バレニクリンによる精神神経系副作用の特徴

 禁煙支援で欠かせないバレニクリン(チャンピックス、米国販売名:Chantix)ですが、このほど精神神経系の有害事象の事例を調べた論文が、Annals of Pharmacotherapy 誌のオンライン版に掲載されています。

Thoughts and Acts of Aggression/Violence Toward Others Reported in Association with Varenicline
Ann Pharmacother Published Online, 20 July 2010)
http://www.theannals.com/cgi/content/abstract/aph.1P172v1

 研究者らはまず、米FDAのMedWatch databaseに報告されたバレニクリンに関する有害事象のうち「攻撃性」「暴力」などの記載がある78の事例と臨床試験で報告された4例、症例報告3例のあわせて85の事例をリストアップし、このうちの自傷など自己への攻撃性を除いた(自殺、自殺の試みは事例に含む)26の事例(女性20例、男性6例、平均年齢41.1歳)について、精神医学的診断基準と有害事象の評価ツールを用いて詳しく解析しています。

 26例の内訳は、暴行10例、殺人の考え9例、その他攻撃性・暴力の考え/行動7例で、「ボーリング場で面識がない人を突然殴る」「2人の知人を突然殴って、ドアを壊す」など、近くの人ならだれでもよかったなどといった、いずれも不可解で理由がわからないケースがほとんどだったそうです。

 また、悪夢などの睡眠異常などの前触れともいえる精神神経系の副作用有害事象は、使用開始平均2日以内の初期投与期間(18例中)で発現した一方、暴行などの問題行動は、服用開始後わずか3日で発現する事例がある一方、1ヶ月半たってから起こることもあったとのことです。

 一方、こういった問題行動は14例中13例で、服用を中止することでなくなった一方、3例では再投与で症状が強まる形で副作用が再燃されたそうです。

 研究者らは、きちんと設計された症例対照研究でさらなる解析を行うことを求めると共に、医師・薬剤師は患者に精神神経系の有害事象が発現する可能性があることを伝えるよう求めています。

 結構ショッキングな内容ですが、今のところ米ファイザー社からのコメントは出ていないようです。

 日本でも添付文書で、精神神経系の有害事象の可能性が記されてはいますが、皆さんはこういった精神神経系の副作用の可能性について、どのように患者さんに情報提供していますか? 少なくとも、飲み始めたころから、悪夢などの精神神経系の訴えをしている人がいたら、十分気をつけた方がいいかもしれませんね。

関連情報:
  2009.12.30 チャンピックスの精神神経系副作用、更なる注意喚起が必要
  2009.08.10 チャンピックスに精神神経系の副作用に関する警告欄が新設
  2009.07.02 バレニクリン、精神神経系副作用の黒枠警告追記へ(米FDA)
  2008.10.23 バレニクリンと有害事象(米国)
  2008.05.22 バレニクリン、パイロットは使用禁止(米国)

参考:
Chantix & Violence: What Patients Have In Common
(Pharmalot 2010.07.22)
http://www.pharmalot.com/2010/07/chantix-and-violence-what-patients-have-in-common/

7月23日 9:10 更新


2010年07月23日 01:26 投稿

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