タミフルの有用性に疑問(コクランレビュー)

 18日、ノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル、リレンザ)の効果についてのコクランのシスティマテイックレビューの更新版が発表されています。結果もさることながら、必要なデータが製薬会社から開示されなかったとして、十分な評価が行えないとの異例のコメントが付されたことから、各紙が取り上げています。(現在も各記事を検証中。一部、翻訳・解釈に自信がないところがありますのでご了承を)

The COCHRANE LIBRARY
http://www.thecochranelibrary.com/

Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children(Review)
 (PDF;1.8MB)(2014.04.10追記:このレビューはこの後も更新されており、最新版ではありません)

 各紙の情報を総合すると、レビューアー(あの浜六郎氏も入っています)は15のタミフルに関する研究、10のリレンザに関する研究をレビューしていますが、タミフルについては、日米欧の規制当局が公開した16,000ページにも及ぶ臨床試験データについて解析、その他の臨床試験については、研究デザインなどに多くの問題点があるとして、今回のメタアナリシスからは除外したそうです。

 その結果、次のようなことがわかったそうです。

  • インフルエンザの症状の緩和をプラセボの160時間より21時間早めた
  • インフルエンザ関連の下気道の合併症や入院は減らさなかった
  • 当初の症状を軽減する以外、タミフルの効果は依然として不明確
  • タミフルでは吐き気や嘔吐、リレンザではおそらく喘息などの有害事象が認められるが、副作用のエビデンスは過小報告されている可能性がある

 一方、レビューアーはレビューのための臨床データがメーカーから提供されず、きちんとした評価ができなかったとコメント、こういったことから各紙はタミフルの有用性にも疑問があるとして、多額の費用をかけて、タミフルの備蓄を行う各国政府の取り組みに疑問を投げかける記事を掲載しています。

関連ブログ
タミフル、データ出し渋りでコクランに叱られる
(新型インフルエンザ・ウォッチング日記 1月14日)
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/40da749e23ee656f2c95ed1d2ebadcd4

インフルエンザ:タミフルなどNI予防治療効果 ・・・ Rocheからのデータの不備が問題に!
(内科開業医のお勉強日記 1月18日)
http://kaigyoi.blogspot.com/view/magazine#!/2012/01/roche.html

To Disclose Tamiflu Data: Scientists
(Pharmalot 2011.01.17)
http://www.pharmalot.com/2012/01/roche-refuses-to-disclose-tamiflu-data-scientists/

Researchers renew fight with Roche over flu drug evidence
(Nature News blog 2011.01.13)
http://blogs.nature.com/news/2012/01/researchers-renew-fight-with-roche-over-flu-drug-evidence.html

参考:
読売新聞1月18日
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120118-OYT1T00471.htm
Tamiflu side-effects still unclear
(CBCNEWS 2011.01.17)
http://www.cbc.ca/news/health/story/2012/01/17/tamiflu.html
Review Challenges Tamiflu Efficacy
(abc NEWS 2012.01.17 medpage TODAY 配信)
http://abcnews.go.com/Health/ColdandFlu/anti-flu-drug-tamiflu-effectiveness-question/story?id=15381750
http://www.medpagetoday.com/tbindex.cfm?tbid=30727
Roche Tamiflu’s Effectiveness Unproven Due to Hidden Data, Researchers Say
(Bloomberg 2012.01.17)
http://www.bloomberg.com/news/2012-01-18/roche-tamiflu-s-effectiveness-unproven-due-to-hidden-data-researchers-say.html
Side effects and effectiveness of ‘wonder-drug’ Tamiflu under the microscope as Department of Health faces awkward questions over mass prescriptions
(MailOnline 2012.01.17)
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2087760/Tamiflu-Side-effects-effectiveness-wonder-drug-microscope.html
Roche accused again of withholding Tamiflu data
(Pharma Times 2011.01.18)
http://www.pharmatimes.com/Article/12-01-18/Roche_accused_again_of_withholding_Tamiflu_data-3966844354.aspx

1月18日 15:10、15:40、22:20 リンク追加


2012年01月18日 14:06 投稿

コメントが8つあります

  1. アポネット 小嶋

    コクランでは、このレビューについての論説を掲載しています。

    Neuraminidase inhibitors for influenza: methods change, principles don’t
    (Editorial 2012.01.18)
    http://www.thecochranelibrary.com/details/editorial/1442857/Neuraminidase-inhibitors-for-influenza-methods-change-principles-dont.html

    ホンマにタミフルが効いたのか?とコクランの言い分
    (新型インフルエンザ・ウォッチング日記1月19日)
    http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/63e5bbe1046d4d8ddfaf07d0561284c8

    有効性云々の話は今に始まったことではなく、これまでもBMJ誌などには有効性を疑問視する論文もが掲載されています。

    TOPICS 
     2009.12.09 タミフルの合併症の予防効果を疑問視(海外研究)
     2009.08.11 抗インフルエンザ薬は子どもに投与すべきではない(英国研究)

    ツイッター上の書き込みも興味深く、中にはコクランの方がおかしいなどの意見もあります。

    また海外報道では、当局にコメントをもらっている記事もあります。

    日本では今のところ読売新聞しか伝えていないので、そういった記事までは出ないでしょうね。

  2. アポネット 小嶋

    NHS Choices で解説記事が出ています。(英国当局の見解ともとれる?)

    Doubts cast over whether anti-flu drug Tamiflu works
    (NHS Choices 2012.01.18)
    http://www.nhs.uk/news/2012/01January/Pages/tamiflu-ineffective-claim.aspx

    おおまかな部分は元記事の通りですが、それ以外の部分について抜粋すると

    ・リレンザについては、GSK社から入手できる個々の患者への影響を示す新たなデータの入手が可能となったので、レビューは次回に行う
    ・タミフルについては、ロシュ社から十分詳細なデータを得ておらずレビューは不十分なものである
    ・全部で25の研究について検討したが、42の研究については患者の情報やデータ不足などの問題によりレビューからは除外されている
    ・これらの研究を除外したことにより、結論に影響することができた重要な情報は見落とされた可能性がある
    ・タミフルは注目を集める薬剤であり、そのレビューには大きな注意が払われるべきである
    ・はっきりとした研究結果が得られるまでは、タミフルに効果があるかどうかの見解を出すことは先延ばしにするなどの慎重な対応が必要だ
    ・しかし、完全な研究結果が現在利用できない状態になっている。その理由については不明である

    研究結果自体は批判しておらず、むしろ全ての研究データの開示をメーカーに求めたものとなっています。

  3. アポネット 小嶋

    おそらくコメントが出るだろうと思い毎日アクセスしていたところ、予想通り「薬のチェックは命のチェック」に、浜六郎氏のインタビュー(音声PDF)が掲載されました。

    薬のチェックは命のチェック(医薬ビジランスセンターNPOJIP)
     http://npojip.org/

    TOPICS 2011.12.22 で紹介した論文についても触れています

    おそらく、後日発行される季刊誌にも掲載されるものと思われます。

    今後、さまざまなところからこのコクランのレビューについての意見が出てくることでしょう。

  4. アポネット 小嶋

    BMJ 誌に関連記事が掲載されています。
    (いまのところオープンアクセス)

    Questions remain over safety and effectiveness of oseltamivir
    (BMJ News Published 17 January 2012)
    http://www.bmj.com/content/344/bmj.e467

    Rethinking credible evidence synthesis
    (BMJ Analysis Published 17 January 2012)
    http://www.bmj.com/content/344/bmj.d7898
    http://www.bmj.com/highwire/filestream/559451/field_highwire_article_pdf/0.pdf

    Flu Drugs Search for evidence goes on
    (BMJ Feature Published 17 January 2012)
    http://www.bmj.com/content/344/bmj.e458
    http://www.bmj.com/highwire/filestream/559453/field_highwire_article_pdf/0.pdf

  5. アポネット 小嶋

    「薬のチェックは命のチェック」に、コクランレビューの要旨が掲載されています。

    タミフルの効果と安全に疑問:コクラン研究
    コクラン・レビュー:成人・小児のインフルエンザ予防と治療のためのノイラミニダーゼ阻害剤
    (『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No154 2012.02.01)
    http://npojip.org/sokuho/120201.html

    コクラン・レビュー要旨
    健常な成人・小児のインフルエンザ予防と治療のためのノイラミニダーゼ阻害剤
    http://npojip.org/sokuho/no154-1.pdf

  6. アポネット 小嶋

    「薬のチェックは命のチェック」に、関連記事が掲載されています。

    タミフルなど抗ウイルス剤は免疫を抑える
    (『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No155 2012.02.02)
    http://npojip.org/sokuho/120202.html

  7. アポネット 小嶋

    薬害オンブズパースン会議の注目情報に解説記事が掲載されています。

    コクラングループが、タミフルによる入院率減少効果は認めず、合併症減少効果の情報も得られずと指摘
    (薬害オンブズパースン会議 注目情報 2012.08.23)
    http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=359

  8. アポネット 小嶋

    感染症診療の原則で引用されました。

    それでいいのかタミフル処方、の話題
    (感染症診療の原則 2013.01.09)
    http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/1b2888f0caa84f059ee1b5b69b51ea9f

    関連記事のサイト内リンクを貼っておきます

    TOPICS
     2012.10.31 The Tamiflu story(BMJ誌)
     2012.04.12 臨床試験データはすべて開示されるべき(欧州)