過活動膀胱の概念は患者さんのためのもの? それとも?

 Eupopean Urology 誌に掲載された論説です。興味深い内容だったので紹介します。(今のところフリーアクセス)

Does the Imprecise Definition of Overactive Bladder Serve Commercial Rather than Patient Interests?
Eur Urol. Published online 5 January 2012)
  http://www.europeanurology.com/article/S0302-2838(11)01375-3/fulltext

 タイトルの通り、この論説は過活動膀胱(Overactive Bladder)について述べたもので、著者は「その定義はあいまいであり、患者のためよりもむしろ商業目的の役割を果たしているのではないか」という疑問を投げかけた内容となっています。概要は以下の通りです。

 過活動膀胱という言葉自体は1989年に始めて登場したが、広く知られるようになったのは1997年に製薬企業が支援したシンポジウムからだという。

 製薬企業はこぞって適応症拡大などの医薬品開発に乗り出し、1998年にはトルテロジンが米FDAで承認され、数百万ドルにも及ぶ販促キャンペーン(米国では患者直接広告が可能)が展開されたという。

 過活動膀胱という概念は、2002年にはきちんとした定義づけが行われたが、過活動膀胱の原因はよく理解されてはいない。

 一方、医薬品の開発にあたっては、多くのRCTが論文として発表されているが、約80%が企業から資金が提供されたものであり、システィマテイック・レビューを加えると多くで利益相反の疑いがあるという。

 私も、過活動性膀胱と思われる人に関わることが少なくありませんが、本当に効果があるの?と、ときどき思うことがあります。

 一方、現在中心となる治療薬は抗コリン作用を有するものです。 認知機能の低下などのデメリットや有害事象のリスクなどを考慮すると、この論説には説得力を感じました。

参考:
The concept of ‘overactive bladder’ serves better commercial rather than patient interests
(Eurek alert! 2012.01.13)
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2012-01/uoh-tco011312.php


2012年01月14日 15:43 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    あなたの健康百科に紹介記事が掲載されています。

    過活動膀胱の定義に商業的背景か―欧州医学誌に論評
    (あなたの健康百科 1月20日)
    http://kenko100.jp/news/2012/01/20/02