医薬品等適正広告基準の見直し(パブリックコメント)

 25日、また医薬品をめぐる不親切なパブリックコメントが開始されています。

「医薬品等適正広告基準の見直し(案)について」に関する御意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170146&Mode=0

 今回の意見募集は、厚生労働省及び各都道府県の薬事監視員が広告の取締りを行う基準となる、「医薬品等適正広告基準について」(昭和55 年10 月9日薬発第1339 号各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知、改正平成14 年3月28 日医薬発第0328009 号)を、規制改革計画の一環として改正するというものですが、パブリックコメントで示された、下記概要(→リンク)だけでは何がどう変わるかさっぱりわかりません。

(参考)医薬品等適正広告基準(京都府HP)
http://www.pref.kyoto.jp/yakumu-ihan/koukokukizyun.html

改正の内容

  • 今後の広告媒体の多様化を想定し、当該基準の対象となる広告には、ウェブサイト等の新たな媒体など、全ての媒体における広告が含まれる旨を明記する。
  • 消費者にとって有益な情報となるものについては、他社誹謗や優位性の強調とならない範囲で広告を可能とする。
  • 複数の効能効果を有する医薬品等については、専門薬との誤解を招くことのないよう2つ以上の効能効果を表示することとしていたが、消費者にただちに不利益を与えるものではないことから、1つのみの表示を可能とする。
  • 名称の記載については、近年外国人永住者及び旅行者が増加していることを踏まえ、日本語の読めない消費者にも配慮し、製品の同一性を誤らせない範囲内でアルファベット併記を可能とする。
  • 特定年齢、性別等向けの広告表現については、消費者にただちに不利益を与えるものではないことから、他社誹謗や優位性の強調とならない範囲で可能とする。
  • 「新発売」という表現の使用可能期間については、昨今の製品サイクルの長期化に鑑み、製品発売後6ヶ月から12 ヵ月間に延長する。
  • その他所要の改正を行う。

 そこで、今回の改正の内容の詳細と、これまでの経緯を調べてまとめました。

 今回の改正の話が持ち上がったのは、2016年2月8日に開催された、規制改革会議の健康・医療WGでした。

【内閣府・規制改革会議】
第44回健康・医療ワーキング・グループ(2016年2月8日開催)
資料:
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/kenko/160208/agenda.html
議事録:
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/kenko/160208/gijiroku0208.pdf

 会議では、日本OTC医薬品協会から「医薬品等適正広告基準の見直し」及びそれに伴う「OTC医薬品等の適正広告ガイドラインの改訂と周知」についての要望についてのヒアリング行われました。(具体例を挙げて現状への問題点と課題を指摘。日本OTC医薬品協会プレゼンスライド→リンク

 その後、3月17日に開催されたWGの場で、この要望について、厚労省より、「厚生労働科学研究費の研究班を組織して、そこで検討していこうというように考えてございます」との説明がありました。

第46回健康・医療ワーキング・グループ(2016年3月17日開催)
資料:
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/kenko/160317/agenda.html
議事録:
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/kenko/160317/gijiroku0317.pdf

 そこで行われたのが、下記の厚生労働科学研究です

【H28厚生労働科学研究】
医薬品等の広告監視の適正化を図るための研究
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201623015A

 この研究では、薬事関連の広告の現状、規制に精通する専門家として、都道府県薬事取締当局、医師・薬剤師、消費者関係者等の参画をメンバーとして、現行の適正広告基準の精査と医薬品等の広告監視指導の運用の明確化が図られています。

 即ち、今回の改正案は、この厚生労働科学研究でまとめられたもので、詳細は下記ファイルに記されています。(ホント不親切だと思う。直リンできないし)

医薬品等適正広告基準案及び運用指針案の策定

  • [0.142MB]→分担研究報告書(p13からの表3に今回の「適正広告基準改正案」が記載
  • [0.025MB]→資料1  「医薬品等適正広告基準」で見直しが検討される箇所について
  • [0.056MB]→資料2 現行の適正広告基準との変更点を一覧表に(理由も)
  • [0.187MB]→資料3 現行の医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等との変更点を一覧表に(理由も)

 上記を見るだけでも疲れる資料ですが、実は今年6月22日に行われた医療・介護・保育WGで今回の改正案の説明が行われ、わかりやすい資料が提示されていました。

【内閣府・規制改革推進会議】
第16回健康・医療ワーキング・グループ(2017年6月22日開催)
資料:
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20170622/agenda.html
議事録:
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20170622/gijiroku0622.pdf

 これなら概要がわかりますよね。本来なら、今回のパブリックコメントでも最低でもこのくらいの資料を添付すべきだと思うのですが、「もう決まったことだから、意見なんか出さなくてもいいよ」とでも思っているのではないかと勘ぐってしまいます。

 これから、内容については精査して個人的には意見を提出しようかと思っていますが、現時点で気になった箇所を抜粋します。

「習慣性医薬品の広告に付記し、又は付言すべき事項
法第50 条第8 号の規定に基づき厚生大臣の指定する医薬品について広告する場合には、習慣性がある旨を付記し、又は付言するものとする。」の部分は削除する。

 理由は、「一般用医薬品等で習慣性医薬品に該当するものはほとんどなく、また、習慣性である旨をわざわざ広告させる必要性に乏しいことから、削除した。」とのことですが、現状でも、習慣性医薬品成分であるブロモバレリル尿素(ブロムワレリル尿素)が配合されたものとして「ウット」「ナロンエース」「ナロン」は販売されています。

 乱用による依存性が問題になっているのにもかかわらず、現状でもこれらの製品についての習慣性についての明示はなく、今回この項目を削除することは大いに問題だと思います。(むしろ、現状の基準をきちんと守らせる必要がある)

ブロムワレリル尿素(ウィキペィア・日本版)→リンク

「多数購入あるいは多額購入による値引きについて
多数購入あるいは多額購入することによる値引き広告については、消費者に不必要な購入を促すことになるので行わないこと。」を追加する

 追加は当然の対応だと思いますが、WGでは委員と厚労省との間でこういうやりとりもありました。(議事録18ページあたり)

○土屋専門委員
本当に 分かりやすくなって、ありがとうございます。特段大きな問題はないのですが、ちょっと気になったのは、6ページ目の最後の「多数、多額購入による値引き広告」は不可とするということは、広告が不可なので、実際に値引きはしてもいいわけですね。

○厚生労働省(伊澤課長)
医療用医薬品というのは薬価が決まっておりますので、保険のほうでは余りに過剰な値引きとなると望ましくないということになります。一方、OTCの値引きについては、これは自由経済ですので、厚生労働省の分野ではなくどっちかいうと消費者庁や公正取引委員会の世界になるかと思います。私どもとして実取引のところをどうこうというのは、委員御指摘のとおり、我々の規制の範疇ではないと承知しております。

○土屋専門委員
本来の医薬品であれば値引きになじまないというのは分かるのですけども、そうではないので、広告を殊更強調しなくてもいいかなという気がしたものですから。

○厚生労働省(伊澤課長)
実際上、現実には起きておりませんし、もし仮に問題になるケースがあるとすれば、それを過度に強調することによって医薬品自身を必要がない人に買わせようとしているような事例であれば当然引っ掛かってくると思いますが、団体とも話していますけれども、これ自身、余り現場で見たことはないと思われますので、いずれにしても、先生の御指摘のような点は運用段階で余り変なことにならないようによく考えていきたいと思います。

○林座長
ありがとうございます。6ページの目的・趣旨のところを見ると「当該事例がしばしばみられ、消費者に不必要な購入を促す恐れがあるため」、現行は特段の規制がないところを今回不可とすると書かれているので、安売りしてはいけないのかという疑問が私もありまして、そうではないということですね。

○厚生労働省(伊澤課長)
承知いたしました。そうではないということはもちろん何らかの形で、業界を通じてになると思いますけれども、周知が図られるように、そこは気をつけてまいりたいと思います。あくまでそれを広告の手法としてやるのはさすがに
やり過ぎということでございます。

 現状どうでしょう。ネットでは事実上まとめ売りが行われていますし、店頭に置いても総合感冒薬はいわば安売り状態です。先に上げたナロン類もそうです。しかも広告の目玉商品にもなっています。

 個人的には追加的な措置(具体的例示)も必要と思いますがいかがでしょうか。

 意見・情報受付締切日は9月25日です。皆さんも気になった点があったら意見を提出しましょう。

関連情報:
OTC医薬品等の適正広告ガイドライン2015年版
(日本OTC医薬品協会)
http://www.jsmi.jp/advertisement/pdf/guideline1506.pdf

広告審査会レポート
(日本一般用医薬品連合会)
http://www.jfsmi.jp/activity/advertisement/report/

医薬品等広告講習会 資料
(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/iyaku/sonota/koukoku/siryou.html


2017年08月26日 02:05 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    9月28日、早々とパブリックコメントの結果が公表されました

    【e-Gov】
    医薬品等適正広告基準の見直し(案)に関する意見募集の結果について
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170146&Mode=2

    パブコメでは、37件の意見(→リンク)が寄せられたそうです。(うち、今回の意見募集と関係がない意見が23件)

    ちなみに私は次のような意見を提出しました。

    「習慣性医薬品の広告に付記し、 又は付言すべき事項
    50条第8号の規定に基づき厚生大臣の指定する医薬品について広告する場合には、 習慣性がある旨を付記し、又は付言するものとする。」の部分は削除する。

    ことは反対です

    削除の理由をみると、「一般用医薬品等で習慣性医薬品に該当するものはほとんどなく、また、習慣性である旨をわざわさ、広告させる必要性に乏しいことから、削除した。」とのことですが、現状でも習慣性医薬品成分であるブロモバレリル尿素 (ブロムワレリル尿素) が配合されたものとして「ウッド」「ナロンエース」「ナロン」は販売されています。

    乱用による依存性が問題になっているのにもかかわらず、 現状でもこれらの製品についての習慣性についての明示はなく、 今回この項目を削除することは大いに問題だと思います。

    英国ではコデイン類について乱用の懸念から、Can Cause Addiction.For three days use only を広告に記載するように求めています。

    むしろ、 現状の基準をきちんと守らせる必要があると思います。

    これに対し、パブコメ結果で、厚労省の考え(→リンク)を示して頂きました。

    医療関係者も含めた関係者によって構成された研究班において議論いただいた上で、当該部分は削除することとしています。

    なお、医薬品の適正使用及び薬物乱用防止はその他の啓発活動においてしっかりと対応していくこととしています.

    研究班はOTCの乱用は存在しないというの考えのようですね

    その他、気になった部分を記しておきます

    (薬品および医薬部外品に関して、消費者への見本の提供は行ってはならない旨を適正広告基準に明記すべきと考える)

    →関係者によって構成された研究班の報告も踏まえ、これまでどおり家庭薬(通常家庭において用いられる主として対症療法剤で、すなわち外用剤、頭痛薬、下痢止、ビタミン含有保健薬等のいわゆる保健薬)を見本に提供する程度であれば差し支えないと考えています

    (クチコミ広告は、ブロガー(ブログを執筆、運営している人)等に依頼して2次的に行うものも含めて、行ってはならない旨を適正広告基準追記すべきと考える)

    →クチコミを依頼する行為は広告宣伝の依頼行為であり、本基準の対象となることは明らかであることから、追記の必要はないと考えています。

    (値引き不可の項目を撤廃することを強く希望する)

    →関係各者によって構成された研究班の報告も踏まえ、「多数、多額購入による過度な値引き広告の禁止」は盛り込むこととしています。

     ただし、当該事項は広告の禁止であり、値引きそのものを禁止するものではありませんし、過度な値引き広告を対象としたものですので、値引き広告を一律に禁止するものではないことを申し添えます。

    (副作用となる様な効果については記述を行うよう注意を促していただきたいと考える)

    →医薬品には副作用は不可避であり、想定される数も相当な数となる場合も多いことから、その全てを限られた広告スペースに記載させることは難しいと考えます。

     また、ご指摘の点につきましては、添付文書や販売時の説明において対応されるものと考えています。