TOPICS 2025.06.29 で中間報告書を紹介した豪州におけるビタミンB6の販売規制ですが、25日、暫定決定を踏襲した最終決定を公表し、安全対策を発表しています。
【TGA 2025.11.25】
Stronger safety controls to be introduced for products containing vitamin B6
https://www.tga.gov.au/news/media-releases/stronger-safety-controls-be-introduced-products-containing-vitamin-b6
Notice of final decision to amend (or not amend) the current Poisons Standard in relation to pyridoxine, pyridoxal or pyridoxamine (vitamin B6)
https://www.tga.gov.au/resources/publication/scheduling-decisions-final/notice-final-decision-amend-or-not-amend-current-poisons-standard-relation-pyridoxine-pyridoxal-or-pyridoxamine-vitamin-b6
TGAでは今回の決定について、厳格な規制への強い支持を示したパブリックコメントを含む、広範な検討プロセスに基づいていて行われたとしています。
- ビタミンB6の最大推奨1日摂取量容上限量(the maximum recommended daily dose (RDD))が1日量あたり50mg以下の経口製剤(サプリメント等)は、引き続き一般小売販売されます。
- 推奨摂取量が1日あたり50 mg以上200 mg以下を含む経口剤は、薬剤師のアドバイスにより店頭で入手できます。(薬剤師販売医薬品,Phrmacist only(schedule3))
- 1日推奨用量あたり200 mgを超える経口製剤には、引き続き処方箋が必要になります。(処方箋医薬品,schedule4)
最終決定の報告書によれば、、TGAの有害事象通知データベース(DAEN)には、2025年10月31日までに、ビタミンB6を含む製品について、末梢神経障害、末梢感覚神経障害、小線維神経障害、慢性多発神経障害についての報告が250件寄せられている他、ビタミンB6過剰症も確認。
またパブリックコメントには248件(個人231、団体17)の意見が寄せられ、115件が暫定決定を支持、74件が部分的に支持、42件が不支持となっていて。暫定決定を支持する16県ではRDDの上限をさらに引き下げるべきとした提案を行っています。
パブリックコメントでよせられた個人的意見には、個人的な体験談、専門家の意見などが含まれていて、103人からは、末梢神経障害、神経損傷、筋⼒低下、⽇常生活や仕事への重⼤な影響など、ビタミンB6の毒性による重篤で、時には永続的な健康影響があったとする報告が行われています。
このうち、ビタミンB6の耐容上限量(tolerable upper intake level:UL)50mg/日未満の用量でも毒性が発生した人も31人いて、TGAでは、ビタミンB6の摂取量が50mg/⽇以下でも、⼀部の人に末梢神経障害が発生する可能性があると結論付けるのに十分な証拠があるとした暫定決定での見解を補強するものとなったとしています。
また、団体の意見は、8組織で暫定決定を支持、7組織で部分的に支持、2組織が不支持でした。
メーカーからは1⽇50~200mgを含む製品は、薬剤師販売医薬品(schedule3)ではなく薬局医薬品(schedule2)に分類するべきだという意見が出されています。
これについて、最終報告書では、
- 薬局医薬品に分類することで、ビタミンB6⽋乏症のリスクがある人への早期介入を⽀援し、public health 上の成果を向上させ、医療制度への不必要な負担を軽減できる
- 一方で、ビタミンB6は複数の情報源から広く入手できるため、⾼⽤量ビタミンB6製品を薬局医薬品に分類することは、販売時に専門家の助⾔を提供する必要がないため、消費者にリスクをもたらし続ける懸念がある
- 臨床的にビタミンB6補給が必要な人には、薬剤師のコンサルテーションまたは処方箋があれば、⾼⽤量製剤は引き続き入手可能だとして、schedule3とすべき
としています。
業界団体と複数の専門機関からは、妊娠中の吐き気や嘔吐、月経前症候群、心血管の健康など様々な健康状態におけるビタミンB6の確立された使用について言及。
これについて、最終報告書では、
- 妊娠悪阻の吐き気・嘔吐治療において1日最大200mgの投与を推奨する複数の豪州臨床ガイドラインは一般市民ではなく、GPや産科医などの医療専門家を対象としているものであり、妊娠中の吐き気と嘔吐の区別など管理方法や母体・胎児への合併症リスクが異なるとして、特に妊娠中に薬を服用する前には、医師または薬剤師に相談すべきである。
- また、心血管疾患予防における役割については、エビデンスが弱く、あいまいであり、月経前症候群や認知障害に効果がある可能性があるが、有効性のエビデンスはまちまちである
としています。
さらに提出された意見では、特に複合製品において、ビタミンB6の含有を示すパッケージ前面への記載義務化を含む、より明確なラベル表示の必要性について広範な合意が示されています。
これについて、最終報告書では、
- 多くの人が、様々な製品にビタミンB6が含まれていることを知らなかったために、複数の摂取源からの累積的な曝露につながっていることや、が様々な製品に含まれるビタミンB6の存在に気づかず、複数の供給源からの累積曝露が生じている
と指摘。
また、神経毒性に関するより強力な警告や、特に複数の供給源からのビタミンB6過剰摂取の可能性と関連する有害作用についての認識を高める教育プログラムの必要性も繰り返し訴えられました。
これを踏まえTGAは、ヘルスリテラシーのギャップ解消に向け、ビタミンB6の複数お摂取源と累積摂取量・過剰摂取による潜在的な危害について消費者を啓発する公共啓発キャンペーンを実施するとともに、変更発効に先立ち、追加の啓発キャンペーンを展開するとしています。
現在豪州では、ビタミンB6のRDDが50mg以上200mgが配合された製品は125種類(うちサプリメント等は116種類)あるとされており、schedule3を反映する表示は2007年6月1日から求められるそうです。
豪ABCの報道によれば、今回の決定について、界団体のComplementary Medicines Australiaは、規制案に反対、消費者のアクセスや薬剤師への実務的影響への懸念を表明するとともに、業界の財政的懸念も明らかにしています。
さらに、表示の見直しや広告規制、国際的な販売に潜在的な損失をもたらすと指摘しています。
また、医薬品安全性の研究者は、これは「正しい方向への一歩」だと述べるとともに、ビタミンB6は一部の食品、特にエナジードリンクに多く含まれており、過剰摂取につながる可能性があることを消費者と医療専門家は認識しておくべきだと述べています
※これまで豪州におけるPhrmacist only medicines(schedule3)薬は、「要薬剤師薬」として紹介してきましたが、今後は「薬剤師販売医薬品」と表記します。
参考:
TGA says some vitamin B6 to be removed, prescriptions needed after toxicity cases
(豪ABC 2025.11.26)
https://www.abc.net.au/news/2025-11-26/tga-confirms-removal-of-toxic-vitamin-b6-from-shelves/106052270
オーストラリアの薬の分類
(オーストラリアで薬剤師 2018.12.12)
https://auspharm.zenmed.au/archives/13961514.html
関連情報:TOPICS
2025.04.20 豪州のPharmacist only medicines
2025.06.29 ビタミンB6を多く含むサプリメントの店頭からの撤去を求める中間報告書(豪州)
2025.04.26 栄養補助食品を通じてビタミンB6を過剰に摂取すると、潜在的な危険性がある(オランダLareb)(暫定決定での報告書でも言及)
2018.10.14 ビタミンB6の漫然使用は大丈夫?~オランダでの摂取制限(メモ)(リンク切れ)
2008.08.05 ビタミンB6の摂りすぎは体に有害かもしれない(豪州)(リンク切れ)
2025.11.26 11.34更新
2025年11月26日 10:46 投稿
