アスピリンや抗酸化薬は心臓病の一次予防には有用ではない(英国研究)

 英国の研究者らは、アスピリンが心臓病の一次予防には有用ではないとした研究をまとめ、16日、BMJ 誌のオンライン版に論文が掲載されています。

The prevention of progression of arterial disease and diabetes (POPADAD) trial: factorial randomised placebo controlled trial of aspirin and antioxidants in patients with diabetes and asymptomatic peripheral arterial disease
  (BMJ 2008; 337:a1840)
   http://www.bmj.com/cgi/content/full/337/oct16_2/a1840

 この研究は、心臓血管病(cardiovascular disease)の症状がない糖尿病(1型・2型)または無症候の末梢性動脈疾患を持つ40歳以上男女の1276人を対象に行われた二重盲検ランダム化比較試験で、毎日「アスピリン(100mg)+プラセボ服用」「アスピリン+抗酸化薬カプセル(α-トコフェロール200mg、アスコルビン酸100mg他7成分配合)を服用」「プラセボ+抗酸化薬カプセル服用」「プラセボ+プラセボ服用」の4群に分け、約7年間追跡調査しています。

 その結果、約7年後までの死亡数はアスピリン服用群で少なかったものの(有意差なし)、心臓発作またはこれらに伴う死、足を切断するほどの四肢の虚血などの心臓血管病イベントが発現したのは、プラセボ群で638人中117人であったのに対し、アスピリン服用群でも638人中116人で有意な差が見られなかったそうです。

 一方抗酸化薬カプセルの服用の有無の比較では、約7年後までの死亡数は抗酸化薬カプセル服用群で1.49倍多かった(有意差あり)ものの、心臓血管病イベントの発現についてはプラセボ群で636人中116人、抗酸化薬カプセル服用群でも640人中117人で有意な差が見られなかったそうです。

 また、抗酸化薬とアスピリンの相乗効果についても有意差はなかったとしています。

 研究者らは、アスピリンや抗酸化薬を心臓血管病のイベントの一次予防で使用することを支持するエビデンスは見出せないと結論づけるとともに、同様の研究結果が既にいくつも報告されているとして、心臓病予防にアスピリンを投与することを見直すべきではないかと指摘しています。

 アスピリンは安価で、医療経済的にも有用な薬とされてきましたが、一方で消化器系の副作用が少なくないことを考えると、これら疾患の治療ガイドラインが近い将来変更されるかもしれません。

参考:Aspirin use in people with diabetes
    (NHS Choice 2008.10.17)
 http://www.nhs.uk/news/2008/10October/Pages/Aspirinuseinpeoplewithdiabetes.aspxAspirin Fails Again for Primary Prevention
    (Medpage TODAY 2008.10.16)
 http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Prevention/11359
Aspirin does not prevent heart attacks in patients with diabetes
    (Eurek Alert 2008.10.16) 
 http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-10/bmj-adn101608.php
Aspirin Doesn’t Prevent First Heart Attack, Stroke
    (Health Day 2008.10.16)
 http://www.healthday.com/Article.asp?AID=620404


2008年10月17日 20:14 投稿

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