高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(案)と関連情報(Update2)

 既に各紙の報道でご存知だと思いますが、日本老年医学会は1日、2005年に作成された「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」の改称・改訂版となる「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」の案を公表し、4月24日まで広く一般から意見を求めると発表しています。

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」に関するパブリックコメントの募集
(日本老年医学会 2015.04.01)
http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/20150401_01.html

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(案) 【PDF 20.8MB】
http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20150401_01_01.pdf

 上記の通り、今回のGLの特徴は、2013年に厚生労働科学研究として行われた、「高齢者の薬物治療の安全性に関する研究」において行われた疾患・療養環境など16 領域(精神疾患(BPSD、不眠、うつ)、神経疾患(抗認知症薬、パーキンソン病)、呼吸器疾患(肺炎、COPD)、抗血栓薬・抗不整脈薬、心不全薬、高血圧、慢性腎臓病、消化器疾患(GERD、便秘)、糖尿病、脂質異常症、泌尿器疾患、筋・骨格疾患(骨粗鬆症、関節リウマチなど)、漢方薬、在宅医療、介護施設の医療、薬局の役割)の系統的レビューを踏まえて作成されたもので、中止を考慮すべき薬物考えるべき薬物もしくは使用法のリストを「ストップ」、使用を強く勧める「スタート」というリストととして作成されているのが特徴となっています。

高齢者の薬物治療の安全性に関する研究
(H25 厚生労働科学研究)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201310012A

 今回のリストの作成の元となったのは、Beers criteria(Beersリスト・Beers基準、1997年に初版、2003年、2012年、2015年に改訂)と呼ばれるもので、日本老年医学会が2005年にまとめたものも、このBeers criteria に沿ったものとなっています。(特に慎重な投与を要する45種類の薬剤(群)のリストのうち7割がBeersリストとと共通)

「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」
(日本老年医学会、2005)
http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/drug-list.pdf

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン〜 第48回日本老年医学会学術集会記録
(日本老年医学会雑誌 Vol.44 (2007), No.1 31-34)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/44/1/44_1_31/_pdf

関連情報:TOPICS
2007.09.15 高齢者に対して特に慎重な投与が求められる薬
2012.03.21 2012 Beers Criteria

 Beers criteria を出発点に作成されたリストとしては、これ以外にも、国立保健医療科学院の今井博久疫学部長らの研究グループが2009年4月に発表したBeers Criteria 日本版というのもあります。

Beers Criteria 日本版
(国立保健医療科学院ウェブサイト・疫学部)
http://www.niph.go.jp/soshiki/ekigaku/BeersCriteriaJapan.pdf

関連情報:TOPICS
2008.04.02 Beersリスト日本版が公表

 当時、センセーショナルに紹介されましたが、その後、このBeers Criteria 日本版に対しては、現場などから批判や疑問の声が示され、徐々に日本では関心が薄れてきたように思っていました。

Beers Criteria日本版への疑義:未熟なコンセンサスガイドライン
(臨床評価 36(2) 467-472,2008)
http://homepage3.nifty.com/cont/36_2/p467-472.pdf

“高齢者に不適切な薬のリスト”は不適切である!
ビアーズ基準の日本版”をめぐって」
(井原医師会(岡山県)、これが正論だ第25話)
http://www.ibaraisikai.or.jp/information/iitaihoudai/houdai24.html

 こういった薬剤のリスト化の試みは海外ではさまざまなものが発表されており、その多くがシスティマティック・レビューなどを行うなどしていることから、共通の基準や薬剤を見出すことができます。

Explicit and implicit checklists and possible tools supporting the execution of a medication review
(PCNE Working Conference 2015 ワークショップ スライド)
http://www.pcne.org/upload/files/100_2015_Workshop_1_Intro-2.pdf

関連情報:
STOPP (Screening Tool of Older Person’s Prescriptions) criteria
(栃木県の総合内科医のブログ 2014.09.15)
http://tyabu7973.hatenablog.com/entry/2014/09/15/000000
STOPP & START criteria: A new approach to detecting potentially inappropriate prescribing in old age
European Geriatric Medicine Published Online 6 Jan 2010)
http://www.em-consulte.com/en/article/245669
http://unmfm.pbworks.com/w/file/fetch/45170322/Stopp%20and%20Start%20criteria_inappropriate%20prescribing%20in%20the%20elderly.pdf
STARTing and STOPPing Medications in the Elderly
(PHARMACIST’S LETTER / PRESCRIBER’S LETTER Sep 2011)
http://www.ngna.org/_resources/documentation/chapter/carolina_mountain/STARTandSTOPP.pdf

 さて、本題の今回のリストですが、他のリストでも取り上げられている薬剤のほか、SGLT2阻害薬やβ3アドレナリン受容体拮抗薬(ミラベクロン)といった新薬や、長期使用による腸間膜静脈硬化症が問題となった山梔子製剤が取り上げられているなどの最近の情報も加味されていますが、欧州で使用制限となっているドンペリドンやシロスタゾール(日本でも高齢者が中長期に使用される可能性がある)が取り上げられなかったことや(レビューにはたぶん間に合わなかったとは思いますが)、1年間の長期使用とのしばりがあるものの、「スタート」でPPIが推奨されていることには若干の疑問があります。(海外では、PPIは低用量で短期間の使用に留めるべきとの意見が少なくない)

関連情報:TOPICS
  2014.05.02 ドンペリドンは厳しい使用制限へ(EMA)
  2013.07.19 漢方薬の長期使用と腸間膜静脈硬化症)
  2013.03.23 シロスタゾールの使用制限を勧告(EMA)
  2012.02.09 治りにくい下痢はPPIの使用との関連を疑え(米FDA)
  2011.08.24 PPIには黒枠警告が必要(Public Citizen)

 一方で、領域別指針では、在宅医療・介護施設の医療・薬剤師の役割の項があります。

 草案ですがGL案は非常に有用ですので、是非チェックをして、意見を提出してみてはいかがでしょうか?
(もっとも、最大の課題は、現場でどう利活用されるかですが)

参考:
薬50種「高齢者には中止考えて」 学会、医療者向け
(朝日新聞 2015.04.04)
http://www.asahi.com/articles/ASH3W7G71H3WULBJ01L.html
高齢者は使用中止を 副作用多い薬50種公表
(東京新聞 2015.04.02)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015040202000135.html

6月24日、11月5日更新


2015年04月06日 00:06 投稿

コメントが16つあります

  1. 何回も言ってきたことだが、市販薬はOTC薬という。
    それは元々、カウンター越しに薬剤師と消費者が向かい合って相談販売される、そういう販売形態の語源からきている。
    それが、いつしか、大手ドラックストアやスーパー、コンビニなどの営業展開の拡大に利用された登録販売者制度によって、より一層にOTC薬は雑品化のごとく販売されるようになった。
    セルフメディケーションを売るがために悪用して、OTC薬を広告チラシにどんどん載せて雑品化同様に大量販売してきたツケが、このような消費者庁の市販薬の副作用報告の結果に結びついている。
    OTC薬は要指導薬、一類薬(ネット販売で無茶苦茶にされたが・・・。)を除いては消費者の自己責任の下で自由に買うことができるが、その消費者自身の薬に対する成熟度はまだまだ十分ではない。
    処方薬なら必ず医師の診察を受けなければ貰えないのに、市販薬は安全性が高いといういい加減な事で、自由に購入できる環境にある。
    上述のようなことが背景にあることをしっかりと踏まえた上で、今回の消費者庁の副作用報告をみる必要がある。
    ところで、高橋先生のコメントはいつも示唆に富んだ含蓄あるもので、大いに勉強させてもらっているが、下記の一点は少し理解に苦しむところがある。
    全体の文意を理解せず、一部分だけを切り取って曲解したものになっているかもしれないが・・・。
    >「購入者側が危険性を知らなければ、より多くの市販薬を購入することになり、販売する>薬剤師の利益に結びつく」といった価値観は、既に終わりを迎えている筈です。
    OTC薬剤師の取り巻く環境、そして、関与する人たちによって、そのような悪しき価値観が醸成されてきたものであると思っているが、いかがなものだろうか・・・。

    それから、朝日新聞の朝刊に高齢者の残薬問題が掲載されていたことに触れたい・・・。
    薬剤師がその残薬問題に取り組んでいる活動が紹介されていた。
    社会的な優遇面ではあまり恩恵を受けていない薬剤師の涙ぐましい努力といえよう。
    この問題の本質は処方薬の異常なまでの多さ、医師による過剰投与にある。
    これができるのは日本独特の国民皆保険制度の出来高払い制を、医師と製薬メーカーが結託して金儲け主義に突っ走り、悪用していることだ。
    医師と製薬メーカーの人間は驚愕な高年収で庶民とかけ離れた贅沢三昧の生活をしている。
    まあ、これは他の分野(公的利益を貪る悪しき社会的強者の人間ども)でも同じことだが・・・。
    そのツケは全て、国民(庶民)の酷税、保険料、一部負担に回っている。
    これを払拭しない限り、本質的問題の解決にはならない。
    この朝日新聞の報道は靴の上から痒いところを掻いている、その様を読者=国民に伝えているに過ぎない。
    ではどうすればいいか。
    不要な処方薬は全て一般薬(OTC薬)にスイッチ化するしかない。(ただ、今回の消費者庁の副作用報告などをしっかりと踏まえる必要はあるが・・・。)
    これが処方薬の適正配分の是正、国民のコスト意識・処方薬への認識(副作用抑制)を高めることにもつながる。
    病気に効く薬はほとんどないといっても過言ではない。(中には症状を一時的に抑えて良くなっているように思えるが、根治にはつながらない。)
    人間本来が持っている自然治癒力が治している。
    大半が不要な処方薬だ。メーカー、医者、それにまつわる医療関係者を金儲けによる太り豚にしているだけだ・・・。
    ご大層に、その上、医師が患者を治して上げているという偶像崇拝まで、患者に植え付けさせている・・。それに乗じた医師のおごり昂ぶりは、患者から見て病気を治してもらえるお医者様といいように映っているのだから、なんとも皮肉なものだ・・・。
    スイッチ化できないのは医師会の反発、それを支援する医療用製薬メーカーのせいだ。
    それを擁護する国にも問題がある。国(政府)は政治力や税金をたくさん収めてくれるところに弱い。
    自分たちの政権力が弱められることへの恐れがあるからだ・・・。
    医師会は長期処方や薬剤師との連携で残薬問題に取り組むといっている。また、短期診察で病状変化を把握しながら、処方薬が残薬にならないようにしたいとも言っている。
    どうも、上辺は残薬問題に医師会自ら取り組む、お得意のパフォーマンスをしてようだが、問題は医師の無節操な治療効果も上がらない足し算の多剤処方だ。
    これをひた隠しにして、さも、医師は薬剤師以上にしっかりと残薬問題に取り組んでいますよと社会的アピールをする。医師という人種の利害に目敏い計算高さが目について仕方ない。
    (誤解しないでもらいたいのは、医療現場の医者には患者のためを思った臨床に情熱を傾けた誠実な人もいるが・・・。)

    市販薬の副作用に比べれば、処方薬の副作用の膨大さはその比ではない。
    残薬問題も深刻な社会問題だが、この処方薬の副作用問題は特に高齢者にとってはより深刻な問題だ。
    今回、消費者疔で取り上げた市販薬の副作用問題を契機として、ぜひ、処方薬の副作用問題もさらに掘り下げて報道発表してもらいたいものだ・・・・。

  2. 厚労省は高齢者の薬物療法においてパブリックコメントを募集中のようだが、これは医療従事者以外も含めて・・・。このような説明書きであった。
    医師が処方する薬物療法に対して、国民はどれだけ理解しているだろうか。
    先の私のコメントに、医師の足し算の多剤処方を問題提議したが、これは治療効果を上げたいとする処方意図があるのかもしれないが、反対に高齢者にとっては効果よりも副作用の方がより深刻になっている。
    にもかかわらず、この医師の足し算による多剤処方が、今なお、行われ続けている。
    言い換えれば、皆保険の出来高払いを悪用した薬剤費の無駄使いとも思われるこの医療行為(処方行為)が、今なお、なぜ、見過ごされているのかという問題だ。
    健保連では審査を厳しくしているのだろうが、最終審査は同じ医師の手で行われている。同業者が審査すれば、その審査が甘くなるのは当然。医師にとっては国民負担で、自分たちの懐は痛まない。その程度の自覚・認識でしか捉えていないのではないだろうか。
    それと、製薬メーカーの金儲け主義による医師に対する過剰営業が、より一層、その行為に対して負の相乗効果を増長させている。
    このツケは全て国民、患者(酷税、保険料、一部負担のトリプル重圧)に回されてしまっている・・・・。患者・国民が犠牲になっている・・・。
    製薬メーカーは患者の病気治療に貢献するのが社会的役割だが、売上を上げたいとするための医師への過剰営業(MRの医療情報伝達のあり様は今なお、適切に機能していない。)で、治療効果よりも副作用の方が増している「薬源病」を引き起こす手助けをしているに過ぎない。
    こんな背景を国民はどれだけ知っているのだろうか・・・。
    まあ、厚労省も医療従事者意外とはどういう対象者に、幅広いパブリックコメントを期待しているのか、わからないが。
    厚労省、お得意の世論対応していますよとのパフォーマンスのひとつに過ぎないと思っている・・・。
    はっきり言って、このようなパブリックコメント募集も厚労省のいい加減さというか曖昧さが見て取れる。
    問題の本質は高齢者への足し算による多剤投与による副作用が問題だ・・・。
    これの対策によって、薬剤師の調剤ミスも大幅に軽減されると思われる。
    メーカーは売り上げが減って困るだろうが。ただ、医療は誰のためのものか。国民、患者のためにある基本原則は死守しなければならない。そう言う意味では物質主義優先の営利手法は医療の世界(特に処方薬の世界)には馴染まない。
    それに対して意見を出しても、それがどれだけ反映してもらえるかだ・・・。
    それなら、暴論かもしれないが、不要な処方薬(医師の臨床専門的な管理医療のウエイトの限りなく低い品目)は全てスイッチ化して、薬剤師の適切管理指導のもとで、消費者の全額負担を求めたほうが、よほど、薬源病の抑制に寄与できる。
    所謂、薬に対するコスト抑制効果だ・・・。それに付随して人間の心理として、薬をより一層知ろうとする自覚・認識も高まると思われる・・。
    ただ、二類に格下げになってしまえば、ドラックストアやスーパー、コンビニなどのOTC薬剤師の存在を軽視した売らんがための雑品化的大量販売(セルフメディケーションの一側面を悪用した薬認識の成熟していない消費者責任)に移行してしまい、その抑制効果を果しきれなくなるが・・・。
    パブリックコメントを考える上で、下記の二点をしっかりと押さえたい。
    ・国内の製薬メーカーの数が多すぎる。全くの不要・・・。
    ・健康食品の機能表示解禁に伴い、薬物療法との飲み合わせがより複雑になってきている。
     

  3. 規制会改革会議と厚労省のせめぎ合い・・・。
    そして、お互いが同意した点は6月の答申で、政府に上げられて、安倍総理内閣で最終決定。
    内閣で結論が出されるのか、与野党で出されるのか、国会審議なのか、そこらへんはわからないが。
    それにしても、医師会(医科)への踏み込みはいつも慎重だな・・。
    薬剤師会(薬科)にはすぐに踏み込んであれやこれやと言うくせに。
    結局はこの世の中、強いものには遠慮して、弱いものにはズケズケと踏み込んでくる。
    見苦しい世の中・・。
    医師会って、本当に強いのか。
    本当に強いのは国民の声ではないのか。
    その声をしっかりと反映させるシステムが、日本社会には、いや、世界どこでもかわからないが、整備されていない。
    強いものも集まりで検討したって、そこは利害人種(あのローソンからサントリーへの変身者藤浪氏なんか典型的だな・・。)の寄せ集めで、健全な評価や結果なんて出せない。
    まあ、これはどの分野の世界でも同じことがいえるが・・・。
    日医はOTC薬スイッチ化を認めないと、また、吠え始めたが、この人種は常に自分たちの利益のためにしか吠えない。
    組織人の前に、一人の医師として、そして、人間として、患者や国民のためになるOTC薬スイッチ化はどうあるべきか。
    それをもっと考えるべきではないか。
    薬剤師会も医師会の腰巾着みたいに、ご大層に反対を唱えている。
    もう、丁寧に書く気がしない・・・、こんな荒削りの文章で十分だ。
    この項から外れた書き込みになってすみません・・・。

  4. 何をもって“過剰投薬”とするのか。服薬管理·指導重視の報酬体系へ移行だけでは過剰投薬は防げないはず。なぜ医科に切り込まないんだろう。
    すごい重要な点だと思いますよ・・・。

  5. アポネット 小嶋

    ツイッターで知ったのですが、米国老年医学会(The American Geriatrics Society)も、あのBeers Criteria のUpdate のため、草案を公開し、5月5日まで意見募集を行っています。

    Draft of 2015 Updated Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults Open for Public Comment
    (The American Geriatrics Society 2005.04.17)
    http://www.americangeriatrics.org/press/id:5557

    American Geriatrics Society 2015 Updated Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults
    (The American Geriatrics Society 2015 Beers Criteria Update (Draft/草案))
    http://www.americangeriatrics.org/files/documents/2015.beers.update.for.comment.pdf

    今回、やはり新たにPPIがリストに加えられています。どうしても必要がある場合(high‐risk patients (eg,chronic NSAID use), erosive esophagitis,Barrett’s esophagitis,pathologic hypersecretory condition, or demonstrated need for maintenance treatment)を除き(without justification)8週超の投与を避けると追記されています。

    日本のGLでは、1年なら安心して使えるともとれてしまうんですが。

    この他に今回のUpdateでは、薬物相互作用(Table5)と腎機能低下者で避ける薬(Table6)が新たに登場しています。

    関連記事:
    2012 Beers Criteria
    http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/120317.html

  6. 人間の身体は複雑すぎて、薬という異物が体内に入ったとき、どんな生理活性を及ぼすか・・・。
    今まで分かってきた副作用だけで、すべてを語れるものではない。
    何も、今までの臨床的検証によって集積された副作用を否定しているのではない。
    ただ、副作用の歴史なんて、人類誕生という気の遠くなる時間の経過から見れば、ほんの一瞬・・・。
    そんな一瞬の未熟な情報で、人類の複雑な身体に与える影響がどこまでわかるというのだろうか・・・。
    さも、得意げに副作用説明をしてくる薬剤師が滑稽に見える・・・。
    この薬剤師、どこまで、患者のこと、そして、与える薬のことが分かっているのだろうか・・・。

  7. 処方薬の有効性だって、先のコメントと同じことが言える。
    患者にとって、真の価値のあるものはほんのわずか。
    大半は無用な処方薬だ・・・・。
    ただ、製薬メーカーを儲けさせているだけ。まあ、それに群がる輩もそうだが・・・。
    処方薬に関する論文もそうだ。真の論文がどれだけあるというのか。
    これも金儲けに利用しているだけだ・・・。
    まあ、こんなことを書いてしまうと、物質主義社会は成り立たないが・・・。

  8. マーケティングの第一人者の言葉だが、マーケティングには科学的分析が不可欠だが、それ以上に大切なことは愛情を傾けることだと言っている。
    処方薬だってそうだと思う・・・。
    処方薬を生かすも殺すも、それにかける愛情次第・・・。
    今の製薬メーカー、それを処方する医者、それを調剤する薬剤師はどれだけそれに対する愛情を傾けているだろうか。単なる治療の一つの道具としか思っていないのでは。
    人体には自然治癒力が備わっていて、それを補助するのが処方薬。処方薬は主役ではない。ただ、愛情を(患者に対する愛情も合わせて)傾けることによって、主役にはなれないとしても脇役としてよい一層の演出効果(相乗効果)を発揮することはできる。
    それが医療人たちにはどれだけ分かっているのだろうか。
    薬物治療の効率、マニュアル、標準化(そればかり声高に叫んでいる輩が多いが)もいいが、そこにいかに医療人が愛情(私は「愛」の方が好きだが・・・。)を注げるかだ。
    まあ、「愛」は相手に対する思いやりを持つ尊い犠牲心で、金儲けの手段(医療界の守銭奴たち)としか考えていない医療人には分からないとは思うが・・・。
    嘆かわしいことだ・・・。

  9. 昨日のNHKのクローズアップ現代を見て、その背景に潜む本質的問題に触れていないことを、とても残念に思った。
    それは医師や製薬メーカーのことだ。
    まず、医師だが、医師は専門診療科に細分化されているために、高齢者が抱える複数の疾患に対応する場合、どうしても、各専門医の横の連携が取れていないため、処方する薬剤が多くなってしまうと言っていた。
    また、各診療科で処方された薬物副作用に気がつかず、その副作用の治療のためにさらにたし算の多剤処方がされている現実にも触れていた・・・。
    こんな医師の無責任さはない・・・・。
    たとえ、専門分化したとしても、医師は患者を診る場合、今までどんな疾患でどんな診療科にかかって薬の処方を受けていたか、それを踏まえた上で処方するべきだ。
    自分の専門以外でどんな薬の処方を受けていたか分からないでは済まされない。
    上述を指摘した場合、総合医、かかりつけ医がいれば、高齢者のたし算による多剤処方は解消されると言うだろう・・・。
    でも、それが十分に整備されていないのであれば、各専門診療科レベルでも、医師が総合医的視野も兼ねて、高齢者患者の薬剤処方にあたるべきだ。
    次に、医師と製薬メーカーの癒着・・・。
    これが高齢者患者の多剤処方の「悪の温床」になっている。
    この番組ではその点にも全く触れていない。
    後発薬の処方推進が叫ばれているが、薬剤費の抑制が多少できるかもしれないが、高齢者患者の多剤処方による残薬問題、飲み間違い問題は解消できない。
    むしろ、後発品がやたら増える中で、ややこしい商品名も増えて、処方をより複雑化している。国は製薬メーカーを庇護しているだけだ・・・。
    福岡県薬剤師会の推進の上での地元かかりつけ薬局や大阪の狭間医師のところの薬剤師により、高齢患者の居宅訪問まで紹介して、薬剤師と医師の連携による残薬や飲み間違い問題に取り組んでいる実情をこの番組で紹介していたが。
    確かに、それはそれで素晴らしいことだが、どうも、たとえは悪いが、まだまだ、靴の上から痒いところを掻いているだけで、この番組では上述の医師や製薬メーカーの本質的問題にメスを入れていなかった・・・。

  10. 残薬やかかりつけ薬局のことが話題沸騰していますが・・・。
    規制改革会議や政府、厚労省などは医師のことには全く触れていません・・。
    医師の処方モラルを問いたいですね・・・。
    それから、薬剤師会でちらほら出ていますが、事務員などの無資格調剤の件ですが・・・。
    薬剤師のいない診療所などは医師の管理の下の調剤可(自分ところの患者)の特例をいいことに、受付事務員などが調剤して投薬しています。
    薬局では許されないのに、医師なら許されるのでしょうか・・・。
    訳が分からない・・・。
    それから薬剤費抑制のためジェネリック推進はわからないでもない。
    でも、あれだけややこしい商品名で、これ以上に種類と数が増えたら、過剰処方にさらに拍車をかけるだけだと思いますが・・・。
    元栓を止めないで、蛇口だけでこの問題にぎゃぎゃ騒いで、マスコミなんか薬剤師だけを槍玉にあげている。
    まあ、弱いものをいじめるのは一番、自分たちにかかってくる火の粉を最小限に抑えることができますものね・・。
    まるで、小さい子が弱い者いじめをするのと変わらない。
    製薬メーカーや医師の責任問題、この元栓にメスをざっくり入れなければ、問題解決なんかできません。
    医薬分業の経緯をみると、当時、医者の薬価差儲けからくる大量処方を解消するために、国、すなわち厚労省は点数加算対策で推進させたと言われていますよね。
    まあ、社会常識的に考えれば、医者は何を考えて患者に薬物処方しているのか。
    もう、話にならない・・。
    今でも、これが製薬メーカーと結託して、改善されていないのですから。
    呆れてものが言えません・・・。

  11. 医師が(親族を経営者等にして)門前薬局を経営していること
    どうにかならないものでしょうか・・・。
    こんなことしちゃダメでしょ。
    ここにもメスを入れないと。

  12. 今朝の朝日新聞に、高齢者の残薬問題などの記事が掲載されていた。
    厚労省は現場のことを何も分からずに「かかりつけ薬局」だけを強調しているが。
    今まで何度も書いてきたが、その背景にドロドロしたものを感じる。
    その記事ではその実態をしっかりと伝えた上で、かかりつけ医、かかりつけ薬局のあるべき姿を提示している。
    この問題は例えて言えば、前にも書いたが、水道の元栓と蛇口の問題に分けて考えなければならない。
    その点を本記事ではしっかりと指摘している。
    朝日新聞にしては珍しい・・・・。
    つまり、元栓の現実問題だが、医師同士や医師と薬剤師の情報共有がない限り、残薬問題は解消しない。しかしながら、現場においては医師同士であっても、専門が違うので薬剤を減らすことの提案は難しい。また、薬剤師は医師に対しては医師同士よりも、さらにその難しさがあると書いている。
    もう一点、院外処方には病名がないので、患者から症状を聞いたりして、その処方の適性を薬剤師は判断するしかない。
    薬剤師は医師の処方意図を読みきれないところがあるとも指摘している。
    今の医薬分業では医師は自分たちの処方を黙って調剤していればいいという、文化がまだまだ、はびこっている。
    今の薬剤師には、用法用量間違いや重複投与などの疑義照会はできるが、それ以外の医師の処方意図に基づいた多剤処方の適正を考察できるレベルにはない。
    かかりつけ薬局、門前薬局での利便性などを含めたサービスや患者負担の問題(かかりつけ薬局と門前薬局の調剤報酬に差をつける構想があるらしいが・・。)などには現場の現実的問題を踏まえたうえでの難しさを、厚労省はどこまで分かった上で、この問題を解消しようとしているのか。
    まあ、今までの政策のように、場当たり的なものとなってしまうことだけは避けて欲しい。
    まあ、OTC薬の改正薬事法後の問題や今度の処方薬の数々の問題・・。
    本当に疲れるね・・・・。

  13. もう、呆れ返ってモノも言えない・・・。いや、書かずにはいられないが・・・・。
    この国は狂っているのでは・・・。
    今朝の朝日新聞の一面に後発薬が2020年までに80%引き上げの文字が踊っている。
    薬剤費削減策で、欧米に見習ってそうするんだと書いてあった。
    昔、後発薬はゴキブリに例えられて、先発薬の特許が切れたらゾロゾロ出てきて、ゾロ品と揶揄された。
    それが今では堂々と国のお墨付きて、安定供給が行けるかななんて嬉しい悲鳴・・・。
    種類と数が今以上に莫大に増えて、過剰処方にさらに火に油を注ぐみたいなもの。
    投薬を受ける患者のことはそっちのけで、医者や製薬メーカーに最大配慮する構図・・・。
    医療保険で患者治療に本当に必要な新薬開発に力を入れなくなり、先発メーカーは後発メーカーに負けじと後発品目に力を入れ出すのでは・・・。
    商品名のややこしい後発品目がさらに増えて、薬局現場や患者をさらなる複雑化させて混乱させるのでは・・・。
    処方薬は無駄なものばかり・・・。本当に保険で必要なものはほんのひと握り・・・。
    医者に遠慮せず、どんどんとスイッチ薬化するべき・・・。
    医療用の製薬メーカーばかり増えて、もう、むちゃくちゃ・・・。
    厚労大臣の塩崎は年金に株式運用をしようとした男・・・。(この男、厚労大臣よりも経済産業大臣の方がお似合いだ・・・。経済推進の閣僚犬だ・・・。)
    年金を増やすための手段ということで、株式運用は一つの賭けだ。
    リスクヘッジをしているので、従来の国債運用と変わらず心配しないで欲しいと言っているが・・・。年金は今までも国によって食い潰され、その穴埋めを年金を払う国民に皺寄せさせてきた。
    年金が株式運用でうまく利殖できればいいが、万が一、失敗すれば、どうするのか。
    また、国民の年金を削り、支払いを多くさせればいいという甘い考え・・・。
    塩崎氏の腹は痛みませんものね。民間経営者なら、切腹も同然なのに。
    これら輩は知らん顔そのもの・・・。
    まあ、政府や塩崎のやり方は規制改革会議と歩調を合わせて、経済成長一辺倒で、本当に患者の薬物療法のあるべき姿が分かっているのだろうか。
    門前薬局をぶっ潰して(大病院前の門前薬局を破壊して景色を一変させる。その薬剤師たちはどこに流れていくのだろうか・・。)、そして、かかりつけ薬局を増やす構想・・・、保険薬局を限りなく減らして整理すると言ったり、院内薬局を規制緩和で認めると言ったり・・・。
    もう、現場無視、薬剤師軽視(いや、薬剤師なんて、医者に比べれば小粒で抵抗勢力とすれば微々たるもので取るに足らないちっぽけな存在・・。)も甚だしい・・・。
    どうなるのだろうか。これからの保険薬剤師は・・・。
    OTC薬剤師が登録者に職を奪われたように・・・。
    今度は調剤薬剤師の番だな・・・・。

  14. アポネット 小嶋

    Eur J Clin Pharmacol 誌に新たにまとめられた高齢者に潜在的に不適切なリストが掲載されていました。元記事にも追記しておきました。

    The EU(7)-PIM list: a list of potentially inappropriate medications for older people consented by experts from seven European countries
    (Eur J Clin Pharmacol.Published Online 14 May 2015)
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4464049/

    ググっていたら、いくつかの学会等が、GLに対する意見をWEB上で公開しています。

    自分たちのGLと異なるので調整して欲しいなど、それぞれの主張があって興味深いです。

    日本うつ病学会
    http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/toppdf/rounen_publiccomment.pdf

    日本精神薬理学会/日本精神神経薬理学会
    http://www.jscnp.org/news/rounen_publiccomment.pdf

    日本睡眠学会
    http://jssr.jp/koureianzenyakubutsu.pdf

    日本脂質栄養学会
    http://jsln.umin.jp/pdf/guideline/comment20150427.pdf

    特定非営利活動法人NPO医薬ビジランスセンター
    http://www.npojip.org/sokuho/150518.html
    http://www.npojip.org/sokuho/No169-1.pdf

    こういった意見が出たためか、こんな記事が。(結局こうなると思った)

    「中止を考慮」表現見直しへ 高齢者向け薬物指針案
    (朝日新聞 2015.06.17)
    http://apital.asahi.com/article/news/2015061700006.html

    「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」に変更するとのことですが、どうなんでしょう。

    現場で使いにくくなるということらしいですが。学術的にまとめたものである以上、各国のリストの通り、「潜在的に不適切な薬剤」と記すことは必要ではないかと思うのですが。

    要はリストを現場でどう読んで活用するかだと思うのですが。

  15. アポネット 小嶋

    ようやく、パブコメ結果が公表されました。

    「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」完成の報告およびパブリックコメントへの回答
    (日本老年医学会 2015.11.04)
    http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/20150427_01.html

    報道の通り、

    ストップ:中止を考慮するべき薬物もしくは使用法のリスト
               ↓
    特に慎重な投与を要する薬物のリスト

    スタート:強く推奨される薬物もしくは使用法のリスト
               ↓
    開始を考慮するべき薬物のリスト

    に表記が改められました。

    理由は「使えなくなると困る」といった意見が、特に抗精神病薬の使用に関して数多く寄せられたためです。

    PPIの長期投与の表記はさすがに改められたようです。
    (開始を考慮するべき薬物のリストから除外)

    また、抑肝散のBPSDに対する有効性についても、エビデンスの質が低いと関わらず推奨度が高すぎると指摘があり、検討の結果、開始を考慮するべき薬物のリストから除外されました。(別リストが作成されるとのこと。こちらは今回未公開。甘草製剤特に芍薬甘草湯の安易な使用は警鐘をならして欲しいな)

    その他、薬剤師にとって示唆となる内容が含まれているので是非ご一読下さい。

    パブリックコメントのまとめと回答
    http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20150427_01_01.pdf

    なお、総論の部分は今回公開となっています。(4月に公表された、GL案と併せて比較してみて下さい。最終GL全文もWEBで公開して下さいね)

    高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015-総論部分
    http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20150427_01_02.pdf

    高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(案) 【PDF 20.8MB】
    http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20150401_01_01.pdf
    (今のところWEBから削除されていませんが、削除されたらすみません)

    それとおまけですが、Beersリストの改定版が10月8日に公表されています。こちらはPPIは Potentially Inappropriate Medication (8週超は避ける) としてリストアップされています。

    American Geriatrics Society 2015 Updated Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults
    (Journal of the American Geriatrics Society Online First 2015.10.08)
    http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jgs.13702/full

  16. アポネット 小嶋

    日本老年医学会HPとMindsで、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」の全文が公開されました。

    「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」全文公開とMinds掲載のお知らせ
    (日本老年医学会 2017.08.09)
    http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/20150427_01.html

    高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 【PDF 10.1MB】
    http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20170808_01.pdf

    総論の他、下記のような領域別指針があります
    1 精神疾患(BPSD、不眠症、うつ病)
    2 神経疾患(認知症、パーキンソン病)
    3 呼吸器疾患(COPD、肺炎)
    4 循環器疾患(抗不整脈薬、抗血栓薬、心不全)
    5 高血圧
    6 腎疾患(腎不全[CKD])
    7 消化器系疾患(便秘、GERD)
    8 糖尿病
    9 脂質異常症
    10 泌尿器疾患(排尿障害[過活動膀胱、前立腺肥大症])
    11 筋骨格疾患(骨粗鬆症、関節リウマチ)
    12 漢方薬・東アジア伝統医薬品
    13 在宅医療
    14 介護施設の医療
    15 薬剤師の役割