薬局・医療機関間のフェンス等設置の必要性は疑問(総務省)

 総務省行政評価局は10月30日、行政苦情救済推進会議からの「保険薬局が保険医療機関から経営上独立していることが十分に確保されている場合には、構造上の独立性に関する規定は緩やかに解するのが相当であり、身体が不自由な者等の利便に配慮する観点から規定の解釈を見直す必要がある。」等の意見を踏まえたあっせんを厚生労働省に行っています。

保険薬局と保険医療機関との一体的な構造を規制する規定の解釈の見直し
-行政苦情救済推進会議の意見を踏まえたあっせん-
(総務省 2014.10.30)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/89244.html

 今回のあっせんは、「薬局と医療機関の敷地境界にフェンス等を設けているが、フェンス等により仕切られていると身体が不自由な者、車いすを利用する者、子供連れ、高齢者にとっては不便であるので、一旦公道に出て入り直すべきとする杓子定規な考え方は見直してほしい」とした、静岡県の行政相談委員が受け付けた相談を受け、行政苦情救済推進会議での審議を経て出されたものです。

行政苦情救済推進会議
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/soudan_n/giji.html

(H25.12.2)
保険薬局と保険医療機関との一体的な構造を規制する規定の見直し(新規案件)  http://www.soumu.go.jp/main_content/000288630.pdf#page=15
http://www.soumu.go.jp/main_content/000288629.pdf#page=4

(H26.3.11)
保険薬局と保険医療機関との一体的な構造を規制する規定の見直し(継続案件)  http://www.soumu.go.jp/main_content/000288632.pdf#page=20
http://www.soumu.go.jp/main_content/000288631.pdf#page=4

 あっせんでは、上記議事録・資料に示されている通り、去年6月に東北厚生局が郡山市で問題となった、保険薬局指定拒否処分に関する東京高裁の下記判例が取り上げられています。

【裁判所・裁判例情報】
保険薬局指定拒否処分取消等請求控訴事件
(原審 東京地方裁判所平成23年(行ウ)第503号)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=84003

 行政苦情救済推進会議では委員より、次のような発言が行われています

  • 法律の趣旨は、医療と薬剤調剤という大きな意味での適正担保のためには分離が必要なのだと思う。一方、利用者からすると、薬を受け取る側は、柵を設けられると公道まで出なければならないから不便だと思う。
  • 健全な運営を確保する観点からは、形で示すというのは必要かもしれない一方で、やはり利用する側から多くの苦情があり、公道に出なくても済むようにして欲しいという要望が多くあるならば、便利な方がよいと思う。
  • 建物の中にあっても一体性があるといえない場合があるとか、公道に出たら一体性がなくなると言えるというのはおかしい。
  • 医薬分業を推進し始めた頃ならばともかく、医療機関内で調剤することは少なくなり、薬局で受け取ることが当たり前の時勢となった。フェンスを付けるかどうかは、実質的に意味を失っていると言えるのではないのか。
  • 処方せんがあればどこの薬局でも薬を受け取ることができるのは知られている。すぐに行ける薬局で受け取るかどうかは患者が決めることであり、行政には関係がない。患者にとって便利な方がよい。
  • 医療モールの事例が認められるなら、フェンスを付けよという指導は破綻していると言える。

 今回のあっせんで、医薬分業に関する委員の認識(処方せんがあればどこの薬局でも薬が受け取ることができるというのは知られている?!)や東京高裁の判例をフェンスの問題と結びつけるのは個人的にはどうかと思いますが、おそらく、厚労省はこのあっせんに従わざるを得ないのでしょうね。

関連ブログ:
裁判に弱いお役所仕事
(医療・介護を支える継続企業の知恵袋 2013.07.19)
http://blog.goo.ne.jp/kae-manage/e/d9feb318a39045b04df6d83fb9bb5eb9


2014年11月03日 01:58 投稿

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