アイルランド保健相は14日、薬剤師が8つの一般的な症状の治療を提供することを可能とする保健法に基づく規制に署名した発表しています。
【アイルランド保健省 2025.11.14】
Minister for Health signs legislation that will enable pharmacists to prescribe for certain common conditions for the first time
https://www.gov.ie/en/department-of-health/press-releases/minister-for-health-signs-legislation-that-will-enable-pharmacists-to-prescribe-for-certain-common-conditions-for-the-first-time/
今回の薬局の業務範囲の拡大は、今年9月に発表されたCommunity Pharmacy Agreement 2025（コミュニティ薬局協定2025）（→TOPICS 2025.09.19）に基づくCommon Conditions Service (CCS)と呼ばれるもので、これにより、下記8つの症状について近くサービスの提供が可能となります。
- アレルギー性鼻炎
- 口唇ヘルペス
- 結膜炎
- 膿痂疹
- 口腔カンジダ症
- 帯状疱疹
- 単純性尿路感染症／膀胱炎
- 外陰腟カンジダ症
CCSに基づいて処方を希望する薬剤師は、法的および倫理的枠組みと専門的事項に関するコアモジュールと、サービスに含まれる一般的な症状ごとに個別のモジュールで構成される研修を受ける必要があります。
Pharmaceutical Society of Ireland(PSI)ウェブサイトでその概要が紹介されています。
Common Conditions Service
（PSI 2025.11.13）
https://www.psi.ie/information-and-resources/common-conditions-service
研修はアイルランド薬学研究所（Irish Institute of Pharmacy：IIOP）とRCSI（Royal College of Surgeons in Ireland）の学際的なチームによって共同開発され、IIOPのウェブサイトで利用ができます。
The Common Conditions Service – Training Requirements
（IIOP）
https://iiop.ie/content/common-conditions-service-training
Common Conditions Serviceにより、地域薬剤師は地域薬局において、当初8つの共通疾患について助言を提供し治療を行うことが可能となります。
薬剤師は既にこれらの疾患について助言、市販薬による治療、および／または医療機関への紹介を行っています。
本サービスは、確立された臨床プロトコルに基づき、これが最も適切な選択肢である場合に限り、特定の処方箋医薬品を提供することを可能とすることで、地域薬剤師がこれらの共通疾患を管理する能力を拡大します。
これが最も適切な選択肢である場合に限ります 。
またCCSを提供するにあたっては、薬剤師はHSEによって開発され、保健大臣によって承認された8つの臨床プロトコルを遵守しなければなりません。
HSEウェブサイトでは、CCSでの臨床プロトコル(一部はDraft)も公開されています(写真入りのものもあり詳しい)
Common Conditions Service Protocols for use in community pharmacy（HSE）
https://www.hse.ie/eng/about/who/gmscontracts/ccs/
●アレルギー性鼻炎及びアレルギー性結膜炎
Common Conditions Service Protocol Allergic Rhinitis & Allergic Conjunctivitis(Final)
https://www.hse.ie/eng/about/who/gmscontracts/ccs/common-conditions-service-protocol-allergic-rhinitis-and-allergic-conjunctivitis.pdf
●口唇ヘルペス
Common Conditions Service Protocol Cold Sores (Final)
https://www.hse.ie/eng/about/who/gmscontracts/ccs/common-conditions-service-protocol-cold-sores.pdf
●伝染性膿痂疹
Common Conditions Service Protocol Impetigo (Final)
https://www.hse.ie/eng/about/who/gmscontracts/ccs/common-conditions-service-protocol-impetigo.pdf
●口腔カンジダ症
Common Conditions Service Protocol Oral Thrush (Final)
https://www.hse.ie/eng/about/who/gmscontracts/ccs/common-conditions-service-protocol-oral-thrush.pdf
●帯状疱疹
Common Conditions Service Protocol Shingles (Final)
https://www.hse.ie/eng/about/who/gmscontracts/ccs/common-conditions-service-protocol-shingles.pdf
●単純性下部尿路感染症（膀胱炎）
Common Conditions Service Protocol Uncomplicated Lower Urinary Tract Infection (Cystitis) (Final)
https://www.hse.ie/eng/about/who/gmscontracts/ccs/common-conditions-service-protocol-uncomplicated-lower-urinary-tract-infection-cystitis-.pdf
●外陰腟カンジダ症
Common Conditions Service Protocol Vulvovaginal Thrush
https://www.hse.ie/eng/about/who/gmscontracts/ccs/common-conditions-service-protocol-vulvovaginal-thrush.pdf
保健省では、薬剤師が必要な教育と研修に参加し始めるにつれて、Common Conditions Service (CCS)は今後数か月で一般に利用可能になる予定だとしています。
なお、12月1日までにこのサービスに登録し、必要な研修を受講し、2026年3月31日までにサービスを一般に提供することできれば、2,000ユーロ（約36万円）の一時金を受け取ることができるとしています。
PSIの事務局長兼最高責任者は次のような歓迎の意を述べています。
当局が求める私たちの役割は、患者の安全と薬局に対する継続的な公衆の信頼を確保することです。
薬剤師を支援し、薬局が患者にとって価値あるこのサービスを確立するための指針となる包括的なリソースが利用可能となったことを喜ばしく思います。
このサービスを提供しようとする薬剤師は、現在利用可能な必須研修を修了しなければなりません。
このサービスが確立され全国に展開されるにあたり、私たちは薬剤師とそのチーム、保健省、その他の関係者と連携を継続していきます。
また業界団体のIrish Pharmacy Union（IPU）も歓迎の意を発表しています。
New Common Conditions Service will Deliver Enhanced Patient Care in Communities
（IPU 2025.11.14）
https://ipu.ie/communication/new-common-conditions-service-will-deliver-enhanced-patient-care-in-communities/
“Common Conditions Service”は「コミュニティ薬局協定2025」に盛り込まれた制度であり、地域薬剤師が薬局において一般的で自然に治る症状について助言と治療を行うことを可能にします。
これには、確立された臨床プロトコルに基づき、最も適切な選択肢である場合に限り、薬剤師が特定の処方箋医薬品を提供できる権限の付与も含まれます。
本サービスの実施に向けた薬剤師研修プログラムの発表は、全国の地域薬局におけるCommon Conditions Service 確立に向けた第一歩です。
この発表を受け、IPU会長のトム・マレー氏はこの発表を歓迎し、次のように述べています。
薬剤師は医薬品の専門家であり、その専門知識を新たな形で患者の支援に活かす機会を長年求めてきました。Common Conditions Serviceの導入は、この点において非常に歓迎すべき進展です。
アイルランド中の薬局では日々、患者が自然治癒性の一般的な症状で来訪します。
薬剤師は臨床知識を有しながらも、これまで適切な治療を提供する権限がありませんでした。
これらの症状には花粉症、口唇ヘルペス、特定の尿路感染症や結膜炎などの合併症を伴わない局所感染症が含まれます。
Common Conditions Service の導入は、薬剤師がタイムリーなケアと治療を提供できるようにし、複雑さを最小限に抑えたケアを提供することで、医療システム全体の負担軽減につながります。
私たちは、今後の研修に全面的に参加し、地域社会における医療アクセスを改善する上で重要な役割を果たすことを楽しみにしています。
参考：
PSI welcomes launch of training for pharmacists for roll-out of new Common Conditions Service to the public
（Pharmaceutical Society of Ireland 2025.11.14）
https://www.psi.ie/news/psi-welcomes-launch-training-pharmacists-roll-out-new-common-conditions-service-public
Pharmacy prescribing to begin in coming months after Minister signs new legislation
（Irlsh Medical Times 2025.11.14）
https://www.imt.ie/news/pharmacy-prescribing-to-begin-in-coming-months-after-minister-signs-new-legislation-14-11-2025/
関連情報：TOPICS
2025.09.19 Community Pharmacy Agreement 2025（コミュニティ薬局協定2025）（アイルランド）
2025.06.07 薬局サービスの将来に関する専門家タスクフォースの提言（アイルランド）（2024.08.13）
2025年11月15日 11:47 投稿
