ケンコーコム、個人輸入代行サービスに参入か

 シンガポールに現地事務所を設立し、一般用医薬品の個人輸入を行っているケンコーコム(http://www.kenko.com/)ですが、いよいよ医療用医薬品についても事業展開を行うようです。

ケンコーコム、ドラッグ・ラグによる格差是正を目的とした、新規事業参入の検討を開始
(ケンコーコム株式会社プレスリリース2010年3月26日)
http://www.kenko.com/company/pr/archives/2010/03/post_80.html

 プレスリリースによれば、「日本では医薬品承認までに長い時間を要します。そのため海外では承認され、安全かつ有効に使用されている医薬品にもかかわらず、日本においては承認前であるために入手できず、結果として医師が患者の治療に必要な医薬品を個人輸入せざるを得ない実態があります。 ケンコーコムは、そのようなドラッグ・ラグの実態を改善し、世界各国で承認されている医薬品の日本国内における流通を適正かつ迅速にすることを目指して、新たに米国に子会社を設立すること、およびその子会社を通じ、医師が患者の治療に必要と判断した日本で承認前の医薬品の個人輸入を代行するサービスへの参入について、検討を開始しました。」としていますが、私には「ドラッグ・ラグ」という言葉を巧みに使って個人輸入を正当化・ビジネス化しているようにしか思えません。

 確かに、生命を脅かす疾患や強度の衰弱をもたらす疾患で他の治療の選択肢がない患者さんが、海外では承認されている医薬品を試したいという願いに医療は応じる必要があると思いますが、こういった形で社会に訴え、自分たちのビジネスに支持を集めようとしていることについては大いに疑問があります。

 欧州など諸外国では、どのような人がどのような方法で未承認薬を使用できるか、使用に関わる費用(患者負担)、有害事象の取り扱いなど、「コンパッショネート使用」(compassionate use)と呼ばれる未承認薬使用についてのルールがありますが、日本ではこういったルールが存在しません。

 日本でも、微かな期待を持って未承認薬を個人輸入を利用して使用している人も少なくないと思いますが、未承認薬であるからこそ、未知の有害事象や相互作用もあるかと思います。

 ケンコーコムがもし個人輸入代行の業を行うのであれば、そういった情報の取り扱いについても責任を持って対応すべきだと思います。

 プレスリリースでは、「他の治療法がない患者さんのために」といった文言がないので、実際に取り扱う品目は、がん治療薬や難病治療薬ではなく、抗うつ薬や緊急避妊薬や抗肥満薬、早漏予防薬といった生活改善薬に留まるのではないかと思ってしまうのですが。

 国による、未承認薬の承認前の使用(個人輸入による使用)の早急なルール作りも必要ですね。

資料:
寺岡章雄、津谷喜一郎、未承認薬のコンパッショネート使用─日本において患者のアクセスの願いにどう応えるか─
(薬理と治療 2010;38:109-150)
http://www.lifescience.co.jp/yk/jpt_online/109-150.pdf

関連情報:TOPICS
  2009.10.26 第1・2類は、個人輸入でどうぞ(ケンコーコム)
  2010.02.18 第1回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議


2010年03月26日 18:21 投稿

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