病院の世紀から地域の世紀へ(日本社会薬学会シンポ)(Update)

 13日はリフレッシュの意味も含め、日本社会薬学会の年会に参加してきました。ツイッターやブログで情報を発信されている方の話ができたことや、さまざまな立場で頑張っている薬学生のお話を聞いて、とても刺激になりました。(地元でどうがんばって、実践に結び付けるかといギャップなども痛感させられましたが)

 今回紹介するのは、特に興味を引いた「病気の世紀から地域の世紀へ」という特別講演です。

 講演されたのは、2010年の著書で『病院の世紀の理論』を提唱された、一橋大学大学院の猪飼周平先生で、この著書について、ググったところ書評などの関連記事がWEB上でも結構あり、当時から話題を集めていたようです。(みんなツイッターでフォローしていた。恥ずかしいことに知らなかった)

病院の世紀の理論(有斐閣)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641173590
(Google Book →リンク 序章:第1章などがみれます)
(概要)
http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gakui/data/h22/217440/217440a.pdf
(猪飼氏コメント)
http://ikai.soc.hit-u.ac.jp/10/shosai_no_mado.pdf
(猪飼氏エッセイ)
http://yuhikaku-nibu.txt-nifty.com/blog/files/9tyosyayori_byouinnnoseikinoriron
歴史的必然としての地域包括ケア化(2011.06 未定稿)
http://ikai.soc.hit-u.ac.jp/11/jim110324.pdf

地域の安心をささえる医療
基調講演:病院の世紀から地域包括ケアへの世紀へ
(日本医療・病院管理学会誌 49(1), p51-58 2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsha/49/1/49_1_51/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsha/49/1/49_1_51/_pdf
(よくまとまっている。う~ん知らなかった)

猪飼周平研究室(一橋大学大学院社会学研究科)
http://ikai.soc.hit-u.ac.jp/

猪飼氏ブログ
http://ikai-hosoboso.blogspot.jp/

(対談)「病院の世紀」を超えて
(週刊学界新聞 2011.02.14)
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02916_01

「病院の世紀」から「地域包括ケア」の時代へ─今まさに起こっている“変革”を裏付ける理論と実践
(訪問看護と介護 2012.1)
http://medicalfinder.jp/ejournal/1688102078.html

書評
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19563709.pdf
http://user.keio.ac.jp/~aaasuzuki/BDMH/01Research/Akihito_Suzuki/ShohyoIkai.pdf
http://nakanozaitaku.jp/pdf/ikai.pdf

ブログ記事(書評)
http://d.hatena.ne.jp/jmiyaza/20110306/1299348127
http://d.hatena.ne.jp/jmiyaza/20110307/1299425160
http://d.hatena.ne.jp/jmiyaza/20111120
http://d.hatena.ne.jp/jmiyaza/20111220
http://d.hatena.ne.jp/jmiyaza/20111225
http://d.hatena.ne.jp/jmiyaza/20111229

 講演は書籍の序章、第1章、第6章をまとめた内容でしたが、ググったらありましたスライドが。 (昨日の講演でも出てきたスライドがいくつもあった)

「地域包括ケアにおける保健の意義について」
(厚労省 平成25年度保健師中央会議 2013.07.18)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000036ouk-att/2r98520000036p0y.pdf

歴史的必然としての地域包括ケア化
(東京大学医学教育セミナー 2013.09.26)
http://ircme.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/2013/07/%E7%8C%AA%E9%A3%BC%E5%85%88%E7%94%9F%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%BC%E3%83%B3.pdf

 猪飼先生は、日英米3か国の100年にわたる医療制度等について検証し、医学的アプローチが最も良いケアを意味していた20世紀の状況(医学的に病気を治す時代)から、21世紀は多様化する患者(生活者)のQOLにどう地域が寄り添っていくかを提言し、「多種多様の社会的資源の動員が必要になると考えられる」としています。

 近年、「多職種連携」や「地域包括ケア」ということが叫ばれていますが、これらを実践することを証明するうえで重要な理論となっています。

 保健師向けや医師向けの上記をスライドを薬剤師に置き換えたら果たしてどうなのか、ふと考えてみました。

 ちなみに講演で猪飼先生は次のような役割があるのではないかとしています。

  • 薬の専門家としての役割~専門性
  • 医学的治療への参入~効率性
     (新しい薬剤師に求められる仕事)
  • 地域連携の一翼としての役割~ケア観の変化
     (公共的な役割を果たす)

 いま目指している在宅業務の意義、一般用医薬品の供給とその使用、健康啓発や public Health活動など、地域社会の中で果たすべき薬局の役割は何なのかを改めて考えさせられました。

 また、ケア観やQOLが多様化した今日、特に急速には悪化しないであろう、生活習慣病を有する高齢者に対しての薬物治療や生活指導(具体的にはスタチンの投与や厳格な糖尿病の管理、喫煙の習慣など)に、薬剤師がどこまで積極的に関わるべきかも問われているようにも思いました。

 現場での新たな取り組みを広げることも必要ですが、まずは、地域薬局や薬剤師の役割について、歴史的な変遷を検証したうえで、諸外国の取り組みと比較しながら、こういった業務がなぜ必要なのか、どのようにめざすべきなのかという理論化も必要なのかもしれません。

(著書についてはこれからきちんと読んでみます)

10月18日 23:50リンク追加


2013年10月14日 02:15 投稿

コメントが1つあります

  1. 多種多様の社会的資源の動員は、医療・福祉だけでなく、防災にも必要だと思います。「利他的で社会民主主義的日本」の実現は、4半世紀ほどの長期的視野をもって対応すれば不可能ではありません。