クロピドグレルとオメプラゾールの併用は避けるべし(米FDA)

 PPIが抗血小板薬クロピドグレル(プラビックス)の作用を減弱させるかもしれないという記事(TOPICS 2009.01.29)を以前紹介しましたが、17日米FDAは、クロピドグレルの十分な効果が得られなくなるとして、PPIの一つであるオメプラゾールの併用を避けるよう勧告しました。

Updated Safety Information about a drug interaction between Clopidogrel Bisulfate (marketed as Plavix) and Omeprazole (marketed as Prilosec and Prilosec OTC)
(FDA 2009.11.17 Public Health Advisory )
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/PublicHealthAdvisories/ucm190825.htm

Follow-Up to the January 26, 2009, Early Communication about an Ongoing Safety Review of Clopidogrel Bisulfate (marketed as Plavix) and Omeprazole (marketed as Prilosec and Prilosec OTC)
(FDA Postmarket Drug Safety Information for Patients and Providers 2009.11.17)

Update to the labeling of Clopidogrel Bisulfate (marketed as Plavix) to alert healthcare professionals about a drug interaction with omeprazole (marketed as Prilosec and Prilosec OTC)
(FDA 2009.11.17 Information for Healthcare Professionals)

上記日本語訳概要は、医薬品安全性情報Vol.7 No.25に掲載されています。
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly7/25091210.pdf

Follow-Up to the January 26, 2009, Early Communication about an Ongoing Safety Review of Clopidogrel Bisulfate (marketed as Plavix) and Omeprazole (marketed as Prilosec and Prilosec OTC)
FDA 2009.11.17)

 FDAでは、Sanofi-Aventis 社と Bristol-Myers Squibb 社から提出されたデータなどを解析、クロピドグレルを活性代謝物に変える肝代謝酵素CYP2C19をオメプラゾールが阻害すると判断し、今回の発表に至ったようです。

 オメプラゾールのクロピドグレルへの影響は、代謝活性物を45%、抗血小板作用を47%減少させるというもので、同時に服用しなくても(12時間あけても)影響は変わらなかったそうです。

 これを受けて、FDAでは次のような勧告を行っています。

  • オメプラゾールとクロピドグレルの同時使用は避ける(時間をずらしてもダメ)
  • 現在、クロピドグレルを服用中の人で、オメプラゾールも服用している人、服用を考えている人(OTC版も含む)は、医療専門職に相談すること
  • オメプラゾール、クロピドグレルともに患者にとって有用な薬であり、服用の開始や中止については医療専門職に相談すること
  • クロピドグレルを服用中の人、服用を開始しようとしている人はOTC薬の使用について医療専門職に伝えることは重要である

 さらに、医療専門職に対しては次のような注意喚起も行っています。

  • esomeprazole(本邦未発売)についても併用を避けること
  • 現時点では他のPPIがクロピドグレルにどの程度影響するかははっきりしていない
  • シメチジン、フルコナゾール、ケトコナゾール、voriconazole、etravirine、felbamate、フルオキセチン、フルボキサミン、チクロピジンなどのCYP2C19阻害薬は、オメプラゾールと同様の影響が考えられるので、併用は避けるべきである

PLAVIX(FDA Label Information 2009.11.12)
http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2009/020839s044lbl.pdf

PLAVIX(FDA Label Information 20010.03.12)
http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2010/020839s042lbl.pdf

 Health Day によれば、今回の勧告の根拠となった研究は、米国心臓学会の年会で発表されたそうです。論文としても発表されるのでしょうか

関連情報:TOPICS 2009.01.29 PPIがクロピドグレルの作用を減弱するかもしれない

参考:Heartburn Drugs Can Thwart Popular Blood Thinner
   (Health Day 2009.11.17)
    http://www.healthday.com/Article.asp?AID=633204

12月10日、2010年5月18日 リンク追加  2011年9月12日リンク再設定


2009年11月18日 12:05 投稿

コメントが2つあります

  1. 旭川の薬剤師道場

    こんにちは。過日はコメントありがとうございました。

    日経メディカルにも紹介されていましたが、LANCETに最近、「併用を避ける必要は無いかもしれない」と、いくつかのイベントまで調べたこんな論文もありましたよ。
    http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(09)61525-7/abstract

    ご存知かもしれませんが、全く触れられていなかったので、念のためです。

    旭川の薬剤師道場
    http://chuopharm.dtiblog.com/

  2. アポネット 小嶋

    コメントありがとうございます。

    本サイトでは取り上げませんでしたが、確かにそういった論文も出ていましたね。

    私もどちらが正しいのかと思っていましたが、Label Information も変更になったのでこれで確定なんでしょうね。他国も添付文書の変更に動くのでしょうか。

    ただ、今回の発表について心臓の専門家からは異論の声もあるようですね。おそらく、LANCETの論文などもあるからでしょう。

    一方AP通信によれば、医薬品監視団体の Public Citizen は、注意喚起のためには黒枠警告(“black box”warning label)にすべきと話しているそうです。

    日本ではこういった話はどうやって現場に伝えられていくんでしょうね。

    FDA says heartburn drugs can interfere with Plavix
     (CNBC 2009.11.17 AP配信)
     http://www.cnbc.com/id/33991224