医薬品ネット解禁問題に気を取られていて、見逃していた論文です。
ドネペジル（アリセプト）などのコリンエステラーゼ阻害薬（ChEIs）というと、重大な副作用として失神、徐脈、心ブロック、QT延長、心筋梗塞、心不全 の記載があることもあり、一部の心疾患の患者さんには慎重投与となっていますが、この研究ではChEIsを使用すると、心筋梗塞や死亡リスクを低くするなどとした結果が示されたそうです。（今のところオープンアクセス）
The use of cholinesterase inhibitors and the risk of myocardial infarction and death: a nationwide cohort study in subjects with Alzheimer’s disease.
（Eur Heart J Published Online 4 June 2013）
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23735859
http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2013/06/03/eurheartj.eht182.long
http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2013/06/03/eurheartj.eht182.full.pdf
この研究はアルツハイマー型認知症の診断を受けた高齢者7,073人を対象とした、認知症治療薬の使用と心筋梗塞（MI）と死亡との関連を調べたスウェーデンのコホート研究です。
使用薬はChEIs（ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン）が5,159人（平均571日追跡）、メマンチンが1,747人（平均392日追跡）です。
その結果、ChEIsの使用したことがある人は使用したことがない人と比べ、MIのリスクが38％減少（HR 0.62, 95% CI 0.40-0.95）、全死亡リスクが36％減少（HR0.64, 95%CI 0.54-0.76）、心血管関連の死亡リスクが38％減少（HR0.62 95%CI 0.40-0.95 ）したそうです。
また、用量依存的にリスクの減少が大きくなり、勧告された最高用量（ドネペジル10mg、リバスチグミン6mg超、ガランｔナミン24mg）だと、ChEIsを使用したことがなかった人と比べ、MIリスクが65％減、死亡リスクが54％減となったそうです。
ただ、読んでみていて、いくつか疑問も
- 処方のデータで検討しているので、実際にきちんと服用されているかどうかはわからない。
- 自宅で療養している人のデータも少なくないので、コンプライアンスや実際の服用期間はどうなんだろう？。（解析の表でもever となっている）
- また両方服用していた人の人数や、両方いずれも服用していない人の数はどのくらいだったんだろう？
- 解析の際にスタチンの使用が考慮されていない
研究者らは、今回の結果について、RCTでの確認を求める一方、要因としては、ChEIsに心拍数を調整する迷走神経への影響や、抗炎症作用があるのではないかとしています。（他の研究で示唆されているという。β遮断薬が心不全に有用というのと同じケースになる？）
メジャーな医学雑誌なので、きっとこのあとどこかが詳しく解説記事を出してくれると思うので、そちらでも確認をして頂きたいと思います。
わからないところもあるので、誤りも含め、コメントを頂ければと思います。（注意しないと、メーカーがこの論文をプロモーションで利用しそう）
関連記事：
Alzheimer’s Drugs May Benefit Heart, Study Finds
（Health Day 2013.06.05）
http://consumer.healthday.com/cognitive-and-neurological-health-information-26/alzheimer-s-news-20/alzheimer-s-drugs-may-benefit-heart-study-finds-677021.html
AD Meds May Reduce Heart Risk
（Medpage TODAY 2013.06.05）
http://www.medpagetoday.com/Cardiology/MyocardialInfarction/39632
Alzheimer’s drugs linked to lower heart attack risk
（WebMD UK 2013.06.07）
http://www.webmd.boots.com/alzheimers/news/20130607/alzheimers-drugs-heart-attack
2013年06月09日 15:52 投稿
