平成23年度チーム医療実証事業報告書

6.薬剤師の活用、薬物療法等(P313-386)
  • 薬物療法を支える病棟チーム
    (千葉大学医学部附属病院)(p314-319)
    ★薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査について、医師、看護師と協働して事前にプロトコールを作成することで標準化・効率化を推進
    ★医師、看護師と協働して副作用対策について基本方針を策定することで、早期対応・回復促進を図る
    ★当該病棟の全患者を対象に初回面談を実施し、持参薬、副作用歴、アレルギー歴、健康食品等の摂取状況等の調査を看護師と連携して行う
    ★医師の定期処方入力を協働して行い、オーダ時に処方の問題点について確認を行う
    ★回診、カンファレンスに参加することにより治療計画が決定する場において薬剤師の視点からの確認、提案を行う など
  • 小児病棟医療チーム
    (筑波大学附属病院)(p320-325)
    ★小児病棟専任の薬剤師を配置し、病棟業務(がん化学療法のレジメン管理、抗がん剤調製、患者個人別注射剤取り揃え、薬剤管理指導)の充実を図る
    ★医師がレジメンをもとに作成していた、がん化学療法施行時の治療計画書を薬剤師が作成し、医師が確認することとした
    ★薬剤師の視点による処方チェックおよび混合調製技術にかかわる看護師向けon the job training なども行った
  • 創薬・医療技術研究開発推進のための支援チーム(→参考資料)
    (独立行政法人国立病院機構東京医療センタ-)(p326-330)
    ★研究事務局の一員として、法律や通知等に従い、研究を管理するとともに、未承認薬の管理、CRC(Clinical Research Coordinator)として研究を支援
  • ICUにおけるチーム医療(薬物動態を中心とした集中管理)
    (独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター)(p331-336)
    ★ICU における薬物療法では作用が急激な注射薬投不が行われるため、患者の循環動態と使用薬剤の特性、使用方法、ガイドライン等を参考に医師の処方サポートとして、処方監査、処方提案を行う。
    ★予想される副作用の未然回避、重篤化回避のための情報提供を行い、医師、看護師と協働で継続的モニタリングを行う。
    ★多種注射剤が使用されるため、限りあるルヸト数の中で、安全で効果的な投与ルートを選択する。 など
  • 薬剤師病棟常駐
    (独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター)(p337-339)
    ★患者情報を医師、看護師と共有することで安全で質の高い薬物治療が実現
    (医師、看護師に対して医薬品に関する教育や助言が可能・医師の治療方針決定後処方に至るまでの時間が短縮・副作用の早期発見が可能)
    ★持参薬を含む全ての薬歴管理を実現することで薬剤事敀を未然に防ぎ、病棟内における医薬品の安全管理を徹底することが可能
  • 薬剤師外来
    (国立がん研究センター東病院)(p340-343)
    ★経口抗がん剤治療や医療用麻薬を服用する患者に対して継続的に介入し、医師へその問診内容を還元することや処方提案を行うことで円滑な薬物治療の遂行
    ★患者教育として、緊急時の連絡や支持療法の適正な使用方法の徹底
    ★問診内容を医師へ還元し、患者状態に則した支持療法等の薬物治療への介入及び薬剤のトータル管理に関与
    ★セルフケアが必要な患者や、患者を取り巻く環境の支援が必要な場合の介入依頼と情報提供
  • 薬剤師病棟常駐
    (多摩北部医療センター)(p344-351)
    ★病棟の現場で患者情報(入退院、持参薬、術後経過、治療経過、薬の効果・副作用発生状況など)を医師・看護師と共有し、互いの職種毎でもつ専門性を活かしながら、安全で質の高い薬物治療を実現
    ★退院後の投薬管理について、患者のみならず、患者家族、転院先の医療機関等への情報提供。場合により社会福祉士、事務職員など関連職種とも連携。
    ★医薬品使用に関する、リスクマネヸジメントとして定期的に医師ヷ看護師を対象に勉強会を開催
  • 経口薬併用化学療法地域連携チーム(→参考資料)
    (国立大学法人東北大学 東北大学病院)(p352-362)
    ★薬学的エビデンスに基づくレジメン審査、レジメン管理、処方監査、薬剤指導、無菌的調剤、副作用モニタリング、処方提案、患者から得た情報の他職種への情報提供、医薬品に関する他職種への情報提供
    ◆診療連携拠点病院と院外調剤薬局、患者居住地域の一般医療機関とが連携をとることにより、正確で確実な治療実施と有害事象時発現時早期からの適切な対応を実施
  • 通院治療センターチーム 化学療法ホットライン
    (国立がん研究センター東病院)(p363-369)
    ★薬剤師及び看護師が、抗がん剤治療中の患者さんからの電話相談窓口を開設し、副作用発現時の対応への助言や指示を直接実施
  • 薬剤師の腫瘍センター(腫瘍専門病棟、外来化学療法室)常駐をいかしたチーム医療
    (総合病院 聖隷三方原病院)(p370-374)
    ★当該レジメンの妥当性の確認と制吐剤・前投薬の指示もれのチェック、投与前の検査値チェックを実
    ★患者用説明書をあらかじめ作成し投与に際しては薬剤師から患者・家族に向けた説明(スケジュール・ルヷ副作用症状・予防策・発現時の対応など)を実施
    ★投与時の副作用モニタリングを実施し、必要に応じて支持療法の強化を医師へ提言
    ★麻薬の施用時のダブルチェック、制吐剤・下剤の処方もれの確認
    ★他職種との情報共有を行うため、昼のカンファレンス・夕方の病棟会を利用し、情報提供(新規薬剤・新規レジメンなど)を行う など
  • 抗がん剤適正使用推進医療チーム
    (筑波大学附属病院)(p375-379)
    ★担当患者の治療計画書の内容の精査
    ★投与直前は検査値等を含む患者の状態を確認したのち、抗がん剤投与の可否を医師と協議
    ★がん化学療法の実施に関する患者への説明や指導を医師、看護師と分担して行う
  • 外来化学療法チーム
    (大阪厚生年金病院)(p380-386)
    ★新規レジメン導入時の文献等の情報収集およびその妥当性の評価
    ★レジメンに基づく処方監査(適用レジメンの妥当性の確認、投不量、補液の選択、投不順序、投不時間、投不速度、投不間隐などが標準レジメンと一致していることを確認。丌一致部分に関してはその妥当性を評価し、必要ならば疑義照会を行う)。
    ★抗がん剤取り扱い時の危険性の啓蒙および抗がん剤汚染事敀発生時の対処方法の周知徹底

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2012年10月20日 16:37 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    リンクの作業の関係もあり、報告書をざっと全部目を通しました。

    いずれも一定規模の施設の取組であり、人員が限られている中小の病院で実際に可能かどうかという問題はありますが、チーム医療の一員として、病院薬剤師がどのような独自活動を求められているかがわかり、地域薬剤師の私でも理解が深まりました。(こういうのを実務実習で見せられたら、進路を病院にする薬学生も増えるんだろうな)

    読んでみて感じたことは、高度調剤とは別に、副作用のチェック、せん妄対策や褥瘡対策などで、チーム医療の一員として他職種や患者とその家族に、薬剤師として視点での情報提供(と共有)が求められていうことです。

    調剤に時間が割かれては当然できないでしょうから、これらを多くの施設で展開するとなると、必要な人員の配置とともに、やはり院外処方など、調剤業務を効率化・簡素化する必要もあるのではないかと思ってしまいます。(海外では院内でも調剤の助手が一般的だったと思う)

    また、こういった取り組みをきちんとするとなると、退院したり、かかりつけ医でのフォローになったりした場合には、いままで病院薬剤師によって行われていたサポートをどう継続するか、地域薬局との連携や役割分担についての検討も必要になるのではないかと感じました。

    一方、地域薬剤師が関わる報告も一部ありましたが、施設完結型と異なり、実際に関わる難しさも感じました。(評価自体も難しい)

    すぐ思い浮かぶのは、在宅分野になってしまいますが、私は行政や開業医と連携した取り組みも、チーム医療に準ずるものとして、もっと事例を集めて検討・評価する必要があるのではないかと思っています。

    具体的には、各地で行われている、地域連携パス、禁煙支援(医療機関との連携も含む)、自殺対策、まちかどセルフチェックなど、セルフケアの支援やゲートキーパー的な関わりなど、他職種協働はさまざまな可能性があります。

    健康増進、疾病の早期発見など長い目で見れば、医療費の抑制につながるものであり、厚労省は是非こういった分野についても、きちんとした評価を行うべきだと思います。(そうすれば、薬学生も地域薬剤師活動にもっと目を向けてくれるはず)