ディレグラ配合錠の審査報告書を読んでみた

 個人的にはいろいろと留意が必要と考えている、フェキソフェナジン塩酸塩と塩酸プソイドエフェドリンの合剤のディレグラ配合錠の審査報告書が17日、PMDAの承認審査情報にアップされたので読んでみました。

【PMDA 承認審査情報】ディレグラ配合錠 審査報告書
http://www.pmda.go.jp/drugs/2012/P201200172/780069000_22400AMX01489000_A100_1.pdf

 TOPICS 2012.12.102012.11.16 で紹介しましたが、ディレグラ配合錠は1錠中フェキソフェナジン塩酸塩(FEX)30mgと塩酸プソイドフェドリン(PSE)60mgを含有する錠剤で、承認の用法は12歳以上、1回2錠を1日2回、朝及び夕の空腹時です。

 審査報告書で目に留まったところを抜粋します。

  • 海外では1日2回投与製剤(FEX/PSE 60/120mg)及び1日1回投与製剤(FEX/PSE 180/240mg)が2012年5月現在医療用医薬品として24の国又は地域で、またOTCとして米国など6の国または地域で承認されている
  • 申請時の販売名は「アレナーゼ配合錠」だった
  • 1錠中の配合量が少ないのは、覚せい剤原料に該当しないようPSEの配合割合が全量の10%以下になるようにしたため
  • PSE単剤はプラセボやモンテルカストと比較して鼻閉スコアの有意な低下を示す臨床試験の結果がある
  • 一般用医薬品におけるPSE一日最大分量180mgをより高用量(240mg)を配合することで、鼻閉に対するより強い効果を期待できる
  • FEX及びPSEはいずれも大部分が未変化体として排泄され、排泄に関与するトランスポーターが両薬剤で異なることから、薬物動態学的相互作用が生じる可能性は低い
  • 健康成人を対象とした試験で、空腹時投与に対する食後投与の血漿中Cmax及びAUC0-72の幾何平均の比はそれぞれ0.35、0.37に低下し、バイオアベイラビリティ(BA)は食事により低下することから空腹時服用となった(要因は十分に解明されていない。FEX単剤では吸収後の体内動態に食事が影響を及ぼす可能性はほとんどない)
  • 国内第II/III相試験と海外第III相試験では、有害事象の発現状況が大きく異なった
  • 海外の試験ではでは頭痛や不眠症などが10%以上で認められたが、日本の試験では有害事象そのものの発現率がかなり低かった(有害事象の確認方法が、海外では患者日誌であるのに対し、日本では患者からの自発報告に基づいて医師が記録したことなどが理由であるとした)
  • 海外市販後安全性情報において9例の薬物乱用が報告されている。いずれも非重篤な事象ではない
  • これまでに得られている知見からもPSEに対する薬物依存について大きな懸念は示唆されておらず、本邦でも現時点で薬物依存に関連する問題は生じていないことから、薬物依存について臨床的に大きな問題となる可能性は低いと考える
  • 有害事象は投与開始後3~4日まで比較的多く出現しそれ以降は漸減傾向を示すことから、メーカーではXか月(肝心なところがなぜか伏字)投与された場合でも安全性は担保可能と考えられると説明
  • また、1997年に発表されたロタラジン5mgとPSE120mgとの配合剤による6週間投与の試験でも不眠を除き有害事象はプラセボ群と同様程度であったとして、本剤が長期投与された場合の安全性に特段の問題はないと考えられると説明
  • 一方機構では、2週間を越える長期投与試験が実施されていないことや、ARIAのガイドラインで定期的な使用が推奨されていないこと、本剤の長期使用により薬物依存が発現する可能性も否定できないとして、本剤の使用は必要最小限の期間に止めることを添付文書等で十分に注意喚起することが必要と考えた

 どうも、日本の臨床試験において有害事象の確認が十分行われていなかったようです。これまでの指摘のように、心血管系(動悸、頻脈、心筋梗塞)及び神経系(痙攣、意識消失等)の有害事象の発現には留意することが必要のようです。

 なお、MSからもらったパンフによれば、ディレグラ配合錠は新薬扱いになるようで、1年間は長期投与ができません。

 それと、実際の処方はどのように行われるのでしょう? こんな感じですかね?

Rp. アレグラ錠       2錠 1日2回 朝・夕食後 xx日分
    ディレグラ配合錠 24錠 1日2回 朝・夕食間 14日分
    (鼻づまり時にアレグラ錠に代えて服用)

関連論文:
Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) guidelines: 2010 Revision
(J Allergy Clin Immunol. 2010 Sep;126(3):466-76)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20816182
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(10)01057-2/fulltext

(Full online version)
http://www.whiar.org/docs/ARIAReport_2010.pdf
( Question 27 Should intranasal decongestant be used for treatment of allergic rhinitis?)

関連情報:TOPICS
 2012.12.20 ディレグラ配合錠は長期連用には適さず
 2012.11.16 ディレグラ配合錠ってニーズがあるのかなあ

 1月28日 22:45 リンク追加


2013年01月17日 18:31 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    PMDAに詳細資料がアップされました。

    ディレグラ配合錠・申請資料概要
    (PMDA 承認審査情報)
    http://www.pmda.go.jp/drugs/2012/P201200172/index.html
    http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P201200172/index.html

  2. アポネット 小嶋

    先日MRにどのように処方されるのか聞いたところ、アレグラとディレグラの同時処方は保険上難しいのではとの話でした。(各都道府県の解釈によって同時OKという可能性は??)

    となると、アレグラも含めた他の抗アレルギー剤を飲んでいた人(現実的にはアレグラ限定になってしまうと思いますが)が、「まだ薬はあるんだけど、鼻づまりがひどくなって受診しました」というケースに2週間だけ処方されるというパターンになるのでしょうか?

    発売は28日ごろのようです。