この論文では、国民だけでなく、国・政治家も自負する「日本の医療は世界一」という認識は果たして持続可能なのかについて疑問を投げかけ、対応策についてが論じられています。
【Glob Health Med. 2026 Feb 8】
Japan’s high-quality healthcare system despite physician shortages: Exploring the paradox and pathways toward sustainable healthcare
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ghm/8/1/8_2026.01011/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ghm/8/1/8_2026.01011/_article/-char/ja
執筆者は、日本の医師密度は38カ国中36位(人口1,000人あたり2.6人)である一方、1人あたりの年間医師診察数は12.1件と、OECD諸国の中でも上位にあることから、日本では比較的医師数が少ないにもかかわらず高い医療パフォーマンスが維持されているという矛盾した状況を指摘。
背景には、国民皆保険制度、資源集約型の強固な医療インフラ、看護師・薬剤師など医療専門家による堅牢なサポートネットワーク制度上の強みがあるとした一方、⽇本の医師不足が需要の激化、医師の偏在、病院の財務損失、フリーアクセスシステムにおける効果的なゲートキーピングなど、医療システムにおける重大なボトルネックとなっていると論じています。
こういった背景には、日本は医療インフラとサポートスタッフはを擁しているにもかかわらず、医師は依然として医療提供の主たる意思決定者であり、法的責任を負っていて、規制枠組みと専門職の境界線がタスクシフトを制約し、診断・治療の権限を医師に集中させ、業務負荷の圧迫を悪化させているためだとしています。
その結果、医師不⾜は医療システムにおける重大なボトルネックとなっていると論じています。
筆者は日本の事例は、医師不足への対応には構造的措置が必要であることを示唆しているとして
- 医師不足と地域格差への対応。医師の供給を改善し、需要予測と教育政策を実施すべきである
- 医師の権限と業務負荷の分散化
必要な資⾦を確保しながら、看護師、薬剤師、その他の医療従事者とのタスクシェアリング(業務分担)を拡大する必要がある - 地方(農村地域)における医療と基礎医療への財政的インセンティブの導⼊
医師不⾜地域で働く医師への追加手当を拡充し、地域枠制の医学部を卒業した医師のキャリア開発を⽀援する必要がある
と指摘、結論として、日本の医師不足は国民皆保険制度の失敗によるものではなく、極端な需要集中、限られた医療従事者数、制度的配分メカニズムが絡み合った構造的不均衡に起因するなどと論じています。
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日本ではこういった懸念を今も過小評価しているように思います。
構造的不均衡への指摘があっても、日本の医療文化を美化し、国の審議会や政治は議論をしようとはしません。
一方、コロナ禍の教訓を踏まえ世界各国では、地域でのアクセスの確保、リソースの有効活用と医療保険の持続性から職能を生かした業務分担を拡げて、プライマリケアを中心とした医療提供体制の見直しをしています。
薬剤師・看護師をはじめとする、医療職の職能活用とタスクシフトです。
日本、医療システムの中での薬剤師の役割を矮小化されがちですが、政治には是非長いスパンを踏まえた、医療政策も検討してもらいたいものです。
2026年03月07日 13:45 投稿
