海外では経口栄養剤の保険償還はどうなっているの?

自維の政策合意などをうけて、次回改定で食品類似の経口栄養剤の保険適用の制限が設けられる見込みになっていますが、海外ではどうなっているのかを調べたところ、調査報告書がアップされていたので紹介します。

【Value Health. 2022 May;25(5):677-684】
Are We Ready for a New Approach to Comparing Coverage and Reimbursement Policies for Medical Nutrition in Key Markets: An ISPOR Special Interest Group Report
https://www.valueinhealthjournal.com/action/showPdf?pii=S1098-3015%2822%2900086-9
https://www.valueinhealthjournal.com/article/S1098-3015(22)00086-9/fulltext

medical nutrition(MN)のうち、特別医療目的用食品(FSMP:foods for special medical purposes)/ 医療用食品(MF:medical food)(経腸栄養剤(enteral medical nutrition)も含むと思われる)医療保険等の適用範囲と償還の特徴を明らかにした。

オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港、イタリア、日本、オランダ、シンガポール、スペイン、英国、米国の15カ国について、入院、外来、地域ベースに分けて保険の償還状況について調査。

入院:
15カ国中、中国のを除く14か国でカバーしているが、英国(栄養失調患者の場合、特定の状況下)と、米国では制限がある

外来:
13カ国中9カ国でカバー
(日本は経腸チューブ栄養に限定とされている)

地域ベース:
12カ国中8カ国でカバー
(日本は記載なし)

フランス、ドイツ、スペイン、オランダについては全ての環境でカバーされていた。

外来、地域ベースともに、一部の国で特定の疾患や状態、または特定の患者サブセット(例:退院患者、低所得患者、栄養不良患者)にのみカバーを限定。

一方で、FMSP/MFの保険適用範囲に関する方針は国によって異なる。

日本を除く、11か国では2000年代初頭まで給付設計が確立されているものの、その後定期的な見直しはされていない。

また、MNに関する医療技術評価(HTA:Health Technology Assessment)が正式に行われているのは、フランスとブラジルに留まっている。

研究者らは、FSMP/MF製品が患者の転帰に良好な影響を与え、栄養不良患者の総合管理の一環として費用対効果が高く、場合によっては費用削減効果さえあるにもかかわらず、ほとんどの国では外来患者または地域医療環境(在宅介護と一般開業医によるケアを受けながら自宅で生活している、あるいは施設入所者)で生活する個人に対する FSMP/MF 製品に対する償還がほとんどまたはまったく行われていないことが示されている。(同一国内でも、州や地域によって償還の考え方が異なることもある)

一方で、FSMP/MF製剤の革新により、アウトカムの改善や有効性のより強力なエビデンスが得られているにもかかわらず、FSMP/MFの償還ポリシーの根底にある論理はほとんど変わっていないと指摘、また、ほとんどの国ではFSMP/MFに対する正式なHTA評価が実施されていないとして、保険適用と償還ポリシーとMNガイドラインの関連性を検討する必要があるとしています。

日本では、これまで使用可能な場合ついて、「特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する」とされていますが、12月12日に開催された中医協では、「栄養保持を目的とする医薬品について、代替可能な食品が市販されている」として、支払い側からは「医師が治療上の必要性を特に認める場合でも、単なる低栄養ということだけで保険診療の中で使用することのないように、運用ルール上の工夫が必要」との意見が出されています。

「栄養保持の医薬品」の給付適正化、厚労省が提案
診療側「医師が必要と認めた場合は給付」と釘刺す、支払側は支持
(m3com医療維新025.12.12)
https://www.m3.com/news/iryoishin/1311300

現場の肌感覚だと、単に食欲がない、栄養のバランスが悪いという理由だけで処方が行われている感も否めません。

在宅医療に関わる医師からは、必要だとの声が少なくありませんが、HTAまでは必要はないものの、明確な保険での使用基準を規定することは必要ではないでしょうか。

関連情報:TOPICS
2025.12.27 財務省が考える社会保障制度改革の推進


2025年12月30日 15:05 投稿

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