医薬品のネット販売についての国会の動き

 パブリックコメントの結果の発表も近づき、ここのところ医薬品のネット販売についての各団体の動きが高まっていますが、国会でも議員による質問が相次いでいるようです。

 民主党の前原誠司副代表はこの問題についての質問主意書を13日に提出し、21日出された答弁書がWEBにアップされています。

医薬品のインターネット販売に関する質問主意書(衆議院・質問答弁)
 http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a170241.htm

衆議院議員前原誠司君提出医薬品のインターネット販売に関する質問に対する答弁書
 http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b170241.htm

質問概要 政府答弁概要
厚生労働省は、ネット販売を起因とした重篤な健康被害について一件も把握していないことを明らかにしたと聞いているが、そのとおりと解してよいか インターネットにより一般用医薬品を購入したとの記載がある事例において入院を要する被害が生じた旨の副作用被害報告があることが確認された。(新聞報道では、「カシュウ」を服用した30代の女性の事例)
平成16年に厚労省が発出した通知「医薬品のインターネットによる通信販売について」(薬食監麻発第0903013号)の法的根拠と発出理由は インターネットによる医薬品の通信販売については、対面販売の趣旨が確保されないおそれがあるため、最小限遵守しなければならない事項を示して、指導を行ってきた。しかし、、薬剤師等が、消費者に対して、直接、効能効果、副作用、使用取扱い上の注意事項を告げて販売を行うなどの遵守事項を逸脱した事例が見受けられたことから、再度、その周知徹底を図るため、通知を発出した。
この通知は、行政指導としての性格を有するものであり、薬事法上の個別規定を根拠とするものではなく、同通知に違反することのみをもって、同法に違反するものではない。
薬事法施行規則改正案の「郵便その他の方法」とは何か、の外縁が明確になるように具体的かつ網羅的に列挙されたい 「郵便その他の方法」は、薬局又は店舗以外の場所に居る者に対して、薬局開設者等が販売又は授与を行う場合のすべての方法を指すものである。
10月7日に行われた「規制改革会議第三回重点事項推進委員会」で、厚労省は医薬品の販売につき主張する「対面の原則」について示しているが、「購入者側の状態を的確に把握する」「購入者と専門家との間で円滑な意思疎通を図る」の具体的な内容、及び「対面」の内容として、「直接顔を合わせる」ことが必要である理由はいかに 「購入者側の状態」とは、購入者等の身体の状態等を指すものであり、購入者等が医薬品を使用することの適否について判断できるよう、薬剤師等は購入者等の身体の状態等を把握した上でその医薬品の使用方法等について情報提供を行うものである。
「円滑な意思疎通」とは、薬剤師等が情報提供を行うとともに、購入者等がその内容を理解しているかどうか確認し、又はその理解のために助言すること及び購入者等が薬剤師等の助言等に対して質問を行うこと等を指すものである。
薬剤師等が適切な情報提供を行うためには、医薬品の購入者等の状態を的確に把握する必要があり、そのためには、対面販売により円滑な意思疎通を図る必要があると考えている。
妊娠検査薬について直接顔を合わせる「対面の原則」が必要である理由は 妊娠検査薬については、検査の時期やその時の状態等によって正しい結果が得られない場合があること等から、誤った使用方法等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがあるものとして第二類医薬品に指定されているところであり、薬剤師等による対面での情報提供が必要と考える。
ネット販売は、ネットの特性を活用した工夫により充実した情報提供等が可能と思われるが、ネット販売は、実店舗における購入者の顔が見える状況での対面販売と違って、国民の安全を確保できないとする科学的証拠は何か 薬剤師等が対面販売により情報提供を行う場合に比べて、「購入に当たって医薬品を示しながら説明を行うことができない」「購入者側が情報提供を求めた場合の対応に時間を要する」「購入者側のその時の状態を把握することが困難」などの問題点がある。
ネット販売では、使用上の注意に関する情報等をウェブ上で分かりやすく示すことができ、メール、電話等を活用してのコミュニケーション、必要な情報を入力させるなどの方法により購入者側の状態を把握することが可能ではないか メール、電話等を活用する方法や、必要な情報を入力させるなどの方法をとった場合でも、購入者側が情報提供を求めた場合の対応に時間を要する場合や情報提供が十分に行えない場合があり、対面販売の場合に比べて、医薬品が不適切に使用される危険性が大きいものと考える。
ウェブ上で専門家の資格に関する情報を提供することが可能であることから、「専門家によって行われているかどうかを確認することが難しい」というのは理由がないと考えるが 実店舗の場合、購入者は着衣や名札によって、薬剤師や登録販売者などの専門家が情報提供を行っているかどうかの判断ができるが、ネット販売では、実際に薬剤師らが情報提供を行っているかどうかを、購入者が確認することは困難であると考える。
ネット販売は、高齢者、障害者、妊婦、育児中の方など外出が困難な方のニーズ、田舎のため近くに医薬品を扱う店舗がない場合のニーズなどといったネット販売での購入を必要不可欠とする消費者の切実な声に応えている。今回の省令案では、それらのニーズが完全に無視されることになるのではないか 要望があることは承知しているが、これらの方についても、一般用医薬品による副作用を防ぐため、その適切な選択及び購入並びに適正な使用を担保することが重要であり、特に、高齢者、障害者、妊婦、育児中の方については誤った医薬品の使用により重大な副作用被害の発生につながるおそれがあることから、より一層適切に情報提供を行うことが必要であると考える。
規制改革会議では、ネット販売を制限する根拠条文は法律上になく、省令への委任内容を超えており違法ではないかと主張しているが、これは厚労省との見解と異なり、政府部内で見解が真二つに分かれている。ネット販売を制限する法律上の根拠規定の有無及び省令で制限を課す合法性の有無につき、政府(内閣法制局)としての見解はいかに 新法第三十六条の五の規定は、薬局開設者等が行う一般用医薬品の販売方法について定めるものであり、また、新法第三十六条の六の規定は、薬局開設者等が行う一般用医薬品の情報提供の方法について定めるものである。具体的な販売方法や情報提供の方法については、これらの規定に基づく厚生労働省令において定めることとされており、その具体的内容として、御指摘の薬事法施行規則改正案において、対面販売やその際の情報提供の方法等について定めることとしているものである。
規制改革会議は、平成20年10月24日の「第三次答申に向けた規制改革会議の重点分野と課題」等において、ネット販売に関して、省令案に係る「措置の導入には問題があり、IT時代にふさわしい新たなルール整備が必要」としており、厚生労働省と規制改革会議とで見解が明らかに分かれている。そのような中で、厚生労働省の省令案が確定されてしまうことは非常に問題があると考えるが、政府としての見解ははいかに 改正法の基本的な考え方は、インターネットによる通信販売であるか否かにかかわらず、一般用医薬品の販売に当たっては、薬剤師等が購入者に対して対面により適切な情報提供を行うことを担保するというものであるが、これは、「IT時代にふさわしい新たなルール」を検討していくことの必要性そのものを否定するものではない。

 さらに前原氏は、医薬品のインターネット販売に関する再質問主意書を12月22日に提出しています。

医薬品のインターネット販売に関する再質問主意書(衆議院・質問答弁)
 http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a170371.htm

衆議院議員前原誠司君提出医薬品のインターネット販売に関する再質問に対する答弁書
 http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b170371.htm

質問概要 政府答弁概要
インターネットにより一般用医薬品を購入し、入院を要する被害が生じたとする副作用被害事例において、当該一般用医薬品(生薬製剤の「首烏片」)の購入と副作用被害との間の因果関係と対面販売により当該副作用被害が防げたとするならば、その理由は? 当該医薬品の副作用については、当該事例の当時、使用上の注意として記載されておらず、薬剤師等が把握していたわけではないが、添付文書には一か月程度服用しても症状がよくならない場合は服用を中止する旨が記載されており、対面販売により適正な服用方法や副作用の発現時の対応等についての説明を受けていれば、副作用の重症化を防ぐことができた可能性はあると考えている。
厚生労働省が公表した省令案では、第一類医薬品の販売については、「薬剤師の管理及び指導の下で薬剤師以外の従事者に販売させる」方法も認められ、第二類医薬品の販売については、「薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下で薬剤師又は登録販売者以外の従事者に販売させる」方法も認められている。これは、「薬剤師等が、消費者に対して、直接、効能効果、副作用、使用取扱い上の注意事項を告げて販売する」との「対面販売」と矛盾するのではないか。 薬事法の一部を改正する法律(平成十八年法律第六十九号。以下「改正法」という。)第一条による改正後の薬事法(以下「新法」という。)第三十六条の五に規定する厚生労働省令で定める事項として、一般用医薬品の販売方法について定めるものである。一方、先の答弁書(平成二十年十一月二十一日内閣衆質一七〇第二四一号。以下「前回答弁書」という。)五についてでは、新法第三十六条の六に規定する厚生労働省令で定める事項として、情報提供の方法について、対面販売の際に薬剤師等が行うこととすることを定める旨をお答えしたものであり、それぞれ省令において規定すべき事項が異なるものであることから、両者は矛盾するわけではない。
「身体の状態等を把握した上で」とあるが、改正後の薬事法において、この条件を対面販売なら担保できるとし、ネット販売では担保できないとする理由如何。例えば、対面販売において直接顔を合わせるだけで購入者の身体の状態等を全て見通すことはできないのではないか、また、本人ではない代理人が購入に来店した場合、その代理人と顔を合わせても使用者である本人の身体の状態は分からないのではないかといった点が疑問のため、身体の状態等の把握につき「直接顔を合わせる」ことのみを必須の条件とすることには疑義があるが 薬剤師等が対面により情報提供を行う場合に比べて、郵便その他の方法による販売(以下「郵便等販売」という。)により情報提供を行う場合は、購入に当たって医薬品を示しながら説明等を行うことができないこと、購入者側が情報提供を求めた場合の対応に時間を要すること、購入者側のその時の状態を把握することが困難であること等の理由により、医薬品についての情報提供が十分に行えないことから、対面販売を担保する必要があると考えているものであり、「直接顔を合わせる」ことのみを必須の条件としているわけではない
妊娠検査薬について、「検査の時期やその時の状態等によって正しい結果が得られない場合」があり、その場合を前提とした「誤った使用方法等」を回避することが、直接顔を合わせる対面販売のみでしか可能ではない理由を明確に説明されたい。直接顔を合わせない限り、検査の時期やその時の状態等を薬剤師等専門家は把握できないという主張でなければ規制の合理性を説明できないと考えるので説明を願いたい。 妊娠検査薬は第二類医薬品に指定されており、誤った使用方法等により日常生活に支障を来す程度の健康被害を生じるおそれがあると考えている。対面販売の場合に比べて、郵便等販売の場合は、購入者側のその時の状態を把握することが困難であること及び購入者と専門家の間で円滑な意思疎通を図ることが困難であることから、医薬品が不適切に使用される危険性が大きいものと考えている。
現状行われているネット販売について、対面販売と比較したときに対面販売でないことに起因とする副作用事故が多数発生しているなどの数値的データは存在せず、新たな規制を課すために必要なデータの裏づけを基にした説明は何も示されていないが、それに対する見解如何。 医薬品については、程度の差はあるものの、効能効果とともに副作用を有するものであり、出来る限り、副作用の発現の可能性が少なくなるように制度設計を行っていく必要があると考えている。
一般用医薬品による副作用を防ぐため適切に情報提供を行うことは必要であり、高齢者、障害者、妊婦、育児中の方についてもそれらが確保されることはもちろん重要である。一方、前回の質問主意書の九の質問で明らかにしたように、これらの方をはじめ種々の方がネット販売での購入を必要不可欠とする消費者の声があることも事実である。答弁書の「十二について」の中でも、「「IT時代にふさわしい新たなルール」を検討していくことの必要性そのものを否定するものではない」ともある。したがって、政府としては、改正法施行に向けた準備としてルール化の検討の具体的工程を示すべきと思うが、厚生労働省及び規制改革会議の見解並びに政府全体としての見解如何。 政府としては、改正法の円滑な施行に向けて、地方公共団体等による十分な準備期間を確保できるよう、関連省令等を速やかに制定するとともに、規制改革会議等の意見も踏まえつつ、インターネットによる通信販売の在り方について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしたい。

 ネット販売など薬事法関連の事項については、21日に行われた衆議院厚生労働委員会でも、三井辨雄議員(民主党)による質問と政府・答弁が行われています。

 三井議員は、「今回の薬事法、インターネット販売についての規制や罰則については今後どのようになるのか」と質問したのに対し、厚労省の高井医薬食品局長は、「違反した場合、罰則はないが、営業停止や許可取り消しの対象になる」と答弁しています。

衆議院会議録(厚生労働委員会、第170回第6号をクリック)
  http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm

 一方、参議院では11月25日付けで、社民党の又市征治議員が、医薬品の販売体制に関する質問主意書を提出しています。

医薬品の販売体制に関する質問主意書(参議院・質問主意書情報)
 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/170/meisai/170102.htm

質問概要 政府答弁概要
オンラインドラッグ協会へのヒアリングでは、オンラインで相談があったタイミングではなく二四時間以内に返事をしたり翌日にまわってしまうこともある、との答えもあったという。対面販売によらないゆえの相談・応答・服用の間のタイムラグは、薬害につながるおそれがあると考えるが、政府の見解を示されたい。
 また、専門家による情報提供は、購入者の状況に即して適切に必要な情報を提供することと考えるが、遠隔地のコンピュータディスプレイ上において同等の対応が可能であると考えるのか、政府の見解を示されたい。
コンピューターディスプレイ上で対応しながら販売又は授与を行う場合を含め、薬局又は店舗以外の場所に居る者に対して、薬局開設者等が医薬品の販売又は授与を行う場合は、購入者側のその時の状態を把握することが困難であること等の理由により、対面販売の場合に比べて、医薬品についての情報提供が十分に行えないことから、医薬品が不適切に使用される危険性が大きいものと考えている
一般的なインターネット商品の消費者ニーズは、時間的に制限のある購入者とか、地理的に制限のある購入者、更には、店頭での購入をためらう商品に関しての購入者であり、「安い」、「配達してくれる」、「ポイントがたまる」等がその利点だと公表されていて、安全性が問題にされていない。
 解禁論者は、インターネット通販業者のみが地理的に不便な地域へのサービスを提供できるがごとく標榜しているが、過疎などの地域へのサービスは既に置き薬業者・配置販売業者が行っているのであり、そこでは対面販売が行われている。
 消費者ニーズに応じることも必要だが、医薬品という健康・安全に直結した特別な商品にあっては、専門家による対面販売によって、健康保持、薬害の防止、安心と安全を守ることが国民にとって大切であり、対面販売の重要性を啓発すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
国民の安全と安心を確保する観点からは、一般用医薬品の販売に当たっては、薬剤師等が購入者に対して対面によりその使用等について適切な情報提供を行うことが重要であると考えており、国民に対して、このような対面販売の重要性を啓発してまいりたい。

関連情報:TOPICS
    2008.10.09 ネット販売、規制改革会議の疑問にどう答えるか?
    2008.09.17 薬事法施行規則等に関するパブリックコメント

関連記事:
 政府がネット販売で答弁書(薬事日報HEADLINE NEWS 11月26日)
  http://www.yakuji.co.jp/entry8583.html
  http://yaku-job.com/news/item_924.html

ネットで購入の薬で肝障害 女性入院、厚労省調査
  (47NEWS 11月21日 共同通信配信)
  http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008112101000890.html

12月1日 14:40更新 2日 14:40更新 19日 23:50更新 1月20日 16:30更新


2008年11月27日 10:54 投稿

コメントが3つあります

  1. アポネット 小嶋

    1日、前原議員の質問主意書の答弁がWEBにアップされましたので、加筆更新しました。

    新聞報道では取り上げられませんでしたが、最後の項目の「これは、「IT時代にふさわしい新たなルール」を検討していくことの必要性そのものを否定するものではない。」とした部分は、今後に含みを残します。

  2. アポネット 小嶋

    又市議員の質問主意書の答弁がWEBにアップされましたので、加筆更新しました。

    又市議員は、この他に医薬品配置販売業者への講習や研修の必要性などについて質問をしています。

  3. アポネット 小嶋

    民主党の前原誠司副代表は、医薬品のインターネット販売に関する再質問主意書の答弁がWEBにアップされましたので、加筆更新しました。

    本サイトの(TOPICS 2008.09.17)でも指摘した、第一類医薬品の販売について、「薬剤師の管理及び指導の下で薬剤師以外の従事者に販売させる」方法も認められ、第二類医薬品の販売についても、「薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下で薬剤師又は登録販売者以外の従事者に販売させる」方法も認められているとして、「薬剤師等が、消費者に対して、直接、効能効果、副作用、使用取扱い上の注意事項を告げて販売する」との「対面販売」と矛盾するとした指摘についての答弁はよくわかりませんでしたが、改正後の薬事法第三十六条の五に規定する厚生労働省令で定める事項の条文として盛り込まれるようです。