保されることだ。いまのライフスタイルを考えれば、薬のネット販売も、いずれは避けては通れない問題である。厚労省と業界は判決を機に、ネットで安心、安全に販売、購入できる基準づくりなど、前向きな議論を急ぐべきだ。 」

    必要な一般用医薬品が必要なときに手に入るという状況にしないとますます、こういった主張が広がりますね。(今の第1類医薬品もそう)

    最後に話題となっているWEB記事です。

    官僚暴走の医薬品ネット販売規制を違法とした画期的判決に思う
    (アゴラ言論プラットホーム 4月30日)
    http://agora-web.jp/archives/1452551.html

    この記事を見ると、誰のための薬事法改正・登録販売者制度の導入だったのかを改めて考えます。

  7. 禁止されて一旦下がった状況から見たら、一時的でも市場が活性化すると思います。ずっとそれで消費が上向きではないですが。(個人的見解です、すみません。)

    でも、今回のツアーバス事件で思いましたけど、利便性・規制緩和には、必ず重大な事故が起きると思います。
    結局何かあっても国は責任とらないし、例え会社や個人がいくら責任とってくれても帰ってこない物はありますよね。
    それでも、事故の翌日でも同じ日程で運行し、乗車するんですよね。
    今の世の中薬局に限らず、安全より安さと利便性の方が重要なんですよ。
    そんな世の中を相手にしている事を前提に厚労省も考えないといけないんですよね。

    省令の無効取り消しは棄却ですよね?(判決文って今一理解できません)
    省令が一応生きている以上、ネットで買って万が一副作用が起きても被害者救済制度の対象じゃないんですよね?

    OTC=商売でしょうけど、薬局=医療提供施設です。
    同じ商売してても、この差は大きいんでしょうね。薬剤師は商取引の中でも薬全てを医療行為の一部(非営利)と思って仕事してると思います。
    いくら議論してもスタートラインが違うから永遠に埋まらないんでしょうね。

    何にしても「オール薬剤師」の公益社団になった(はず)日本薬剤師会、きちんとした対応をとって欲しいものです。

  8. アポネット 小嶋

    >ネットで買って万が一副作用が起きても被害者救済制度の対象じゃないんですよね?

    個人輸入で購入した場合ですね。(ケンコーコムシンガポールとか)

    >今の世の中薬局に限らず、安全より安さと利便性の方が重要なんですよ。
    >そんな世の中を相手にしている事を前提に厚労省も考えないといけないんですよね。

    メーカーが嫌がるでしょうが、店舗販売での情報提供の現状が理想に近づけないのであれば、薬を使う場合のリスクや副作用時対処法をしっかりと外箱などに明記するなど、くすりを使う場合の意識を持ってもらうことも検討する必要があるかもしれませんね。

    それと価格競争が激化するでしょうね。初期投資はかかるけど、人件費は少なくてもすみますからね。

    くすりは、多くの一般の人にとっては「単なる商材」なのでしょうから。

  9. アポネット 小嶋

    >七赤金星さん

    貴重なご意見が表示されなくて改めてすみませんでした。

    表示されなかった部分を読ませて頂きました。

    >時代を読めば消費者の高学歴化、知識の高度化によって医薬品の選択水準
    >が飛躍的に高くなっている。むしろ、店舗販売者よりも高い場合があろう。
    >消費者は利益商品の説教押し売り販売よりも自分で選択したい、そして質
    >問したことに正しく答えられる人がいてほしいということだが、監視行政
    >は消費者の無知を前提に一律に介入しているようにみえる

    厚労省としては、生活者がくすりについての関わり方が十分でないと判断して考えたものだと思いますが、生活者が健康を自ら守るという機運も高まりつつあると思います。

    >それでも商品の最終選択権はお客様にあり、店舗でセルフ販売であろうが、
    >また今回の通販問題であろうが管理できる体制を整えておかなくてはなら
    >ないし、問題が起きないよう制度的に確立しておくことは当然である。

    今回の薬事法改正でこの管理体制がどこまで確立され、どのような課題があるのか、どのような解決策があるかを検証する必要があると思います。

    >業態開発とは、消費者の新しいライフスタイルの局面に合わせて、マーチ
    >ャンダイジングとマーケティングを構築することである。

    薬が単なる商材であれば、この考え方でよいと思いますが、医薬品販売業はやはり何らかの違いがあると考えます。

    例えば、生活者のニースがあるからといって、たばこやアルコール(薬用酒というのもありますが)、スナック菓子類など、健康的でない商材と医薬品を売るのは果たしていかがなものでしょうか?

    TOPICS 2008.07.30 薬局でのたばこ販売は禁止へ(米サンフランシスコ市)

    >厚労省は、社会に平穏に定着していた販売慣行を客観的データもなく潰し
    >てしまい、既得権益と行政の連携による新参者の排斥。良薬は口に苦しと
    >言うが、医薬品販売を巡る規制は消費者には不便でも、既得権を持つ人に
    >は甘いのである。

    今回の判決は、おそらくここの部分に警鐘を鳴らしたのだと思います。

    配置販売業の経過措置、通散湯が通販できる状況、購入者が情報提供を希望した場合は省略が可能など、あまりにも既得権の保護と例外事項が多いにもかかわらず、経過措置があるとは言え、なぜ郵便等販売だけが事実上禁止されたのかというところではないかと思います。

  10.  話は逆ではないのか? そもそも、改正前の薬事法においても、薬局・一般販売業、薬種商販売業においては、店舗での販売しか認められておらず、いわゆるカタログ等販売に関して通知により、現在の第三類医薬品よりもはるかに限られたものについて差支えないとしていたものと理解します。
     一方、顧客からの電話等での注文に対し、薬剤師や薬種商が判断して応じていた実態はあったわけで、これらを踏まえて、経過措置が設けられたものと理解します。 
     しかしながら、経過措置期間において、本来の趣旨である薬局や店舗販売業が空白地帯に開設されて通常の対面販売が容易に実現される状況が生まれえなかったため居、時間稼ぎで再度の経過措置延長が講じられたのではなかったでしょうか?
     生活者がリスクシェアリングを行うという方向に舵を切りなおすしかないのかもしれません。

  11. いつも拝見しています。
    BLOGOSで頑張って書き込んでみましたが、そろそろ話題は次の議論に移ってしまったようです。

    七赤金星さんのご意見を読ませて頂きましたが、一般消費者の気持ちとしてはそういうことなのだと思います。経済成長や情報社会化、権利意識の高まり等による万能感だと思います。制限なく自由にやりたいのです。
    ただ残念なことですが、小嶋さんが指摘されているように、特に日本では消費者(患者)が十分な情報を収集できたと感じたとしても、企業側のマーケティングからは逃れられないでしょう。お釈迦様の手の上を飛んだ孫悟空のようなものです。
    BLOGOSでも自己責任を主張された方がいましたが、自分が運転が上手だと思っている若者が自動車事故を起こすのと根は同じように感じます。

    薬被連の花井氏が日本の医療が成熟するのにあと100年かかると指摘したのは、的を得ています。
    近い将来、高速道路の売店で総合感冒薬が売られていたとしても、もはや想定の範囲内です。それが何故おかしいかを必死に説明したとしても、日本の消費者は販売規制には同意しないでしょう。

    ただそれでも結局は必死に主張するしかないのだと思います。この話は薬剤師がすべきですから。
    長野の医療に貢献した医師たちも、当初は減塩で寿命が延びる訳ないだろうとバカにされ続けています。

    頑張っていきましょう。

  12. ネット販売への流れというのはもう止められないのでしょうね。
    何かあったときの矢面に立たされる厚労省は嫌がるでしょうけど。
    利便性と安全性と、どこで折り合いをつけるのかがこれからの焦点でしょうか。
    個人的には、薬はちょっと買いにくいくらいがちょうどいいと思うのですが。

    今回の薬事法改正のキモは、薬剤師や登録販売者の情報提供や、相談への対応を義務づけたところで(そのため誰がしたのか分からないネット販売が禁止されたわけですが)、実店舗では情報提供場所や開局時間に応じて、資格者の配置人数がきめられていますよね。

    ということは、24時間販売可能なネット販売であれば、電話回線の数やメールの送受信可能なPCの数に応じて、24時間対応できるように資格者を配置しなければいけないと思うのですが、ネット販売業者は対応できるのでしょうか?

  13. アポネット小嶋様
     投稿表示されず結果、同様な文を何回も投稿してしまい申し訳ございません。
     尚、同じ投稿は見にくいので削除してくださっても結構です。取り急ぎ、まずは御礼申し上げます。

  14. マサさんの書きこまれているように、
    > 24時間販売可能なネット販売であれば、電話回線の数やメールの送受信可能なPCの数に応じて、
    > 24時間対応できるように資格者を配置しなければいけない
    という事であり、ネット販売が優れているとされる方々は、その実践と確認の手立てを示されることになるものと期待します。
     しかしながら、そのような方向に議論が発展することは望み薄ではないかと懸念しています。
     ネット販売の利点は、あくまで経費の切り詰め、人件費や固定資産無しに荒稼ぎできることと考える人たちが議連と称される中でも多いように聞こえるからです。

  15. アポネット 小嶋

    日薬が6月7日の定例記者会見で見解を明らかにしています。

    一般用医薬品のインターネット販売に対する日本薬剤師会の見解
    http://www.nichiyaku.or.jp/press/wp-content/uploads/2012/06/120607_1.pdf

    (意見)
    一般用医薬品のインターネット販売の規制緩和については、以下の理由により、反対します。

    (理由)
    1 医薬品の副作用による健康被害を最小限に抑えるためには、 適切な服薬指導、情報提供とともに、副作用の発症後の適切な指導、措置、受診勧告など、悪化防止のための迅速な対応が不可欠であるが、インターネット販売ではそうした対応は困難であると考えられる。

    2 「対面」の最も重要な意味は、販売者の実態,実存を、購入者が確認できることにある。 生命関連商品である医薬品の安全性を確保するためには、「責任者の所在の確認が可能である」ことが、 絶対不可欠の要素である。 先般のバスツアー事故を見ても、インターネット販売については責任の所在が大きな問題であると考えられる。

    3 また、インターネット販売では、脱法ドラッグ、脱法ハープ、偽造医薬品、不良健康食品など、 犯罪や健康被害が続発しているが、 その主な原因は、 インターネット販売の「匿名性」である。 販売責任者をパソコン上しか確認できないインターネット販売サイトは、 生命関連商品である医薬品の販売の場として不適当と言わざるを得ない。
     また、我が国の現状を鑑みれば、現実論として法整備の遅れのため、インターネット犯罪を取り締まるどころか、 コントロールが困難な状態である。 このような状況は、ネット先進国でも同様であり、世界共通の問題になっている。

    4.インターネットによる医薬品販売は、そもそも規制緩和の一環であり、規制緩和は生活者自らの自己責任を基本としている。しかし、我が国における消費者トラブルの内容から見ても、日本では自己資任という考え方について、まだまだ国民の理解は十分に得られていない。
     このような現状では、 医薬品インターネット販売の規制緩和は問題である。