オルメサルタン長期服用時の体重減少を伴う下痢は要注意(米FDA)

 2012年の6月の論文あれこれ(→リンク)の症例報告として紹介したのち、FDAでのシグナル検出(TOPICS 2012.10.24)として紹介した、オルメサルタン(オルメテック他)との関連が疑われた、かなりの体重減少を伴う、重度・長期の下痢について、米FDAはDrug Safety Communication で改めて注意を呼びかけています。(関連性を認定ということでしょうね)

Olmesartan Medoxomil:
Drug Safety Communication – Label Changes To Include Intestinal Problems (Sprue-Like Enteropathy)
(FDA Safety Information 2013.07.03)
http://www.fda.gov/Safety/MedWatch/
SafetyInformation/SafetyAlertsforHumanMedicalProducts/ucm359528.htm

FDA approves label changes to include intestinal problems (sprue-like enteropathy) linked to blood pressure medicine olmesartan medoxomil
(FDA Drug Safety Communication 2013.07.03)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm359477.htm
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/DrugSafety/UCM359496.pdf
(「ラベルが変更」となっていますが、現時点では新しいラベルは確認できませんでした)

 この症状は、“sprue-like enteropathy”(適訳が見当たらない)と呼ばれるもので、オルメサルタンを服用後、月~年単位で発現するもので、時に入院が必要になる場合もあるそうです。

 FDAには、腸の絨毛状萎縮を伴う遅発性下痢として報告された重篤事例が23例あり、中止でいずれも症状が軽快、一方再投与したところ10人で再発が見られたそうです。

 他のARBではこういった症例の報告は今のところないそうで、今回の腸症状のメカニズムはわからないとしながらも、プロドラッグとしてのolmesartan medoxomil が局所的な遅延型過敏性反応または細胞免疫応答?と関連するのではないかとしています。

文献による症例報告

Severe Spruelike Enteropathy Associated With Olmesartan
Mayo Clin Proc. 2012 August; 87(8): 732–738.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3538487/

Spruelike Enteropathy Associated with Olmesartan: An Unusual Case of Severe Diarrhea
Case Rep Gastrointest Med. Published Online 13 Mar  2013)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3610358/

その他関連投稿

Olmesartan and intestinal adverse effects in the ROADMAP study.
Mayo Clin Proc. 2012 Dec;87(12):1230-1; author reply 1232.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547579/

Small bowel histopathologic findings suggestive of celiac disease in an asymptomatic patient receiving olmesartan.
Mayo Clin Proc. 2012 Dec;87(12):1231-2; author reply 1232.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547582/

 日本でも添付文書のその他の副作用の項で、0.1~0.5%の頻度の副作用として記載がありますが、オルメサルタンが配合された薬剤を長期服用している患者さんで、体重減少を伴う原因不明の下痢が続いたときは、関連性を疑った方がいいかもしれません。

関連情報:TOPICS
 2012.10.24 シグナル(米FDA Quarterly Reports)

10:00 リンク追加


2013年07月04日 01:40 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    関連記事です

    オルメサルタンのスプルー様腸疾患に関する安全性情報,米FDA
    (MT Pro 2013.07.04)
    http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1307/1307011.html

    FDA Adds GI Warning to Benicar Label
    (Medpage TODAY 2013.07.04)
    http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Hypertension/40278

  2. アポネット 小嶋

    10月22日に添付文書改訂の指示が出ています。

    [副作用]の「重大な副作用」の項に

    「重度の下痢:
    長期投与により、体重減少を伴う重度の下痢があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、生検により腸絨毛萎縮等が認められたとの報告がある。」

    を追記する。

    使用上の注意改訂情報(平成25年10月22日指示分)
    http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/kaitei20131022.html#2

    日本でも、重度の下痢関連症例がオルメテックで5例(うち、因果関係が否定できない症例3例)、レザルタス配合錠で1例(うち、因果関係が否定できない症例0例)あったそうです。

    調査結果概要
    http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/file/20131022frepno2.pdf