薬局でのたばこ販売は禁止へ(米サンフランシスコ市)

 サンフランシスコ市の行政執行委員会(San Francisco Board of Supervisors )は29日、薬局でのたばこの販売を禁止する条例を9対2で議決しました。(正式な条例化には別の2つの議決が必要) 現在、薬局に与えられているたばこ販売の許可は9月末で失効し、10月1日からは、Costcoなど大規模店(Big Box)、Safewayといった食品スーパーなどを除き、薬局・ドラッグストア(薬を販売する店舗は全てということでしょうか?)では、全てのたばこ類(噛みたばこなども含む)の販売が禁止されるだろうと各紙は伝えています。

Prohibiting pharmacies from selling tobacco products
 (Board of Supervisors 2008.7.29
 http://www.sfgov.org/site/uploadedfiles/bdsupvrs/bosagendas/materials/080594.pdf

 今回の条例は、カナダの8つの行政区で実施されている条例を参考に作られたものだそうで、違反した場合には、最高1000ドルの罰金が科せられるそうです。米国内で初めての取組みとなるそうですが、ウォルマートなどの全国チェーンのドラッグストア(サンフランシスコには対象店舗がないらしいですが)も対象になっていることから、「食品スーパーなどは認めて不公平ではないか」とする声も挙がっています。

 これに対し、WALL STREET JOURNAL 紙は、「ウォルマートの多くの店舗では、店内にhealth clinic を開設したり、ジェネリック医薬品の大幅ディスカウントを行うなど、医療ビジネスが活気を増しているが、その一方で彼らはたばこをも売っている」と皮肉り、収益至上主義の同社の姿勢を批判しています。(2003年にランダムに100の薬局を調査したところ、たばこを販売する店舗は1976年の89%に比べ、61%に減少したものの、チェーン店では93.8%、独立系は24.1%と大きな開きがあったそうです。)

 条例案で参考とされた調査によれば、カリフォルニアの消費者の72.3%がドラッグストアでのたばこ販売に反対する一方、喫煙者に限ると49.7%が販売に同意しているそうです。また、チェーンドラッグストアの薬剤師は、13.2%がドラッグストアでのたばこ販売を支持、一方薬学生の71%が薬局でのたばこ販売に反対としています。

関連論文:
Pharmacy Students’ Perceptions of Tobacco Sales in Pharmacies and Suggested Strategies for Promoting Tobacco-Free Experiential Sites
 (Am J Pharm Educ. 2006 August 15; 70(4): 75. )
 http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pubmed&pubmedid=17136194
Merchandising of cigarettes in San Francisco pharmacies: 27 years later
 (Tob Control. 2004 December; 13(4): 429–432. )
  http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pubmed&pubmedid=15564630
Tobacco sales in pharmacies: time to quit
 (Tobacco Control 2006;15:35-38)
 http://tobaccocontrol.bmj.com/cgi/content/abstract/15/1/35

 今回のサンフランシスコのような規制の動き(一部アルコールも対象)は、これまでもニューヨーク、イリノイ、テネシーなど米国内の他の地域で模索されていましたが、たばこ業界や販売店からの反対を受け、これまで実現した例はありませんでした。もし、今回の禁止令が実施されれば、おそらく同様の動きが米国内の他の地区へも波及するものと思われます。

 考えてみれば、わが国でも、「健康を謳う店舗」であるはずのドラッグストアの多くで、たばこやアルコール類(最もわが国では「薬用酒」というのも存在しますが)が販売されている現実があります。若者が多く足を運ぶドラッグストアだからこそ、健康に有害なたばこやアルコールは販売しない、可能な限り目に触れないようにするといったモラルというものもあってもいいのではないでしょうか?

 薬科大学の社会薬学系、公衆衛生系の講座の方に、まずは日本における実態調査をしてもらいたいと思います。

 関連情報:TOPICS 2008.05.08 90日分10ドルのジェネリック(米国)

参考:
Board passes tobacco ban in pharmacies
 (San Francisco Chronicle 2008.7.30)
 http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2008/07/30/BAC7121IRV.DTL
San Francisco board passes drugstore tobacco ban
 (AP 2008.7.30)
 http://ap.google.com/article/ALeqM5hcFdfolfWVvLPMcDYBUjWE6DlaOQD927TMOG1
Drugstore Tobacco Sales Under Fire
 (THE WALL STREET JOURNAL 2008.7.29)
 http://online.wsj.com/article/SB121729138312691695.html


2008年07月30日 22:51 投稿

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