アセトアミノフェンの安全対策(肝障害)が示される(米国)

 アセトアミノフェンについて、過量服用に伴う重篤な肝障害についての検討を行う諮問委員会が、6月29日、30日に開催されることを4月29日のTOPICSで紹介しましたが、この諮問委員会に先だって、FDAの作業部会(working group)がまとめた、アセトアミノフェンの安全使用に関する勧告や、有害事象の報告をまとめた過去のレポートなどをまとめた討議資料(MEMORANDUM、全286ページ)を27日公表しました。

Food and Drug Administration Drug Safety and Risk Management Advisory Committee, Anesthetic and Life Support Drugs Advisory Committee and Nonprescription Drugs Advisory Committee June 29-30, 2009

 MEMORANDUM(FDA Briefing Material)[PDF:6.84MB](BRIEFING INFORMATION

 作業部会ではアセトアミノフェンを含有するOTC・調剤薬について、安全対策として次のような勧告をまとめています。

  1. 多くの団体の協力して、意図的な過量服用を行わないよう消費者に啓蒙すること
  2. 表示を改善すること(自殺を防げるかもしれない)
    「陳列場所にアセトアミノフェンと表示する」「外箱にアセトアミノフェン含有とはっきりとわかるように表示する」「用法を守らないと重篤な肝障害を起こす場合があるという表示を加えることを検討する」「アセトアミノフェンを含む他のくすりをいっしょに服用しないという表示を加える」「アセトアミノフェンを過量服用した場合、症状がなくても医師の診察を受ける」「毎日3杯以上アルコールを摂取する人は、重篤な肝障害を起こす可能性があるので、一日の服用限度量を少なめにすること」などの文言を加える
  3. 一日の服用限度量を3250mg(現在は4000mg)までとし、毎日アルコールを3杯以上摂取する人はこれより少なくする。
  4. 1錠あたりの含有量は325mgまでとし、1回あたりの服用量は最大650mg(現在は1000mg)とする。
  5. 小児向け液剤を見直す
    「160mg/5mlに制限する」「誤用しないような容器の使用」「2歳未満の使用」
  6. 配合製剤の見合わせ
  7. さらなる研究の必要性(意図的な過量服用の防止策)

 また、調剤薬として販売されるものについては

  1. 消費者に啓蒙を行うこと(OTCと同様)
  2. 表示を改善すること
    「調剤薬を渡す際の容器にOTCと同様の成分名や警告の文言を記すと共に、薬剤師による情報提供を行う」「Medication Guideを作成する」
  3. 一回服用量毎の包装を考慮する
  4. OTCと同様の一日最大服用量を設定する 

一方で、下記についてはエビデンスが十分でないなどとして、作業部会では見直しは求めないとしています。

  1. 500mg製剤を処方せん医薬品に分類を変更する
  2. OTCの包装毎の上限をつくる(大包装品は見合わせる)
    英国の規制は承知しているが、エビデンスは十分ではない。制限を設けると、コストの増大などにより、関節痛などで日常的に使用している高齢者などに不利益を与える。また、ブリスター包装にすると出しにくくなるという問題があり、メーカーの判断に委ねるべきである。不便が高じると、NSAIDSへの切り替えを促しかねない。
  3. 肝臓病がある人の服用量
  4. 新たな注意文書を封入すること
  5. アセトアミノフェンをAPAPと呼称することやパラセタモールの呼称とすること

 作業部会の報告書を踏まえ、FDAは諮問委員会に下記の様な対応案を示しています。消費者に注意を喚起するために、パッケージのサイズの制限も盛り込まれています。果たして、どこまで採用されるでしょうか。

Options Paper and Memorandum(旧サイトに掲載されていました)
 http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/09/briefing/2009-4429b1-01-FDA.pdf 

  1. OTC製品は1錠325mg、1回量は650mgとし、これを超えるものは処方せん医薬品とする
  2. パッケージのサイズを制限する
  3. 処方せんにより販売されるものも、1回量ごとのパッケージとする
    (米国ではバラ錠で調剤するのが通常)
  4. 処方せん薬製剤にも、OTC製品と同様の警告情報を掲載する
    (調剤薬の場合、製品名だけではアセトアミノフェンが含有されているかどうか分からない。 “Medication Guide”の活用も必要)
  5. 他の成分が配合された製品を認めない
    (知らず知らずに、重複摂取する可能性があるため。 特にヒドロコドンとの合剤(処方せん医薬品)は考慮が必要)
  6. 液体製品は含有濃度を統一させる
    (現在、液体製剤は大きい子用と小さい子用に細分化されており、誤用(過量服用)の原因ともなっている)

 今回の報告書を受け、OTCの業界団体CHPA(Consumer Healthcare Products Association)は、外箱に「アセトアミノフェン配合」と表示することを検討しているとした声明を発表しています。

Statement from the Consumer Healthcare Products Association (CHPA) on FDA’s Options Paper Regarding Acetaminophen(CHPA 2009.5.27) (→リンク

 日本での使用量は少ないので、一概に比較はできませんが、OTC(配合成分)について日本でもこれくらいの検討や注意喚起があってもいいですね。

関連情報:TOPICS
  2009.04.29 OTC解熱鎮痛剤に潜在的リスクの明示を求める(米国)
  2005.12.04 アセトアミノフェンと肝不全(米国研究)

参考:
FDA group recommends acetaminophen liver warnings
(ABC NEWS 2009.5.27 AP配信)
 http://abcnews.go.com/Health/wireStory?id=7691765
Drugmakers May Limit Doses, Add Warnings for Tylenol
(Bloomberg 2009.5.27)
 http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601103&sid=an0NgFGyErgU&refer=us

5月30日 15:30リンク更新 6月3日 10:50更新


2009年05月28日 16:38 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    FDAの対応策(案)が示されたので、本文に追記しました。

    カロナールが処方される機会が多いことを考えると、FDAの提案にはいろいろ考えさせられます。

    FDA諮問委員会での審議を注目したいと思います。