ジヒドロコデイン配合OTC風邪薬,事実上使用禁止へ(英国)

英国医薬品庁(MHRA)は3日,コデイン,ジヒドロコデインが配合されているOTC製品について,濫用や依存性の危険性が高いとして,効能の一部削除などの安全対策を行うと発表しました。

New advice on OTC analgesics containing codeine
(MHRA 2009.9.3)
http://www.mhra.gov.uk/NewsCentre/Pressreleases/CON057115
(→アーカイブ)

Updated advice on non-prescription medicines containing codeine or dihydrocodeine (DHC) (MHRA 2009.9.2)
http://www.mhra.gov.uk/Safetyinformation/Safetywarningsalertsandrecalls/
Safetywarningsandmessagesformedicines/CON057118

(→アーカイブ)

【医薬品安全性情報 Vol.7 No.21 2009.10.15 】(上記和訳)
乱用と依存症のリスク防止のため codeine または dihydrocodeine を含有する OTC 鎮痛薬に対する規制強化を勧告
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly7/21091015.pdf

英国では,(アセトアミノフェンの)鎮痛作用を強化する目的でコデインやジヒドロコデインが配合されたOTC鎮痛薬については,濫用防止のため32錠を超えるものについては,“dispensing only”と表示するなどして自主的な販売規制を行ってきましたが,一部の店舗で100錠を超えて販売されるなど,十分な対策が取られていないとして,今回の安全対策の発表に至ったようです。

MHRAでは,今後次のような対策を行うとしています・

  • 今後,効能は「アセトアミノフェンやイブプロフェン,アスピリンのみで改善されない急性の中等度の痛み」のみとし,かぜやのどの痛み,咳,軽度の痛みなどの効能は削除する
  • 短期間(最大3日間)の使用に留めることを患者向け説明書やラベルに明記する
  • パッケージの正面にはっきりと ’Can Cause Addiction. For three days use only’ という表示を義務づける。広告を行う場合も同様。
  • 患者向け説明書には,依存の兆候を示す症状を追記する
  • 薬局医薬品は32錠までとする
  • メーカーに対しては2009年12月31日までに対応を求めると共に,店頭品についても3〜6ヶ月以内に対策をとること求める(対応が早いですね)

今回のMHRAの発表は,事実上コデイン・ジヒドロコデインの風邪症状でのOTC配合を禁止するものです。日本では,アセトアミノフェン+ジヒドロコデインというパターンのOTC鎮痛剤はありませんが,総合感冒薬の配合をみるとこの組合せはかなりありますね。以前にも述べましたが,日本では総合感冒薬での濫用や依存というのは果たして存在しないのでしょうか?

業界団体のPAGB(The Proprietary Association of Great Britain http://www.pagb.co.uk/)は3日,直ちに対応するなどとしたプレスリリースを発表すろともに,毎年英国内で販売されているOTC鎮痛剤約3億パックのうち,2700万パックがこれに該当するとしています。

Industry supports changes to information about over-the-counter products containing codeine(PAGB 2009.9.3)
http://www.pagb.co.uk/pressarea/releases/codeinestatement3.9.09.pdf

Over-the-counter pain relief medicines containing codeine
http://www.pagb.co.uk/pressarea/releases/Codeineproductlist.pdf

コデイン配合のOTC鎮痛薬は,豪州などでも問題になっており,コデイン・ジヒドロコデイン配合製品が,総合感冒剤や咳止めとしてOTCとして販売されている日本でも軽視できない問題です。

せめて,英国のように「依存する危険があります」くらいは箱にはっきりと書いた方がよいと思います。そして,これらを配合するOTCのネット販売の禁止はもちろんのこと,「かぜをひいたら,○○を」といったTVCM,大包装品の大量陳列などもちょっと考えたほうがよいかもしれません。

関連情報:TOPICS 2009.1.26 OTC鎮痛剤で依存が起こるか?(英国)


2009年09月04日 00:44 投稿

コメントが3つあります

  1. コデイン中毒は増えています。ブロン液の万引きは連日です。お一人様1つという制限も 数店舗を常連にすれば問題解決でしょう。ネット販売では 箱買いをしていたという客が来ましたよ。
    ブロバリン中毒も増えています。ウットという商品名で売っています。2類。
    でも、中毒患者を受け入れて更生させる施設も財源もこの国には無いですよね。

  2. アポネット 小嶋

    政権交代で,ネット販売の規制緩和を期待する向きもありますが,やはり依存性(ジヒドロコデイン,デキスロトメトルファン,プソイドエフェドリンもかな)がある成分が含まれるものは禁止されるべきだと思います。

    これら成分が含まれているものは,対面販売だけで安全が確保できるとは思えません。厚労省や薬剤師会は規制緩和の反対を唱えるならば,依存症を扱う精神科の施設やダルクなどの更正施設などの調査を行うなどして実態を把握すれば,おそらく納得すせるだけのデータは出てくるのではないかと思います。

    それでもOTCかぜ薬(特に総合感冒薬)や咳止め薬(一応パッケージ制限はありますが)のネットでの販売を求めるのならば,これら成分が配合されていないものに限定されるべきだと考えます。消費者は納得しないでしょうが。

  3. アポネット 小嶋

    10月16日、英MHRAは添付文書や外箱表示についての具体的な指針を発表しています。

    MHRA guidance on the development of artwork in relation to medicines containing codeine and dihydrocodeine(MHRA 2009.10.16)

    内容の概要は下記サイトで紹介しています。

    コデインとジヒドロコデインを含有している薬に関するMHRA指導
     (医薬品・化粧品・食品に関する情報提供 10月22日)
     http://yakuji.exblog.jp/10367931/