シアリス、前立腺肥大症の適応症を取得(米国)

 米FDAは6日、ED治療薬のシアリス(一般名:タダラフィル、PDE5阻害薬)について、前立腺肥大症の適応の承認を与えたことを発表しています。

FDA approves Cialis to treat benign prostatic hyperplasia
(FDA NEWS 2011.10.06)
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm274642.htm

 ED治療薬が、前立腺肥大に効果があるとは初めて知ったのですが、その有用性について以前から研究がすすめられており、日本薬理学雑誌掲載の記事をみると作用機序は以下の通りだそうです。

排尿障害治療薬の基礎
(日本薬理学雑誌 Vol. 129 (2007) , No. 5 361-367)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/129/5/129_361/_article/-char/ja
http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/129/5/361/_pdf/-char/ja/

  • 前立腺を支配している神経にはnitric oxide(NO)産生酵素含有神経が多く認められている
  • α1 受容体刺激によって収縮させたヒト前立腺平滑筋標本では、経壁電気刺激あるいはNO により弛緩が認められた
  • 一方、この経壁電気刺激よる弛緩反応はNO産生酵素阻害薬により抑制される
  • つまり、ヒト前立腺組織においてNOが前立腺平滑筋の弛緩に関して生理的な役割を担っていると推察される
  • NOは平滑筋細胞内のグアニリルシクラーゼを活性化することによりサイクリックGMP(cGMP)を増加させて平滑筋を弛緩させると考えられる
  • つまり、NO の作用によって産生されたcGMP を分解する酵素であるホスホジエステラーゼ(PDEs)を阻害すれば、細胞内のcGMP を増加させて前立腺平滑筋の弛緩を惹起できると考えられる

 この間研究者らは、シアリスのPED5阻害作用に着目、その有用性と安全性を明らかにし、今回の承認に至ったようです。

Efficacy and Safety of Tadalafil Once Daily in the Treatment of Men With Lower Urinary Tract Symptoms Suggestive of Benign Prostatic Hyperplasia: Results of an International Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial.
Eur Urol. 2011 Nov;60(5):1105-1113. Epub 2011 Aug 12.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21871706

PubMedで、”tadalafil benign prostatic hyperplasia”で検索→リンク(多数ヒット)

 1日1回5mg(日本で発売は5、10、20mgなので少量定期投与か)の服用で比較的早く効果が現れるようですが、従来通り硝酸製剤との併用は禁忌、また血圧低下の可能性があるとして、α遮断薬との併用は推奨できないとのことです。(併用治療についての検討はまだ十分に行われていない)

 日本新薬のHPを見たところ、日本でも開発は行われているようです。

関連ブログ:ED治療薬シアリスを前立腺肥大治療に承認(米国FDA)
           (内科開業医のお勉強日記 10月6日)
        http://intmed.exblog.jp/13763848/


2011年10月07日 10:40 投稿

コメントが1つあります

  1. 適応承認されれば、アボルブの様に、無理矢理前立腺肥大症の患者さんが増えるかもしれませんね。