子宮頸がん予防ワクチン、安全性情報の充実は必要ないか?

 昨年12月22日に販売が開始されたGSK社の子宮頸がん予防ワクチンのサーバリックス(TOPICS 2009.12.22)ですが、接種費用がかかるということから、自治体によっては公費で一部または全額負担、さらには集団接種(栃木県大田原市)といった動きがあることについて皆さんもご存じだと思います。

 メディアでも最近取り上げる機会が多い中、4月10日の日テレNEWS24が、12~18歳の少女に2年間、集中的に接種させる計画を進めている英国の取り組みを伝えています。(動画有り、リンク切れしたらすみません)

子宮頸がん予防ワクチン、公費負担の英国
(日テレNEWS24 4月10日)
http://news24.jp/articles/2010/04/10/10157137.html

 TOPICS 2009.9.13 でも紹介しましたが、この接種計画は全て公費負担で行われていて、日テレNEWS によれば、学生は学校で集団接種を、働いている少女は薬局などで接種をうけるという仕組みのようです。これにより接種率が8割以上に達しているそうです。

 一方、報道にはありませんが、多くの人が接種を受けることもあり、英医薬品庁(MHRA)では、有害反応の報告について積極的な収集と情報の開示にも努めています。(当然といえば当然ですが)

Human papillomavirus (HPV) vaccine (MHRA)
  (制度についての説明もあり)

 英国では、日本と同じサーバリックスが使用されています。ちょうど下の方に、4月9日に更新されたばかりの「Suspected Adverse Reaction Analysis CERVARIX Human papillomavirus (HPV) vaccine」のデータが掲載されています。

 ちなみに、米国国立ワクチン情報センター(NVIC:National Vaccine Information Center)(http://www.nvic.org/)のウェブサイトでは、ガーダジルについての有害反応の報告などの情報をまとめたサイトがあります。

Gardasil and HPV Infection Get the facts(NVIC)
http://www.nvic.org/Vaccines-and-Diseases/hpv.aspx

 公費負担や集団接種を行う意義は大きいとは思いますが、新しいくすりであることにはかわりませんので、今後、公費負担や集団接種を実施していくのであれば、新型インフルエンザワクチン並の、安全対策と安全性情報の充実も必要ではないでしょうか。

 また、接種にあたっては性教育の問題も避けられませんし、宗教・信条で接種を受けさせたくない保護者もおそらく存在します。そういった問題の議論の深まりも注目したいと思います。

関連情報:TOPICS
 2009.12.22 子宮頸がん予防ワクチンが販売開始
 2009.09.13 薬局での子宮頸がん予防ワクチン接種サービス(英国)
 2007.02.04 子宮頸がん予防ワクチン接種のコストとベネフィット


2010年04月12日 01:37 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    栃木県大田原市では5月13日から、小学6年生女子を対象に、全額公費負担で子宮頸がん予防ワクチンの接種が開始されますが、接種希望者は336人で、全対象者の98.53%と高率となったそうです。(ということは希望しないのは、わずか5人)

    学校集団接種が奏功 大田原市・子宮頸がんワクチン高い希望率
    (下野新聞5月12日)
    http://www.shimotsuke.co.jp/town/life/medical/news/20100512/321378

    集団接種は確実に接種率を上げますが、記事の通り、接種後に有害反応がないかどうかなどの健康状態を把握するのには、必ずしも十分な体制とはならないため、安全性確保に課題があります。

    接種後に副反応がないかどうか、児童の健康状態をチェックを行い、きちんと公表してもらいたいものです。

    ワクチンというと薬剤師にはあまり関係ないと思いがちですが、くすりの専門家としては情報が提供できるだけの一定の知識が必要でしょう。

  2. アポネット 小嶋

    地元紙の続報です。

    子宮頸がんワクチン、児童10人が集団接種 大田原で全国初
    (下野新聞5月13日)
    http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20100513/322046

    全国初ということもあり、子宮頸がん予防に詳しい自治医大の教授が立ち会ったそうです。