タムスロシンのOTC化を検討(英国)

 英国MHRA(医薬品庁)は27日、タムスロシン塩酸塩0.4mgカプセル(英国商品名:FLOMAX、本邦販売名:ハルナール他)について、POM(処方せん薬)からP(薬局用薬)への変更についての public consultation(日本のパブリック・コメントに該当)を開始しました。(意見募集は2009年1月15日まで)

Public consultation ARM 56: Request to reclassify Flomax from prescription only medicine (POM) to pharmacy availability (P) (MHRA 2008.11.27)

 スイッチ化案として示されたのは、タムスロシン塩酸塩0.4mgカプセル14Cap入りのスターターパックと28Cap入りのもので、対象は45歳以上の男性、効能は前立腺肥大に伴う機能障害の治療(Treatment of functional symptoms of benign prostatic hyperplasia)、用法は1日1回食後(毎日決まった時間)です。

 また販売にあたっては、次のような流れを想定しています

  • 患者に質問したうえで、まず2〜10週間服用してもらう(2週間たってもよくならなかったら、薬剤師か医師に相談する)
  • 10週間目以降は、医師により前立腺肥大症の診断が行われた場合だけ販売が可能(10週間以内に、症状が前立腺肥大によるものかどうかの確認が必要)
  • 医師から前立腺肥大症の診断が初めて行われた日または、毎年の定期的なチェックを受けた日から最大1年間は購入が可能(但し、症状が変化したり,悪化した場合にはすぐに医師に診てもらう必要がある)

 つまり少なくとも一度は、医師による確定診断が必要との条件つきですが、1年に一回医師のチェックを受けさえすれば、処方せんなしでずっとタムスロシンを購入できるという、非常にユニークな仕組みです。 (10週間以内に医師のチェックをうけたかどうかの確認をどうするのかがわかりませんが)

 今回のこのような形でタムスロシンのスイッチを検討した背景には、前立腺肥大症は男性にとってありふれた病気であり、非処方せん化による自己購入で医療費を抑制する狙いがあるとは思いますが、同時に、薬局でタムスロシンを求める人からの聞き取りなどを通じて、糖尿病の有無などの健康チェックをしたり、普段医療機関にかかることが少ない男性に、積極的に医療機関にかかるよう助言するなどの橋渡し役を、地域薬局の薬剤師なら担うことが可能とMHRAは考えたようです。

 もちろん排尿困難などの症状は、前立腺肥大による場合だけではないので、MHRAでは販売時に薬剤師がチェックすべき事項(排尿時痛・血尿・混濁尿・発熱・強い口渇などの症状の有無、前立腺手術の既往歴、白内障の手術の予定の有無など)を示し、これらに該当する場合には、医師への受診を勧めることや患者の同意を得て医師への紹介状を作成する(GP Referral letter for the customer to present to the doctor)ことを求めた他、英国王立薬剤師会が策定する販売指針(Practice Guidance Tool for the Management of BPH in Pharmacy)に従うことや、十分なトレーニングを積むことを求めています。

 英国医師会などからの反発が予想され、おそらくスムーズにすすまない(最低でも1年以上、場合によっては数年?)と思いますが、もしこの仕組みがうまく機能し、医師からの理解が得られれば、おそらく次は降圧剤なども同じようにスイッチされていくのではないかと思われます。

 薬剤師の職能を医療資源として有効に活用するという、英国政府の姿勢を改めて感じると同時に、薬局において血圧のチェックや、血糖値の測定などがやはり必要不可欠であることを感じました。

関連情報:TOPICS
  2007.03.14 薬局における健康教育のためのツール(英国) 
  2008.04.25 薬剤師はさらなる役割を担うべき(英国)

11月28日 12:10更新


2008年11月28日 01:32 投稿

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