NHKスペシャルで紹介されたフランスでの取り組みとは

10月18日にNHKスペシャルで、オーバードーズ 市販薬乱用 〜若者の命をどう守る〜が放映されました。

かねてから、フランスでの取り組みの対策やその経緯がどういうものであったのかが関心で私も食い入るように見ました。

そこで、独自にそのときの経緯を調べました。ご参考頂ければと思います。

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2014年頃からコデインやプロメタジンなどが配合されたシロップや錠剤などにソーダ、グレープフルーツジュース、エナジードリンクなどで希釈した Purple drank による娯楽的使用(気晴らしや息抜き目的)が若者の間で広がっていました。

もともとは米国で1990年代にラッパーなどの始まったものですが、インターネットを通じ関心が広がったようです。

フランスでは、兼ねてよりフランス当局のANSMでは以前よりデキストロメトルファン(DXM)やプロメタジン、コデインなどの乱用状況を監視していましたが、2017年1月以降はPurple drank 関連の事案を5件確認、うち2件は死亡例だったそうです

ANSMでは、2015年12月にGP、依存症専門医、毒物学者、および依存症を専門とする薬剤師で構成される麻薬・向精神薬委員会(Commission des stupéfiants et psychotropes)実態調査の結果を発表し、2016年3月、GPや薬剤師、救急医、依存症に専⾨医、⼩児科医、児童福祉専⾨家を含む医療従事者に注意喚起が行われました。

2015年9月~17年3月つに行われた調査では、主に Purple drank の使用に関⼼を持つ25歳以下の若者に絞った調査によれば、関連成分が配合された製品の不審な購入があるとの声が現場の薬剤師から相次いで寄せられた他、処方箋の偽造も確認されたそうです。

Purple drank に関す津事例は50件(男性が40人)で、平均16.5歳、26件の急性中毒が確認されたそうです。

ANSMでは2017年6月29日に開催された麻薬・向精神薬委員会で、

「啓発活動や医療従事者による警戒の呼びかけにもかかわらず、報告件数の増加は懸念される。平均年齢はかなり低く、その使用は Purple drank にとどまらず、コデイン、プロメタジン、デキストロメトルファン単体にも広がっている。さらに、コデイン+アセトアミノフェンが広がっていることから、鎮痛剤へも移行する」

「こうした摂取に伴う危険性は極めて深刻であり、死に至るリスクもある。様々な混合物は物質の相乗効果を引き起こし、危険な⾏動や問題⾏動につながる。深刻な症例の増加と、それに伴う社会的•家庭的な問題の増加は、いくら強調してもしすぎることはない」

といった見解をまとめ、次のような行動計画を策定

  1. デキストロメトルファン、コデイン、エチルモルフィン、ノスカピンについて、医師の処方箋を義務付けること
  2. 一般市民および医療従事者、とりわけ最前線で重要な役割を果たし、特にこれらの医薬品の販売を拒否する立場にある薬剤師に向けた啓発活動を実施。また、教員への啓発活動も重点的に行う
  3. 未成年者への販売禁止も検討可能だが、法的・規制上の観点からは困難であると思われる
  4. CEIP-Aネットワークによる継続的なモニタリング:実施された措置の評価に適した調査を
    実施する必要がある

当日の議事録を見ると、委員からはさまざまな意見が出されています

  • さまざなメディア(賛美する楽曲なども)を通じて、これらの物質を「娯楽」として捉える風潮を広まっていることが、若者たちに「この使用には何のリスクもない」という認識を抱かせ、潜在的な影響に対する理解が著しく欠如している。薬剤師たちは、こうした行動に対して手をこまねいている状況にある。
  • 未成年者が薬剤師に対してこうした医薬品を執拗に求めるこの現象は、未成年者へのアルコール、タバコ、およびギャンブルの販売が禁止されている状況とは対照的である。抗ヒスタミン薬への代替使用のリスクも存在する。。コデインは断続的に使⽤されることがあり、違法薬物、すなわちよりリスクの⾼い物質への依存が再び⾼まるという問題は決して軽視できない。
  • この問題に関与する関係者が多岐にわたっている。薬剤師や依存症治療ネットワークは、ANSMによる規制改正が実施された後、一次予防および二次予防に貢献することになる。迅速な対応の重要性も考慮すべきである。この議題は先送りすることも可能だが、その代償としてリスクが継続することになる。
  • 2016年3月に開始された情報キャンペーンや薬剤師専⾨誌に掲載された複数の記事が、症例の増加を食い止めるには至っていない。薬剤師業界は Purple drank の存在を認識しているものの、⼀貫した対応を⾏うためのリソースが必要。

ANSMの麻薬・向精神薬委員会でのこの処方箋必須とすべきとする意見を踏まえ、2017年7月12日、保健大臣アニエス・ビュザンは、

コデイン、抗ヒスタミン薬、炭酸飲料を混ぜたカクテル Purple drank 流行は、2015年以降以、10代や若年成人の間でますます広がっている。この流行により、今年に入ってから10代の若者2人が悲劇的な死を遂げている。また、25歳未満の層では、過去2年間に保健当局によって、「パープル・ドランク」に関連する重篤な症例が30件、デキストロメトルファンに関連する重篤な症例が23件確認されているとして、コデイン、デキストロメトルファン、エチルモルヒネ、またはノスカピンを含むすべての医薬品を処⽅箋医薬品リストに追加する政令に署名し、即日発効すると発表。

保健大臣はこれにより、危険で命に関わる恐れのある依存性のある慣行に終止符を打つつもりであると強調しました。

Agnès Buzyn décide d’inscrire la codéine et d’autres dérivés de l’opium à la liste des médicaments disponibles uniquement sur ordonnance
(仏保健省 2017.07.12)
https://sante.gouv.fr/archives/archives-presse/archives-communiques-de-presse/article/agnes-buzyn-decide-d-inscrire-la-codeine-et-d-autres-derives-de-l-opium-a-la

当然、製薬会社としては反対する立場でしょう。でも、取材の中でこのようなことを話されたそうです。

フランス製薬企業団体元会長

製薬業界は処方薬への変更に反対していました
企業側は「誤用や乱用は処方箋が必要な薬でも起こりうる」と主張していました
市販薬だけの問題ではありません
これらの薬を市販薬から外せば一般の消費者は病院を受診しなければならなくなります
待機時間もかかり不便になるという主張もありました
話し合いを重ねる中で議論の流れが変わる瞬間がありました
私たち製薬会社の代表であるとともに親であると気づいたのです
市販薬を乱用して悪影響を受ける若者が一人でもいれば、それを多すぎるのだと気づいたのです

当時の記事を見ると、緊急に当該市販薬の販売を中止するように指示されたことから、さまざまな混乱があったようです。

フランスでのこういった動きはNスペでも紹介があった、コデインの過剰摂取で亡くなった16歳の少女の母親が始めた嘆願書からこの問題への認識は急速に広まったとのこと。

5万人以上の署名を集めたこの嘆願書の中で、母親のクリステル・セボさんは、この「新たな十代の若者の薬物」の禁止と、各患者の購入履歴を追跡するための医薬品記録システムの導入を求めたそうです。

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こういった経緯を見ると、いかに日本での対策や議論の不十分さが浮かび上がります。

研究班からの厚生労働科学研究や論文で危険性の指摘があっても、国の審議会での議論は不十分であり、対策がこれだけでよいのかと感じました。

業界の論理が優先される審議会、さまざまな関係者が参加した監視のための委員会の不在など、まだまだ日本でもやるべきことがあるように思いました、

実は今回の放送にあたって、NHKの方から取材を受けました。

商品名を出すことに勇気がいったと思います。

限られた時間で構成はこれでよかったと思います。

今回の放映をきっかけに、規制のあり方に一石を投じることになればと思っています。

参考;
Compte rendu de la séance du 29 juin 2017
(ANSM 2017.06.29 開催の委員会の議事録)
https://archive.ansm.sante.fr/var/ansm_site/storage/original/application/f34b85fdd7328749fb73db7f26be24bb.pdf

Les usages détournés de médicaments codéinés par les jeunes
(OFT 2017.07.11)
https://www.ofdt.fr/sites/ofdt/files/2023-11/field_media_document-3988-doc_num–explnum_id-24927-.pdf

France: les médicaments à base de codéine désormais interdits en vente libre
(rfi 2027.07.13)
https://www.rfi.fr/fr/france/20170713-medicaments-base-codeine-desormais-interdits-vente-libre

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2026年10月18日 21:58 投稿

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