ドイツ保健省は、ドイツ連邦議会で薬局改革法案(Apothekenreform)(薬局サービスのさらなる発展に関する法律ApoVWG:das Gesetz zur Weiterentwicklung der Apothekenversorgung)が可決されたと発表しています。
この法案では、今後、患者が薬局で予防接種、予防医療、検査などのサービスを受けられるようにすることを規定。また、特に地方における薬局の運営を確保することを目的としています。
【ドイツ連邦保健省 2026.05.22】
Bundestag beschließt Apothekenreform
https://www.bundesgesundheitsministerium.de/ministerium/meldungen/bundestag-beschliesst-apothekenreform-pm-22-05-2026
上記ファクトシートと各紙報道を合わせると、薬局改革法により、今後次のような取り組みが行われる(可能となる)とのことです。
1.地方の薬局の強化
特に地方の薬局に対する報酬について、夜間・緊急サービスへの助成金を大幅に引き上げることでこれを強化、緊急サービス定額報酬はこれによりほぼ倍増となる。
今後は、部分的な緊急サービス(20時から22時まで)に対する補助金を支給する。その額は完全な緊急サービスに対する補助金の20パーセントとなる。
へき地や遠隔地において医薬品の供給が制限されている場合、今後は支店薬局を開設することが可能となる。
医薬品の供給を確保するため、遠隔地の薬局については、特定のケースにおいて、経験豊富な薬剤師助手(PTA)が医薬品の調達を担当し、薬局の負担を軽減する試みを5年間試験的に導⼊する。
2.予防医療
薬局は、心血管疾患、糖尿病、喫煙支援など、予防や早期発見に関する新たなサービスを提供できるようになる。
3.予防接種
インフルエンザや新型コロナウイルスの予防接種に加え、薬局では「不活化ワクチン」を用いたすべての予防接種が受けられるようになる。
今後、破傷風やダニが媒介するウイルス感染症(FSME)などに対しても接種が可能になる予定
また、PTA(Pharmazeutisch-technische Assistenten、アシスタント)、Pharmazieingenieurinnen(薬剤師助手、旧東独)、薬学生も予防接種が可能となる
4.迅速検査
パンデミック時の新型コロナ検査と同様に、患者は自己負担で、インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルスなどの特定の病原体に対する迅速検査を受けられるようになる
これは感染連鎖をより迅速に断ち切ることも目的としている。
5.緊急時の処方箋なしでの特定処方薬の調剤
薬局は、特定のケースにおいて、医師の処方箋がなくても処方薬を販売できるようになる。その場合、患者は自己負担となる。対象となるのは、既知の薬剤で、かつ長期間にわたり服用されているもの。治療の継続に遅れが許されない場合、最小サイズのパッケージを1回限り販売することが許可される。
薬剤費用は自己負担制で、さらに1件につき、5ユーロの手数料が想定。
6.特定の軽傷の急性疾患の処方や、長期投薬のフォローアップ処方
「特定の急性疾患のうち、症状が軽度なもの」については、この措置が認められることになる。具体的にどのような疾患が対象となり、どのような基準が適用されるかについては、同省が今後決定する予定だ。ただし、「全身性作用を持つ抗生物質」や、乱用・依存のリスクが高い薬剤については、この措置の対象外となる。
これらの合併症を伴わない疾患の定義については、連邦医薬品・医療機器庁(BfArM)が、ドイツ医師会およびドイツ薬剤師会の医薬品委員会と協議の上、1年以内に専門的な提案を策定する。連邦保健省は、この提案を政令により実施することができる。
薬剤費用は自己負担制で、さらに1件につき、5ユーロの手数料が想定。
また、処方薬を5種類以上服用している人は、年に一度、薬局で服薬見直しを受けることができる。
7.採血行為
薬の効果をモニタリングするためなど、静脈からの一般的な採血を行えるようになる。ただし、対象は18歳以上の患者に限られる。また、事前に医学研修が必須条件となる。
これは診療所の負担軽減にもつながるとされ、連立政権が追加した修正案追加された改正案に明記されている。
8.代替品の提供
処方箋の調剤時に薬が在庫切れの場合、代替品を入手しやすくする。薬局は、自店で直接在庫のある別の薬剤を調剤できるようになる。これまでは、卸売業者から入手する必要があった。
これにより、患者はより迅速に薬を受け取ることができ、薬局の注文業務の負担も軽減される。この措置はまずは期間限定となる予定。
9.営業時間
開店時間は薬局の裁量に委ねられることになる。これにより、営業時間を需要により適切に合わせることが可能になると、保健省は説明、政令で規定される予定である。
これまで薬局は常時待機が義務付けられており、例外を除き、平日8時から18時30分といった固定の営業時間が定められていた。
10.その他
診療所は、2028年末まで、施設入居者向けの電子処方箋を、当該施設を担当する薬局に転送することができる。
保健相は
将来の医療提供を確保するためには、責任をより幅広く医療提供体制に組み込んでいきます。
薬局はこの取り組みにおいて中心的な役割を果たしているため、私たちはワクチン接種、検査、予防サービスの拡充を通じて、薬局をより幅広く医療提供体制に組み込んでいきます。
その結果、柔軟な勤務体制の導入や新たな活躍分野によって、薬局という職場としての魅力が大幅に向上することになります。
として、適切な医療を確保するには、より多くの医療提供者に責任を分散する必要があり、薬局はその中で中心的な役割を担っているとしています。
ドイツ薬剤師連盟(ABDA)では昨年4月、
「薬局への敷居の低いアクセスは、以下のような予防や早期発見のために、より活用することができる」「医薬品の供給が不足した場合には、救急医療の場合と同様に、薬局にはより大きな裁量権を」
「軽度疾患に対しては、事前に医師に相談することなく、薬剤師が処方箋医薬品を直接調剤することも考えられる」
などとしたポジションペーパー(→TOPICS 2025.04.16)を公表、薬局改革法によりその一部は実現したこととなりました。
ABDAでは今回の薬局改革法の可決について、「国民の健康管理における薬局の役割が強化される。これはドイツ国民にとって正しく重要なことだ。薬局での採血、ワクチン接種、その他の医薬品サービスは、患者を直接助け、医療制度への負担軽減に貢献する。」と歓迎の意を明らかにする一方で、処方箋調剤の手数料が9.5ユーロ(現行の8.35ユーロから、7月より9ユーロに引き上げ、さらに2007年に9.5ユーロに引き上げる予定はある)に留まっているなど、経済的に健全な事業体でなければそれらを提供することはできないと指摘。
Apothekenreformgesetz verabschiedet, Honoraranpassung dagegen noch nicht
(ABDA 2026.05.22)
https://www.abda.de/aktuelles-und-presse/pressemitteilungen/detail/apothekenreformgesetz-verabschiedet-honoraranpassung-dagegen-noch-nicht/
また、『Ärztezeitung』(ドイツ医学雑誌)によれば、ドイツ内科医協会(BDI)、家庭医協会(HÄV)、および小児・青年科医協会(BVKJ)は、この法律を「薬局における限定的な医療への第一歩」となるとみており、今後家庭医は二次的な存在となるではないかと懸念しています。
Koalition stimmt für Apothekengesetz – gegen massiven Widerstand von Kassen und Ärzteverbänden
(Ärztezeitung 2026.05.22)
https://www.aerztezeitung.de/Politik/Koalition-stimmt-fuer-Apothekengesetz-gegen-massiven-Widerstand-von-Kassen-und-Aerzteverbaenden-463146.html
一方、今回の法案については医療関係者だけでなく、費用負担が増えるとして保険基金からも批判がされています。
また野党からは批判も出ているようですが、医療提供の持続性を考えた時、日本もこういった改革をすすめる必要があると思います。
業界紙では、各方面のコメントを取り上げています
Apotheke als „Hausarztpraxis light“
(Deutsche Apotheker Zzeitung 2026.05.22)
https://www.deutsche-apotheker-zeitung.de/news/artikel/2026/05/22/apotheke-als-hausarztpraxis-light
法案は今後連邦参議院にて最終承認を受けることになるとのことです。
Apotheken sollen zusätzliche Leistungen anbieten können
(Spiegel 2026.05.22)
https://www.spiegel.de/wirtschaft/apotheken-sollen-zusaetzliche-leistungen-anbieten-koennen-a-df6cbe95-e135-419a-948e-a1a904b81c79
Apotheken können mehr Impfungen und andere Vorsorgeleistungen anbieten
(MDR 2026.05.22)
https://www.mdr.de/nachrichten/deutschland/politik/apothekenreform-bundestag-impfungen-tetanus-100.html
Was sich für Patienten in Apotheken ändern soll
(ZDFhoute 2026.05.22)
https://www.zdfheute.de/politik/deutschland/apotheken-reform-bundestag-warken-impfung-abstimmung-patienten-kritik-100.html
„Habemus Apothekenreform. Hallelujah!“
(Apotheke-adhoc 2026.05.22)
https://www.apotheke-adhoc.de/nachrichten/detail/apothekenreform/borchardt-dieses-gesetz-ist-ein-erfolg
pDL und Impfen: Hersteller feiern ApoVWG
(Apotheke-adhoc 2026.05.22)
https://www.apotheke-adhoc.de/nachrichten/detail/apothekenreform/pdl-und-impfen-hersteller-feiern-apovwg/
ApoVWG beschlossen
(Pharmazeutische-zeitung 2026.05.22)
https://www.pharmazeutische-zeitung.de/apovwg-beschlossen-165503/
Apothekenreform soll kommen – was das bedeutet
(T-online 2026.05.22)
https://www.t-online.de/gesundheit/aktuelles/id_101265152/apothekenreform-beschlossen-das-soll-sich-fuer-die-patienten-aendern.html
関連情報:TOPICS
2025.04.16 薬局とともに健康な未来へ(独ABDAポジションペーパー)
2026年05月23日 16:42 更新
2026年05月24日 22:53更新
2026年05月25日 19:20更新
2026年05月23日 14:16 投稿

法案全文が見つかりました
Gesetz zur Weiterentwicklung der Apothekenversorgung
https://www.bundesgesundheitsministerium.de/service/gesetze-und-verordnungen/detail/apovwg
https://www.bundesgesundheitsministerium.de/fileadmin/Dateien/3_Downloads/Gesetze_und_Verordnungen/GuV/A/RegE_ApoVWG_Kabinett.pdf
地域薬局が行う医薬品サービスについては下記のように規定(p6)
「これらの医薬品サービスには、特に以下の薬局による措置が含まれる。
1.疾病および疾病リスクの予防および早期発見のための措置
2.薬物療法の安全性および有効性の向上を図るための措置。特に、
a)特定の治療状況においてのみ処方される特定の有効成分の使用、
b)重篤な慢性疾患の治療、
c)複数の疾患を有し、複数の薬剤を服用している患者の治療、
d)薬物療法において特別な配慮と専門的な支援を必要とする特定の患者グループの治療。
特に、被保険者は以下の薬学サービスを受ける権利を有する:
1.エビデンスに基づいたリスク評価モデルを用いたリスク適応型リスク因子測定によるカウンセリング。特に、必要な⾎液値や⾎圧の測定、ならびに心⾎管疾患、糖尿病、⾼⾎圧、脂質代謝異常、肥満の発症リスクを個別に評価するための測定
2.タバコ関連疾患の予防を目的とした短期介入形式のカウンセリング
3.多剤併用における詳細な服薬指導、
4.複雑な長期服薬における薬剤管理
5.新規処方された長期服薬における薬剤管理、
6.臓器移植患者に対する薬剤管理
7.経口抗がん剤療法における薬剤管理
8.吸入法など、医薬品の正しい使用法に関する詳細な指導
9.注射手技の練習を含む、医薬品の正しい使用法に関する詳細な指導
10.高血圧の標準化されたリスク評価。
これら一部については、医師に電子的に報告する必要がある
軽度疾患への対応については、下記のように規定(p27)
第48条
特定の疾患の治療を目的とした特定の処方薬の薬剤師による調剤;処方権限
(1) 第48条第1項第1文の規定にかかわらず、第48条第1項第1文に規定する医薬品については、医師または歯科医師による処方箋がない場合でも、薬剤師が所属する薬局において、医学の最新の知見に照らし、第2項の法令の規定に従い、急性疾患の治療のために消費者に調剤することができる。ただし、当該医薬品の使用を遅らせることができない場合に限る。
(2) 連邦保健省は、連邦評議会の同意を得て、かつ連邦医薬品・医療機器研究所と協議の上、第1項に基づく薬剤師による医薬品の調剤における薬物療法の安全性を確保するための要件を、法令により定める権限を有する。当該法令においては、特に以下の事項を定めることができる。
1. 第1項に従って薬剤師が医薬品を調剤できる急性疾患(当該疾患のそれぞれの症状を含む)
2. 第1項で定義される急性疾患の場合に、薬剤師が第1項に従って医薬品を調剤できる対象患者、
3.第1項に基づき調剤が許可される医薬品、物質、または物質からなる製剤(それぞれの投与量、効力、剤形、適応症、または包装サイズを含む)
4.薬剤師に対する行動指針
5.薬剤師に対する研修の要件
6.調剤時の助言および調剤記録に関する要件
7.電子患者カルテに保存すべきデータ
連邦医薬品・医療機器研究所は、この政令で定める要件の内容について、連邦保健省に対し勧告を行う。これらの勧告の作成にあたっては、第3文に規定されているとおり、医師および薬剤師からなる医薬品委員会を関与させなければならない。
(3) 薬剤師は、第1項に基づき、以下の医薬品を調剤してはならない。
1.全身投与用の抗生物質を含む医薬品、および
2.オピオイド含有医薬品、催眠薬、鎮静薬、興奮剤、または抗不安薬など、乱用および依存の可能性が高い医薬品。
このページには法案に対する各団体等の意見も掲載されていた
こちらがABDAの意見
https://www.bundesgesundheitsministerium.de/fileadmin/Dateien/3_Downloads/Gesetze_und_Verordnungen/GuV/A/RegE_ApoVWG_Kabinett.pdf
ドイツ国際放送の英字の記事
【DW 2026.05.22】
Bundestag lower house signs off on pharmacy reform plans
https://www.dw.com/en/germany-news-parliament-approves-reforms-giving-pharmacies-more-autonomy-on-vaccinations-prescriptions-tests/live-77264680#liveblog-post-77267078
ドイツ連邦議会(下院)は 、薬局に「より大きな権限と裁量」を与えることを目的とした法案を承認した。
この法律は、特に長期にわたる疾患に対する処方の継続といった日常的な判断に関して、薬局が医師の指示なしに特定の処方薬を調剤することを認めることが想定されている。
これはまた、「一部の急性疾患の合併症のない症状」に対する他の治療法にも適用される。
保健省は、具体的にどの症状に適用されるかをまだ明確に定義していないが、全身作用のある抗生物質や、「オピオイド系薬剤、睡眠薬、鎮静剤、興奮剤、抗不安薬など、乱用や依存性の可能性が高い薬剤」の処方については、規制の対象外とする方針を示している。
また薬局は、インフルエンザや新型コロナウイルスのワクチン接種に関する既存の認可に加え、破傷風やダニ媒介性FSMEウイルスなど、特定の他のワクチン接種も許可される。
その他の変更点として、薬局は18歳以上の患者に限り、静脈からの標準的な採血を行うことが許可される。採血を行う者は、事事前に講習を受講することが義務付けられる。
ドイツ医師会(KBV)は、医薬品は「お菓子(candies)ではない」として、改革を行き過ぎないように警告した。