公衆衛生の専門家から見たHPVワクチン

 またのこの話題かと思うかもしれませんが、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)について、感染症やワクチン政策について詳しい公衆衛生の専門家などからは、科学的な根拠の不十分さや一般向けの情報の不足を指摘し、公費助成や義務化といった現在の動きについては疑問を投げかける意見が少なくありません。

HPVワクチン騒動(木村盛世のメディカル・ジオポリティクス カフェ
vol.4 -政治とマスコミ主導でのワクチン導入についての疑問(2010.8.31)
http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/08/hpv-vol4.html
vol.3 -科学的根拠を基にワクチン導入は行うべき-(2010.8.25)
http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/08/hpv-vol3.html
vol.2 -HPVV(子宮頸がんワクチン)公費助成とワクチン行政-(2010.7.7)
http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/07/hpvv.html
vol.1 -子宮頚がんワクチンをどう扱うべきか?-(2010.5.17)
http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/05/blog-post.html

感染症診療の原則
公的なワクチンの情報をさがしてみた (長文注意)(2010.8.12)
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/71da9e99019957df96c455655baf0f3b

冒頭の部分は、地元でもはてあまることが多いですね(引用しました)


HPVワクチンについて現場ヒアリングで見えてきたことの中間報告。

地域の公衆衛生や医療関係者への相談や打診なく、議員や首長が政治パフォーマンスとして公費にしたがっている、という問題が各地で指摘されています。

その結果、十分な情報提供がないまま、とにかく接種してしまえ的にあつかわれている今年の中学1年(地域によっては小6)の女子とその親御さんがいます。かわいそうな状況だと気づいていないかもしれませんが。

県でいっせいに公費だぜい!とか盛り上がっている某県はホントにお気の毒です。
(予算がないから今年はしないよ・・・といっている自治体の人は実は結果的にラッキーかも)

製薬会社の作ったスライドそのままで教育講演をしてまわっている医師もいるそうです(怖い・・・)

(中略)

多くの保護者や保健所・学校関係者はHPVワクチンについては、「メディアの報道と製薬会社のパンフレットしかない」ことに戸惑っています。


そういえば、全県的に公費助成を決めた山梨県は、GSK社の啓発サイトにリンクまで張っているんですよね。

オーストラリアのHPVワクチンの説明・同意文書(2010.7.29)
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/1634d5bc9e40d86afd0b7fc0b7513095
HPVワクチンについての自治体関係者からの相談(2010.07.28)
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/b16bc4733d9be90ecccf8d87c8773542
8月27日の予防接種部会の様子(2010.9.4)
子宮頸がん予防対策強化事業の正当性は、 ヒブ・肺炎球菌ワクチンの即時定期接種化が無ければ否定される
(医療ガバナンス学会 メールマガジン2010.9.3  http://medg.jp
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/ff1cf38eb24c3f0a48ea832e56680f8b
恥ずかしい国にいる、という自覚(2010.9.3)
ワクチン政策に寄せて
(医療ガバナンス学会 メールマガジン2010.9.1  http://medg.jp
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/a323cef7e3d7816e84725ff293b07dbb

子宮頸がん予防のための予算規模について
(医療ガバナンス学会No.264 メールマガジン2010.8.17)
http://medg.jp/mt/2010/08/vol-264.html

 全体にいえることは、公衆衛生の専門家からは、ヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンなどすぐにでも定期接種(公費助成)が必要なワクチンがあるのに、なぜHPVワクチンを特別扱いするのかという意見が少なくないということです。

 一方今回の騒動で、公衆衛生上必要なワクチンについての国民的認識や議論が高まっていることは確かです。

 私たち薬剤師も、ワクチンについて尋ねられたとき、くすりの専門家としてきちんと答えられるだけのものを用意しておくことが必要だと感じます。

 ところで、薬学の専門家・薬剤師の代表を名乗る「あの議員」は、この問題についてどのような考えをもっているんでしょうね?

資料:第11回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会(2010年8月27日開催)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ojc2.html

関連情報:TOPICS
  2010.09.03 HPVワクチン集団接種なら養護教諭へのサポートが必要
  2010.08.11 子宮頸がん予防ワクチンに関する啓発CMを作成(山梨県)
  2010.08.07 子宮頸がん予防ワクチンによる有害反応の情報開示が必要
  2010.07.21 子宮頸がん予防ワクチン、公費助成は必要だが
  2010.07.08 HPV、Hibなどのワクチン「ファクトシート」


2010年09月06日 12:31 投稿

コメントが4つあります

  1. アポネット 小嶋

    木村盛世氏が8月31日のブログで取上げたNEJM 誌のSpecial Report (オープンアクセス)について、疫学が専門の坪野氏も取上げています。

    HPV Vaccination Mandates ?
    Lawmaking amid Political and Scientific Controversy
    (N Engl J Med 2010;363:785-791)
    http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsr1003547

    子宮頸がん予防ワクチンの接種義務化、米国24州中2州のみで立法化。
    (疫学批評 2010年9月14日)
    http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51850266.html

    坪野氏はHPVワクチンについて、学校で他の生徒に感染する性質のものではない(ワクチン接種の目的は感染症の学級内での感染を予防することという意見もあるらしい)ことや、HPVワクチンを接種してもすべての子宮頸がんが予防できるわけではないので、定期的に検診を受ける必要は変わらない(その費用は別にかかる)として、HPVワクチンの義務化や強力な推進には慎重さが求められるのではないかとしています。

  2. アポネット 小嶋

    感染症診療の原則でUpdate情報がアップされています。

    HPVワクチン情報Update(感染症診療の原則 2010年10月6日)
    http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/1650bf518c32b6058a6fde28859a20a2

    4価ワクチンのガーダジルが認可されたら(おそらくそんなに遠くないでしょう)、私たちもそれぞれどう違うのか答えられるようにしっかり理解を深めておく必要がありそうです。

    上記でも紹介していますが、木村盛世氏のBlog記事もアップされています

    HPVワクチンの公費助成にかかるもう一つの懸念(2010年10月4日)
    http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/10/hpv.html

    ワクチン導入の意義を厚労省は理解しているのだろうか(2010年9月31日)
    http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/09/blog-post.html

    木村氏が指摘するように、果たして10年~20年後にワクチン接種のベネフィットが検証できるかどうかは疑問の余地がありますね。

  3. アポネット 小嶋

    Eurosurveillance 誌でEUにおけるHPVワクチンの接種状況が紹介されています。

    The current state of introduction of human papillomavirus vaccination into national immunisation schedules in Europe: first results of the VENICE2 2010 survey
    (Eurosurveillance, Volume 15, Issue 47, 25 November 2010)
     http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19730

    EUにおけるHPVワクチン(感染症診療の原則 11月26日)
     http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/fb632e18789d80a54d70a3cf4f845f3a

    一方、本サイトへのリンクブログ記事でリンクされていたのですが、民主党の候補として選挙にも出ているはたともこ氏のブログ記事も目にとまりました。

    HPVワクチンGSK「サーバリックス」の公費助成・定期接種は果たして適正か?
    (ひらがな5文字の「はたともこ」ブログ 10月23日)
    http://blog.goo.ne.jp/hatatomoko1966826/e/3d1f98fb5776b90d8efa7bb1dfcc1a93

    「子宮頸がん予防ワクチン」への疑問:重大な副作用
    (ひらがな5文字の「はたともこ」ブログ 5月16日)
    http://blog.goo.ne.jp/hatatomoko1966826/e/e20a38c2b991d514c59fcf958644094d

    MSDのガーダジルの承認もどうなったのでしょうね。

  4. 厚生省資料。
    子宮頸がん等ワクチン接種 緊急促進臨時特例交付金(仮称)
    この助成は、研究目的だと明言してます。

    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000vgo6-att/2r9852000000vgtx.pdf.

    民主党足立信也厚生省政務官のオフィシャルブログ。
    川田龍平議員の質問に対し、ワクチンの安全性確認はこれから
    、とする答弁。
    http://ameblo.jp/adachishinya/entry-10621236430.html

    ザ・フナイ12月号
    「子宮頸ガン・ワクチンは効きません!」
    鶴見隆史医師(鶴見クリニック院長)。
    「いまHPV(ヒトパピローマウィルス)が子宮頸ガンの原因
    だと言われているでしょう。ところが、あれは大ウソです。HPV
    は弱すぎて子宮頸ガンを絶対つくれない。それは、アメリカで
    の研究でも判明しているのです」…続きは本誌を

    Yahooニュース。足立前政務官が振り返る政権交代後の1年。
    ”補助事業で、接種者数を増やしてデータを集めたい”との発
    言。
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101011-00000001-cbn-soci

    日経BP。足立信也政務官、子宮頸がん予防事業の目的は情報収
    集のためであると自ら説明。
    http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20100831/243832

    CBnews。子宮頸がんワクチン接種は「本来、法に基づいてや
    るべき」―足立政務官発言
    https://www.cabrain.net/news/regist.do

    子宮頸がん征圧をめざす専門家会議HP。
    ワクチン公費助成予算150億円”厚生労働大臣による報告会&記
    者会見。ワクチン代ではなく事業への補助金との発言。
    http://www.cczeropro.jp/report/rp_20100826.html

    要するに安全性と有効性が確認されていない以上、予防接種法の下での公費助成は
    不可能だから、ワクチン代ではなく、研究用に事業への補助金を出すということだと
    思うのですが。
    研究目的だなんて、国民は認識してません。