ドンペリドンは厳しい使用制限へ(EMA)

 欧州におけるドンペリドンの使用制限については、これまでも紹介していますが、EMAのPRACの勧告を受け行われたCMDhの会議の審議結果が25日に公表されています。

※CMDh(Co-ordination Group for Mutual Recognition and Decentralised Procedures – Human:相互認証方式および分散審査方式の調整グループ):EU各加盟国の医薬品規制機関を代表する規制団体

CMDh confirms recommendations on restricting use of domperidone-containing medicines
(EMA 2014.04.25)(→リンク)(→リンク

 内容は、TOPICS 2013.03.09 の コメント(=TOPICS 2014.04.16)で紹介した、PRACの勧告に沿ったものとなっていますが、注目はドラフトとして示された、製品情報( Summary of Product Characteristics)の改定案の内容です。

Domperidone Article-31 referral – Draft Annex III
(Published Online 2014.04.25)(→リンク

一部抜粋します。

Section 4.2 Posology and method of administration

  • Usually, the maximum treatment duration should not exceed one week.
    (通常、最大の投与期間は1週間を超えるべきではない

Section 4.3 Contraindications
(次にかかげる事項を禁忌として含まれるべきである)

  • in patients with moderate or severe hepatic impairment
    (中程度~重度の肝機能障害がある患者)
  • in patients who have known existing prolongation of cardiac conduction intervals, particularly QTc, patients with significant electrolyte disturbances or underlying cardiac diseases such as congestive heart failure
    (鬱血性心不全患者)
  • co-administration with QT-prolonging drugs
    (QT延長が知られている薬剤との併用)
  • co-administration with potent CYP3A4 inhibitors (regardless of their QT prolonging effects)
    (強力ななCYP3A4阻害薬との併用)

Section 4.4 Special warnings and precautions for use

  • 腎機能障害がある患者に繰り返し投与する場合は、腎機能の程度に応じて1日1~2回に減量する。用量も減量する必要があるかもしれない
  • 不整脈のサインが見られた場合にはドンペリドンによる治療は停止されるべきである

Section 4.5 Interaction with other medicinal products and other forms of interaction

次にあげる薬剤との併用は禁忌とする

QT延長が知られている薬剤

  • IA群の抗不整脈薬(例:ジソピラミド、hydroquinidine、キニジン)
  • III群の抗不整脈薬(例:アミオダロン、dofetilide、 dronedarone、 ibutilide、ソタロール)
  • 抗精神病薬の一部(例:ハロペリドール、ピモジド、sertindole)
  • 抗うつ薬の一部(例:シタロプラム、エスシタロプラム)
  • 抗生剤(抗菌剤)の一部(例:エリスロマイシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、スピラマイシン)
  • antifungal agentsの一部 (例:pentamidine)
  • 消化器用薬の一部(例:シサプリド、dolasetron、prucalopride)
  • 抗ヒスタミン薬の一部(例:メキタジン、mizolastine)
  • 抗がん剤の一部(例:トレミフェン、vandetanib、vincamine)
  • その他の薬剤の一部(例:bepridil, diphemanil, methadone)

強力なCYP3A4阻害薬

  • プロテアーゼインヒビター
  • 全身性のアゾール系抗真菌薬
  • マクロライド系抗生剤の一部(例:エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テリスロマイシン)

(アジスロマイシンやロキシスロマイシンとの併用にも注意を要する)

 今回、全会一致のpositionとならなかったので、今後EC(欧州委員会)に送付され、法的拘束力のある決定として採択される手順がとられますが、今後はかなりの使用制限となることは確実のようです。

 ドンペリドンは、日本でも広く使われている薬剤です。疾患によっては、吐き気止めとして予防的に長期間使用されている場合もあるかと思います。

 EMAの最終決定を受けて、日本の当局がどのような対応をとるか注目です。

関連情報:TOPICS
  2014.04.16 海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.12 No.7
  2013.03.09 ドンペリドンの安全性についてレビューを開始(欧州医薬品庁)
  2012.12.03 ドンペリドン使用時には心室性不整脈などへの留意が必要(豪州)
  2012.05.22 ドンペリドンと重篤な心室性不整脈・心臓病死(英国)
  2012.04.15 海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.10 No.8
  2011.10.28 ドンペリドンとQT延長・不整脈


2014年05月02日 00:42 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    ニュージーランドMEDSAFEがレビュー結果を発表しています。

    Domperidone (Motilium, Prokinex) – conclusion of review of benefits and risks of harm
    (Medsafe 2014.12.22)
    http://www.medsafe.govt.nz/safety/EWS/2014/Domperidone.asp

    EMAとほぼ同じ内容ですが、以下の医療専門職向けの注意喚起は注目です。

    Relevant risk factors for cardiovascular events associated with domperidone include hypertension, hyperlipidaemia,obesity, diabetes, smoking and excessive alcohol consumption.

    There is insufficient evidence to support the use of domperidone in childhood gastro-oesophageal reflux disease and it may not be suitable for chemotherapy- or radiotherapy-induced nausea and vomiting or post-operative nausea andvomiting.