病院内の薬局開設をついに容認か?(Update)

 昨日深夜にアップされた大きなニュースです。これまで、解釈をあいまいにしてきたツケがついにという感じです。(とりあえず速報。記事を更新する可能性があります)

病院内に薬局OK、政府が規制緩和検討 経営の独立条件に
(日本経済新聞 2015.02.27)

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H3S_W5A220C1PP8000/
(宅配版で全文を確認しましたが、後の部分に重要な部分はありませんでした)

 利便性に関する規制緩和の要望については、3月12日に開催される 規制改革会議(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/meeting.html)の公開ディスカッションで議論が予定されていますが、この議論を待たずに政府・規制改革会議は強引に進めるようです。

「公開ディスカッション」について
(内閣府・規制改革)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/index.html#discussion

公開ディスカッション(第2回)のテーマ追加について
(2015.01.28 第41回規制改革会議)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee3/150128/item6.pdf

医薬分業における規制の見直しについて

  • 我が国では、国民医療の質的向上を図るため、医薬分業を進めているが、健康保険事業の健全な運営を確保するため、保険薬局に対して、保険医療機関と一体的な構造とすること、又は保険医療機関と一体的な経営を行うことを禁止している。
  •  しかしながら、これらの規制のうち一体的な構造については、公道やフェンスの有無など外形的な要件となっており、これにより患者が医療機関から薬局まで移動する必要が生じるなど、患者の利便性が損なわれているとの指摘がある。
  • さらに、院内処方として医薬品を医療機関で受け取るよりも、院外処方として薬局で受け取る方が、患者の負担額は大きくなるが、負担の増加に見合うサービスの向上や分業の効果などが実感できないとの指摘もある。
  • そこで、①患者の利便性、②分業の効果などを踏まえながら、患者の視点にたった規制の在り方などについて議論を行う。

規制改革会議終了後の記者会見では、岡議長が次のようにも述べています。

第41回規制改革会議終了後記者会見録
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee3/150128/interview0128.pdf#page=3

「医薬分業における規制の見直し」でございます。これまで政策的に進められてきた医薬分業に関し、現状、いろいろな課題があるのではないかという中で、私どもが受け止めているところとしては、一つは「患者の利便性」という問題。これは病院と薬局が物理的に離れていなければいけないということで、私も経験がありますが、処方箋をもらってとことこ歩いて、道を1つ隔てた薬局へ行ってそこで薬をもらわなければならない、あるいはフェンス1つ隔てたところに薬局があるとか、「患者の利便性」という切り口から、この辺のところを一度見直したらどうだろうかという問題。

 もう一つは、薬局で薬をもらうときに我々が負担する金額と、そこでそれに見合ったサービスをしていただいているのかどうかということ、あるいは医薬分業の効果が出ているのかどうか、という角度から一度議論をしてみたらどうかということでございます。

 この発言を見ると、薬局は医療機関のすぐそばにあるのが当然という風潮なんですね。 また、院内処方と院外処方による診療報酬はそもそも考え方が違うので、負担額に差があることをもって議論するのはちょっと疑問がありますね

経営独立性といったって、土地の代金や家賃はどこに行くんでしょうね。普通に考えればその病院や経営母体(自治体など)ですよね。

 これまで、公道をつくりさえすればよいとして、事実上の門内の薬局に、月300万円の家賃だとか、78坪の土地に10億円ってのを黙認してきた厚労省の影響も大きいと思います。(→TOPICS 2013.06.04

 公立病院の新規開設や赤字経営に悩む自治体にとって、よい収入減になるでしょうが、元をただせば調剤報酬ですよね。以前も指摘しましたが、これは医薬分業の経済的利用に他なりません。

 今回の院内薬局がどの程度まで認められるかは現時点ではわかりませんが、かかりつけ薬局や医療連携ということに影響はないのでしょうか?

 もう既定路線なんだとなると、日薬は今度の規制改革会議の議論では、相当の覚悟で臨まないと論破されるでしょうし、こんな形で報道が先行した以上、出席拒否をしてもいいのではないかと思います。(日医だったら、即日プレスリリースして拒否ですね。日薬はまずそんなことはできないでしょうね)

関連情報:TOPICS
2014.11.03 薬局・医療機関間のフェンス等設置の必要性は疑問(総務省)
2013.06.04 地方自治体による病院等医療施設前の薬局用地売却に関する質問主意書
2013.04.28 地方都市で薬局用地78坪が何と10億円で落札
2010.12.21 究極の門前薬局、最高使用料は月額367万5千円
(昔の話を蒸し返したくないんですけどね)
(上記記事のリンク先は都合よくほとんど削除されているので、あしからず)

3月8日2:20 サイト内リンク追加


2015年02月27日 02:11 投稿

コメントが9つあります

  1. 患者の利便性、自己負担増の問題ですが、どうも、日本の医薬分業が成熟していないので、患者からの視点でそのような議論をせざる得ないと考えます。
    欧米と比べて、日本の医薬分業は医師の処方権、薬剤師の調剤権が完全に分離独立していない。つまり、欧米から見れば、日本の医薬分業は不完全医薬分業とみなされるのではないか。その観点をしっかり踏まえるべきです。
    日本も完全医薬分業に移行することによって、患者の薬物治療の質的向上がもたらされる。
    その社会的認識がしっかりと確立されれば、患者の利便性とか自己負担増の問題は論外となります。それが、日本ではできていない。
    日本でも欧米のように完全医薬分業が定着するようになれば、薬剤師の社会的身分も保証されて、薬歴記載によって患者の薬に対する安全性と有効性を高めなければならないとする認識と自覚もできます。一部のあるまじき企業の薬剤師の未記載事件も解消されます。
    日本の不完全医薬分業によって、医師は自分たちの調剤権の特殊権限を既得権として温存させようとしています。
    この特殊権限とは医師の自分たちの患者に限定して調剤権が認められ、医師の管理のもとでのスタッフにも投薬が許されているものです。
    この中途半端な権限を内在させた医薬分業となっているために、利便性とか負担増という、欧米では考えられない議論をせざる得ないのです。
    病院内での薬局も、医薬完全分業の概念からすれば、健全な有り様です。
    それから、私はあの未記載事件だけを報道した朝日新聞に違和感を覚えました。
    確かに、新聞社は事件報道をすることが仕事ですが、その背景に、医薬分業バッシングを推進する権力者の意図後押しがなかったのかどうか。あまりにも、報道タイミングに違和感がありすぎたからです。
    それと、患者の保険薬局に対する安易な偏見を植え付ける引き金にもなりました。
    もし、そういうことであれば、新聞社の社会的責任として、なぜ、あのような未記載事件が起こってしまったのか、その日本の歪な医薬分業における背景から説明するべきだと・・・。
    そういう歪な環境の中でも、真面目に薬歴記載に取り組んでいる薬局が大半で、あのくすりの福太郎などはその認識自覚の欠落した極々一部の企業だということを・・・。
    現場感覚では薬歴がなければ、患者に投薬・服薬指導をする上で、薬剤師は不安になりますからね・・・。

  2. ただ、病院内の薬局開設容認になれば、既存の保険薬局は崩壊する方向に進んで行ってしまう。そういう問題も孕んでいるのでしょうか。
    この容認で一番、メリットがあるのは誰なんでしょうかね。
    もっと、次元を高くして、医薬分業の議論をして欲しいですが。
    現実はそういかないのかもしれませんね。
    それと、日薬は日医に比べて頼りないですからね・・・。
    規制改革会議での公開討論でも、日医はどれだけ納得力のある提言ができるのか。
    ちょっと、疑問ですね。
    医師会の下請け団体としての立場の弱さもありますからね。
    政府や厚労省は日医に遠慮して、日薬の正論をどこまでサポートできるか。
    そちらも、疑問に思っています。

  3. イオングループ系列などの不正受験から登録販売業の受験要項の緩和

    今度はそのグループ(福太郎 ハックなど)の未記録薬歴からの院内薬局解禁

    一番得をするのは問題企業・・・・
    保険薬局のみならず薬剤師の職としての評価すらも失ってしまいます 
    いったい日本の薬剤師はどの方向に進んでいくのでしょうか 
    日薬が応戦する準備には短すぎる期間ですががんばってもらいたいです

  4. 保険薬局に対して、患者がそのメリットを感じているかどうかですが・・・。
    複数受診医療機関の重複投与チェックとそれに伴う疑義照会、薬剤師による服薬指導の付加価値などを、日薬は主張したいのでしょう。
    どうも、患者にとってはそれほどのメリットを感じない、つまり、医薬分業のコンセンサスを患者から得ることができないのではないかと懸念しています。
    問題の根本は保険薬局が処方薬だけを扱う調剤専門薬局に走りすぎた・・。
    病院内の薬局開設容認かの話題にも関わってくることですが、これからの保険調剤薬局はどのような店舗形態で、どのような医療サービスで、患者に医薬分業メリットを感じてもらうか。そこが大きな重要ポイントです。
    OTC薬を単なる利益商材として捉えられたことによって、薬剤師はその職域を狭められました。その責任の大なるところは医師の下請け化した調剤偏重の日薬にありました。
    まあ、一番、大きな責任は大手ドラックストアや大手スーパーにありますが。
    次なる薬剤師の本丸とも言える医薬分業はどのようになって行くのでしょうか。
    これも、処方薬を単なる利益商材としてしか見ていない大手ドラックストアや大手スーパーによって足を引っ張られるのでしょうか。
    来る公開討論での日薬の提言は大いに注目されるところです。
    日本の医療制度の実情を踏まえた完全医薬分業のあるべき姿の提言を期待します。

  5. 医薬分業論を論じるとき、下記の条文(医師法22条)に留意する必要がある。
    第22条医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合
    には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければなら
    ない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としな
    い旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。
    一暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成
    を妨げるおそれがある場合
    二処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その
    疾病の治療を困難にするおそれがある場合
    三病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
    四診断又は治療方法の決定していない場合
    五治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
    六安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
    七覚せい剤を投与する場合
    八薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合
    そして、医薬分業論においての医師と薬剤師の関係は「抑制と均衡」によって、患者を中心に据えた薬物治療を施さなければならない。
    ご参考までに・・・・。

  6.  今、日薬、保険薬局協会、そして、問題児のJACDSは未記載問題で騒ぎ立てています。
     医師会なら、こういう事態で、どう対処するだろうか。
     薬剤師の小粒さを私なりに感じています。
     薬剤師には薬剤管理指導料があり、医師にも医学管理指導料というものがなかったでしょうか。
     医師の管理指導料の記載は万全なのでしょうか。
     その点を疑問に思っています。
     群馬大附属病院などのあの40代医師の不祥事は何なんでしょうか。
     患者の尊い命をなんだと思っているのでしょうか。
     医師の世界特有のおごり高ぶり、これがあの醜い不祥事を引き起こしている。
     でも、医師は結束が薬剤師に比べてはるかにレベルが高いので、世間騒ぎを必要最小限に抑えるために動いている。
     悪しき製薬メーカーや医師会関連団体などの強力な応援団もいますからね。
     ああ、政府、厚労省もそうかもしれません・・・・。
     そのような背景が伺えます・・・。
     それに比べて、薬剤師は・・・・。
     小粒な薬剤師は騒ぎ立てるほど、どんどんと、自滅の道を進んでいる。
     問題の発端はやはり、ドラックストアという処方薬を利益商材ぐらいとしか見ていない、そういう自覚・認識の欠落にあると思っています。
     ドラックストアは登録販売者誕生で勢いづいて、二匹目のドジョウが狙っての、それが処方薬だった。
     薬というものを金もけ主義の商材程度としか思わない、悪しき慣習というか、そういう、土壌を持っています。
     ドラックストアが薬剤師の職域、職能の悪化に対して、足を引っ張る元凶になっています。
     もう、薬剤師は病院薬剤師、個人保険薬局薬剤師、調剤専門薬局チェーン薬剤師、ドラックストア薬剤師、スーパー系薬剤師の区別の上で、役割分担を決めたほうがいいのではないか。
     そこまで、私なりに考えてしまいます。
     薬剤師の将来像を描くのもいいですが、上述という薬剤師の現実職種が横たわっている以上・・・・。
     医師みたいな専門職化として徹底されていないところに、問題の根っこがあります。
     これからの薬剤師はそれぞれの職種、職場の上で、あるべき役割使命を高めて、薬剤師の社会的存在意義を、患者や消費者から認めてもらう。
     今の薬剤師は、あまりにも社会的地位が低すぎますからね・・・。
     まず、それが「かいより始めよ・・・。」ではないでしょうか。
     それにしても、やっぱり、薬剤師は医師に比べて、レベルの差がありすぎます。
     ただ、真面目にコツコツと薬歴に取り組んでいる現場の薬剤師さんは、ほんと、いい迷惑でしょうね。
     すみません。このテーマと直接、関係のないコメントを書き込んでしまいました。

     

  7. 「調剤薬局、薬剤師バッシング・・。」について書いた人はどういう方はわかりません。
    ただ、日記のブロクに書き込まれたものだというぐらいしか・・・・。
    これだけの文章をかける薬剤師がいるのだと嬉しく思います。
    過去にJACDSのセルフメディケーションアワードでの優秀作や佳作などを見ても、薬剤師の執筆能力の低さに驚かされました。
    内容が幼稚というか、こんな程度の内容しか書けないから、ドラックストア経営者の思うようなロボット薬剤師化されても仕方ない。
    そのような印象をもって、作品集を読んだものです。
    薬剤師も大所高所から自分の主義主張をしっかりと文章にまとめあげて、世間に発信させる。これは大いに意義あることです。
    それをしない小粒薬剤師が多すぎます。
    薬剤師には女性が多いからかな・・・。
    女性は男性に比べて、足元の現実主義者が多いですからね。
    実現可能な将来像にはあまり関心を持たない個人主義者が多いように思います。
    ごめんなさい、女性蔑視になったらお許しを・・・。
    また、不快に思うのはツイッターに書き込んでいる人の文です。
    アポネットのツイートをみても、この人みたいな文書に出会うこともありますが、中には短いセンテンスで世間に誤解を招かさせるものもあります。
    玉石混交かもしれませんが、とにかく、このような方が日薬にいて、公開討論に臨んでもらえることを期待します。
    でも、現実はそんな次元の高いものではなく、強者か弱者だけなんでしょうかね。
    嘆かわしい世の中です。
    また、テーマから外れたことを書いて申し訳ない。
    ツイートを読んでいて、書かずにはいられなくなりました。

  8. アポネット 小嶋

    公開ディスカッションの資料がアップされています。これから読んでみます。

    公開ディスカッション(テーマ2:医薬分業における規制の見直し)
    (内閣府)
    http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/discussion/150312/gidai2/agenda.html

    日薬森副会長のスライドの中で紹介されている論文は以前紹介しました。

    TOPICS 2014.07.14 医薬分業が進展すれば薬剤費は減少する(国内研究)

  9. 皆さんのツイート、公開討論の資料から、感じるのは保険薬局にとって、やはり、厳しいものになるのではないかということです。
    2009年のあの改正薬事法で、登録販売者制度が誕生して、OTC薬剤師は職を登録者に奪われました。規制改革会議の第二弾、次は保険薬局の調剤薬剤師です。
    よほど、患者(国民)にとって、医薬分業における保険薬局の存在価値が理解されなければ、そして、日医、保険協会、規制改革会議のメンバーなどのコンセンサスも得られなければ、上述は避けられない。そのように思います。
    日本の医薬分業の成り立ちを見ていると、欧米に比べて不完全医薬分業だと思いますが、その対比論は通用しない・・・。
    つまり、日本独特の文化に根付いた医薬分業が現存しているわけですから、それを踏まえた上で、これからの医薬分業のあるべき姿の中での保険薬局はどうあるべきか・・・。
    具体論となると、かなり難しい問題を抱えているとは思いますが。
    公開討論を受けて、政府、厚労省(それを取り巻く各省庁も含めて)はどのような判断を下すか。本当に目が離せませんね。
    公開討論での日薬は大丈夫でしょうか・・・・。