子どもに非定型抗精神病薬を処方することへの懸念(米FDA)

 18日、FDAの小児科諮問委員会(Meeting of the Pediatric Advisory Committee) が開催され、最近になって若者や小児への適応拡大が行われた薬剤について、その使用状況や有害事象(子ども・成人ごとにまとめた発売後のデータ及び若者や小児への適応追加後1年間の調査データ)などの報告が行われています。

Meeting of the Pediatric Advisory Committee(2008.11.18)
 http://www.fda.gov/oc/advisory/accalendar/2008/PedMtg111808.html 

 今回報告が行われたのは、自閉症への適応が拡大されたリスペリドン(リスパダール)や、オランザピン(ジプレキサ)、レボフロキサシン(クラビット)、ゾルピデム(マイスリー)、テルビナフィン(ラミシール)など11成分で、当日配布の資料(Briefing Information)と、コンパクトにまとめられたスライド(Slides)がFDAのウェブサイトから入手することができます。(日本でも成人への承認があるものについては、副作用の傾向として参考にすることが可能です)

 一般紙ではあまり取り上げていませんでしたが、ニューヨークタイムスやロイターなどは、適応外(off-label)としてADHDに処方される機会が少なくないリスパダールの報告を記事として取り上げています。

 報告によれば、2008年2月までの1年間にのべ148万人にリスペリドンが処方されていますが、うち38.9万人(26.3%)は18歳未満で、12歳以下も24万人を占めるなど、低年齢への処方が増加傾向にあるそうです。

 処方理由は成人では、パラノイド型統合失調症(PARANOID SCHIZOPHRENIA)が17.9%と最も多かったのに対し、18歳未満では、自閉症(12歳以下:20.5%、13〜17歳:18.2%)が最も多く、次いでADHD(12歳以下:18.2%、13〜17歳:12.2%)などが続いているそうです。

 有害事象については、承認となった1993年12月29日から2008年3月28日までに下記のような報告があったそうです。(他の薬剤も同様の形式でデータが公表されているので、これも大変参考になります。)

総 数 重大な有害事象 死亡数
成人(17歳以上) 14,910 (10,845) 14,910 (10,845) 2,035 (1,272)
小児(0〜16歳) 1,535 (1,183) 1,207 (860) 48 (33)
年齢不明 3,907 2,867 530
総数 20,352 15,103 2,613

※( )内の数字は、米国内の報告数。重複の可能性があり、例えば小児の死亡数も48例ではなく実際には31例。

※重大な有害事象(Serious adverse events)とは、死亡(death)、入院(hospitalization)、致命的なもの(life-threatening event)、障害(disability)、先天性異常(congenital anomaly)など

 一方、小児への適応拡大後1年間には、1671例の重大な有害事象の報告が寄せられ、うち小児は131例(うち米国42例)だったそうです。

 15例の重複を除いた116例のうち、特徴的症状で最も多かったのが体重増や糖尿病などの代謝異常(15例)で、錐体外路症状(Extrapyramidal)、女性化乳房(Gynecomastia)、高プロラクチン血症(Hyperprolactinemia)などが続いています。

 委員会では、新たな有害事象が認められなかったとしなからも、複数の臓器システムに影響を与える可能性があること、リスパダールによる死亡例のうち少なくとも11例はADHDへの処方だったとして、off-labelでリスパダールなどの非定型抗精神病薬を子どもに使用することへの懸念が示されたほか、遅発性ジスキネジア、ジストニジアなどの錐体外路症状が見落とされている可能性があるとして、処方医に対し、さらなる注意喚起を行うべきだとしています。

 日本でも近年ADHDの増加に伴って、リスペリドンなどの非定型抗精神病薬が処方されることが少なくないと思います。特に症状を自分で表現できない低年齢のお子さんについては、十分注意する必要があるかもしれません。

参考:ニューヨークタイムス、ロイター(2008年11月19日)


2008年11月21日 01:36 投稿

Comments are closed.