究極の門前薬局は「公の施設」の指定管理者?

 TOPICS 2010.09.02 で、足利市市民薬局条例案が市議会に提案されたことをお伝えしましたが、入手した議案・条例案を読むと、なぜこの条例案が「足利市市民薬局条例」という名称となったのかという理由が何となくわかってきました。

 議案は、

議案第46号 足利市市民薬局条例の制定について

 市民の健康増進及び利便性の向上に寄与することを目的として、休日等及び夜間を含めた院外処方等に安定して対応できる足利市市民薬局の設置及びその管理運営に関し必要な事項を定めるため、条例を制定しようとするものである。

(議決の根拠)
●地方自治法 第96条(議決事件)
(参照事項)
●地方自治法 第2条(地方公共団体の法人格とその事務)
         第14条(条例の制定及び罰則の委任)
         第244条(公の施設)
         第244条の2(公の施設の設置、管理及び廃止)

となっており、条例案(→PDF)では何と、市による立入検査が行われる場合があることまで記されています。

 足利市では、公共施設の食堂・売店などについては、足利市行政財産使用料条例(→リンク)で、使用料が決められていますが、今回募集する4区画の施設について、条例案(→PDF)で事細かな規定があるのは、行政財産の使用に関する条例ではなく、「公の施設」の設置と管理に関する条例のためのようです。

 地方自治法第244条(→リンク)には、次のような条文があります。

   第十章 公の施設

(公の施設)
第二百四十四条  普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2  普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3  普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

(公の施設の設置、管理及び廃止)
第二百四十四条の二  普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。
2  普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。
3  普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。
4  前項の条例には、指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする。
5  指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする。
6  普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
7  指定管理者は、毎年度終了後、その管理する公の施設の管理の業務に関し事業報告書を作成し、当該公の施設を設置する普通地方公共団体に提出しなければならない。
8  普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。
9  前項の場合における利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとする。この場合において、指定管理者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。
10  普通地方公共団体の長又は委員会は、指定管理者の管理する公の施設の管理の適正を期するため、指定管理者に対して、当該管理の業務又は経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができる。
11  普通地方公共団体は、指定管理者が前項の指示に従わないときその他当該指定管理者による管理を継続することが適当でないと認めるときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて管理の業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。

 条例案(→PDF)には、「指定管理者」との文言こそ出てませんが、私には「使用予定者」=「指定管理者」に思えてなりません。

 法律的にどう解釈されるかは、専門家ではないのでわかりませんが、「究極の門前薬局」は、もしかすると市営薬局の指定管理者とみなすこともできるのではみされてしまうことはないでしょうか。

 おそらく、今回の条例名が「市民薬局条例」となったことや、条文に「市民薬局」と記されているのはこういった理由や背景があるのだと思います。

 であるなら、「使用予定者」の選定にあたっては、その公共性を考慮し、単に高い使用料を払ってくれるところを優先的に選定するのではなく、管理を安定して行う人員能力や公共性なども考慮してもよいのではないでしょうか。(例えば、使用料は始めから設定し、書類審査や抽選などの手法をとるとか。4区画というのも違和感あるけど。)

 そして、「究極の門前薬局」群が、市の「公の施設」の指定管理者であるのならば、結果的に4区画は全て市営薬局と見なされるべきではということは果たしてないでしょうか?

 無償で市の土地を足利赤十字病院に貸与する足利市が、道路一本隔てているとはいえ、市営薬局を事実上経営するというこの構図は、療担規則上果たして独立した関係と解釈されるのでしょうか?

 後で、保険薬局の許可が下りないなど、混乱が起こることがないよう祈るばかりです。(厚生局は、現時点では問題なしとの判断のようですが・・・

 いずれにせよ、こういった形(内容)での条例の前例は作って欲しくないですね。(議会の決定ですので、設置そのものについては容認しますが)

資料:公の施設(法務Wiki) 指定管理者制度(足利市ウェブサイト)

関連情報:TOPICS 2010.09.02 足利市市民薬局条例案が提出


2010年09月09日 01:00 投稿

Comments are closed.