「調剤の概念」が生まれた背景と現場の受け止めは?

13日、日本薬学会は年次の記者会見で日本薬学会のワーキンググループが、近年の薬剤師に求められる調剤業務を可視化し、薬剤師の行動目標を示すものとして、「調剤の概念」を策定したことを明らかにしています。

【日本薬学会公式チャンネル 2026.03.16】(10:20あたりから)
2026年日本薬学会記者会見: 日本薬学会の活動について(石井伊都子 会頭)
https://www.youtube.com/watch?v=NtM_R6bLBN8

こちらは日本薬剤師会の依頼により、調剤というものを言語化しようと。現在法律で決められている調剤というのは非常に狭い範囲ですが、 求められている薬剤師に調剤は広い範囲になってまいりました。

そこで目的といたしまして近年の薬剤師に求められる調剤業務を可視化し、薬剤師の行動目標を示すだけでなく、社会に対して説明責任を果たすといたしました。

メンバーとしましては日本薬学会から私と医療薬科学会長の北原先生、 日本薬剤師会から常務理事の橋場先生、山田先生、そしてさらに日本病院薬剤師会からは専務理事の和泉先生、理事の濱浦先生に参加して頂いて、原案を練り、現在このような形にまとめられました。

調剤の概念については

調剤の概念とは、薬剤師が医薬品情報と患者情報を用いて薬学的観点から処方の意図を評価し、必要に応じて照会・提案した上で、処方に基づいて患者に対して個別最適化された薬物療法を提供する一連の行為である。このプロセスは継続的に行われるものである。

といたしました。

本件につきましての背景、さらになぜこのようなことが必要であったのか、また今後どのような観点が、調剤が展開されていくかにつきましては薬学会の会頭講演で一部お話をしたいと思ってございます。

今回の記者会見を伝えた業界紙記事に対しては、大きな注目を集めています。

「調剤の概念」新たに策定 ~ 薬剤師は処方意図を評価 日本薬学会
(薬読・薬剤師最新ニュース 2026.03.11)(おそらく下記記事の全文)
https://yakuyomi.jp/industry_news/20260311a/

そして、こちらの方の投稿が注目を集め、Xでは一時関連の投稿がトレンドにもなりました


今回特にさまざまな意見が飛び交ったのが「処方意図の評価」という部分についてです。

「病名当てクイズが明確化された」という表現は、まさしくこれを言い当てたものと言えるのではないでしょうか。

多くの方がご存じだと思いますが、「処方意図の評価(解析)」「(処方)提案」というワードは、国と日本薬剤師会が目指してきた、薬剤師の業務の深化(変遷)の中で出てくる概念です。

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前回の薬機法改正の議論の中でも、上記が取り上げられたのですが、当時委員であった日医の中川氏から執拗な説明の要求と、厳しい批判が浴びせられたことは、今までも鮮明な記憶として残っています。

平成30年度第4回医薬品医療機器制度部会
(厚労省 2018.07.05 開催)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00592.html

テーマ③に関する現状と課題について
(薬局・薬剤師のあり方、医薬品の安全な入手)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/02.pdf

議事録
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01164.html

○中川委員(日医)
スライドの26枚目の右側の「患者中心の業務」のところで「処方提案」というものがあります。これは、イメージはどういうことですか。薬剤師が処方を提案するのですか。

○紀平薬事企画官
事務局よりお答えいたします。

最近、特に在宅医療の中で行われている話というふうに思いますけれども、例えば医師と薬剤師が同行して在宅訪問した、あるいはタイミングをずらして行ったときに、患者さんのほうで例えば飲み切れていないとか、そういった問題があったときに、医師のほうに対して、患者さんはこういうふうに飲み切れていないので、例えばこういう医薬品の変更とか数の調整とかについて医師側のほうに情報提供するということが、この「処方提案」という言葉の中に入っているかと思います。

○中川委員
この「処方提案」という言葉も物すごい誤解を受けます。処方するかかりつけ医の立場としては、薬剤師が自分の処方に対して提案、反論するといいますか、対案を持ってきたと同じですから、これはあり得ないです。ぜひ、この文言を修正していただきたいなと思います。

それから、27枚目の「薬剤師の業務」というところで「日本薬剤師会作成」というものがあります。それで、第一世代から第五世代というふうになっていますが、現在、薬剤師の業務は第何世代なのですか。

○乾委員(日薬)
第五世代から第六世代というものも提案しているところです。地域包括ケアへ向かうということも含めてです。

○森田部会長
いや、現状は第何世代かという御質問だったと思います。

○乾委員
第五世代に向かって進んでいるところです。

○中川委員
もう第四世代は通り過ぎたのですか。

○乾委員
いや、第五世代はそれも含んでおります。全部、それを付加してきているというふうに見ていただければ。

○中川委員
この27枚目は、いつ作成されたのですか。

○乾委員
先ほど言いましたように、今、第五世代から第六世代になっておりまして、このつくったのは、もう2~3年前になると思います。

○中川委員
では、ここの第三世代から書いてある「患者インタビュー」とは何ですか。

○乾委員
これは当然ながら、患者の情報を収集するというところでございます。

○中川委員
何の情報ですか。

○乾委員
患者情報を収集するわけです。ですから、例えば今の病歴とか併用薬とか、その他、もちろんアレルギーもありますし、副作用歴とか、そういうものを含む全てです。患者情報を収集するということでございます。

○中川委員
改めてインタビューして収集するのですか。

○乾委員
もちろん、何も情報は、一番最初は新患で来られた場合はありませんから、当然ながら、そういう意味でインタビューするという意味でございます。

○中川委員
それでは、第四世代、第五世代に書いてある「処方意図の解析」というものはどういうことですか。

○乾委員
これについては、処方箋に記載された薬を単に用意すればよいというものでは、当然ながら今の薬剤師の調剤においてはそのようなことはないですので、処方箋に記載された内容、すなわち医師の処方意図がわからなければ調剤はできないということがあります。患者さんが安心して薬をもらうために、処方内容の処方意図を間違いなく理解するということ。それに基づいて調剤をするということでございます。

○中川委員
処方意図ですか。

○乾委員
はい。

○中川委員
処方した医師の意図ですか。

○乾委員
そうです。

○中川委員
それを解析するというのですか。

○乾委員
そういうことが、要するに処方内容がわからないと、その処方意図が、疑義照会するに当たっても、当然ながら患者さんがこの薬をこの量で大丈夫かというのは当然のことだと思います。

○中川委員
乾委員、今、あなたは極めて重大な発言をしているのです。処方箋を持ってきた患者さんの処方内容がいちいちかかりつけ医の意図を解析した上でないと薬を出せないとおっしゃっているのです。それでいいですか。

○乾委員
患者さんの安全・安心のためには当然必要だと考えております。例えば耳鼻科と同じ抗生物質でも使う量も違えばということもあると思いますけれども、ただ単に入力のミスということもあるでしょうし、そういうことも含めて、しっかりと薬剤師としては十分検討しながら調剤をしておるというところでございます。そのためには疑義照会もしなければならない。

○中川委員
処方意図の解析は疑義照会の範囲内ではないですか。

○乾委員
解析という言葉が誤解を与えるのであれば、その言葉を考えないといけませんけれども、私が言いたいのは、そういう医師の処方意図に基づいて服薬指導を行わないと、患者さんが誤解を招くということはあると思います。

○中川委員
それと意図の解析とは違うではないですか。

○乾委員
意図を十分検討するということです。

そう、2020年9月に施行された改正医薬品医療機器等法で示された薬剤師の職務像を何とかして定義づけて、それを調剤の概念化としたのでしょう。

一方で個人的には、今回、日本が定義がしようとしている調剤の概念は、むしろ、情報ないままに Medication Review を義務化するようなものではないかとも考えてしまいます。

入院患者の調剤の概念としてはアリかもですが、日常生活を送りながら病気に向き合っている通院患者に対し、コミュニティ薬剤師が全てに優先してどの患者にも全力で行うことではないと思います。

今回の概念化に至ったのは、日医中川氏とともにCOML山口氏の主張で位置づけられた、「地域薬剤師も病院薬剤師と同じことができるべき」という意向と、医薬分業のメリットを示したい、一部の薬系技官の推進者によって、フォローアップが前回の薬機法改正で義務化されたことから止むなく調剤という定義をはっきりとさせざるを得なくなったのではないかとも考えています。

海外でここまで深く調剤の概念を規定した国があるのかどうか、これからも調べたいとは思いますが、日本独自のようにも思います。

今回のこの漠然ととした「処方意図の評価」については、Xにはさまざまな意見が投稿されていました。(フォロワーさんの投稿を引用させて頂きました)

「処方意図」を評価って、それは突き詰めれば医師は皆良かれと思って処方してるわけで、そこ知ったとこでどうしようもない気がするのは気のせいですかね。エビデンス等に基づいて「処方そのもの」を評価して、より良いものがあれば提案していくのが薬剤師だと思ってたし現にそうしてるんだけどな。

「処方の意図」とは、医師の内的な認知過程に属する事象であり、本質的に客観的な評価になじみにくい。医師が処方を決定する際には、純粋な医学的・薬学的な判断のみが働いているわけではなく、患者自身が抱える不安や価値観、経済的背景、生活環境、さらには診療時間の制約や医療施設の特性といった多様な文脈的変数が複雑に絡み合っている。
処方という行為はこれらの要因が統合された結果として生じるものであり、それを事後的に「意図」として単純化し、第三者が評価することは、概念的にも実務的にも困難を伴う。

えっとよくわかんないんだけど、「処方の意図を評価」の「処方の意図」ってのは処方医の意図のことで、それを薬剤師が「評価する」ってことなの?? そもそも処方医の意図が薬剤師に対してハッキリ明示されてないのにそれをどう評価するの? そしてその評価した結果を、誰がどうするの??

処方意図評価じゃないんだよ。この言葉に医師会への忖度を感じますね。 それならば処方意図を明確に伝えてくれ。

私も色々仕事してるけど、在宅で診療情報提供書くれると仕事のやりやすさ提案レベルが違うんですよ。 あと、医師側の義務なのに患者情報を薬局にくれないところが多すぎる。

同じことができるべきは理想論で、それは根性でどうにかするべきものではないと。

環境も違うのだからその状況を整えることも当然必要かと。 また薬局は薬局で担うべき役割もありそこに職域を広げるべきで、あまり現状の理想論に押し込めるべきではないと思います。 やっぱり余計なことした…

「医師に対するものではなく」 分からん
「決意表明でもある」 意図を評価することが?

政治的な部分が多分にあるんだろうけど、そこまで配慮しないと言えないんだったら、最初から言わなかったらいい。言われてなくてもやるのが当然の部分なのに。

決意表明って今までやってないみたいですごく嫌

薬剤師業界、やはり相当に追い詰められているんだろうなという印象ですね。

概念であろうと本来ならフレームレス、つまり境界のないグラデーションである方が社会・政治的な自由度が高く都合も良いわけですが、それでもなお概念のフレーム化に踏み切るのは「守りの体勢」を強めたということでしょう。

今回の概念化にあたって日本薬学会のワーキンググループは、日本医師会との意見交換も行ったそうです。

「調剤権限」について、自ら考えるのではなく、なぜ日医のお伺いを立てなければいけないのか、これでは、医師の下請けにすぎないのではと思いましたが、こんな投稿も目に留まりました。

某薬剤師会が、「処方意図の評価」と言うと、医師会から反対の声が出るでしょ?だから、それを権威のある日本薬学会が代弁すると、どうなると思う?医師会や某薬剤師会にとって第三者である権威団体、発言力のある学会が提案したら、そう簡単に医師会も反発できないでしょ?

なるほどなと思った次第です。

参考:
「医薬分業自体を見直す時期」、中川日医副会長
医薬品医療機器制度部会、「薬局は今、危機にある」との意見も
(m3com医療維新 2018.07.05)
https://www.m3.com/news/iryoishin/613778


2026年03月17日 00:06 投稿

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