究極の門前薬局、誘致は4薬局(足利市)

 既に19日の地元下野新聞のすっぱ抜き記事で紹介済み(TOPICS 2009.11.19)ですが、大豆生田実足利市長は25日の定例記者会見で、移転新築中の足利赤十字病院値基地内に調剤薬局を整備する方針を正式に表明しています。

足利市の調剤薬局整備 4店舗入居の建物建設 総事業費は1億5千万円
(下野新聞11月26日 図入りの記事になりました)
 http://www.shimotsuke.co.jp/town/life/medical/news/20091126/240045

  議会などで配布された資料を総合すると、概要は以下の通りです。

  • 市は、同病院に貸与する土地の一部約4千平方メートルを返却してもらい、敷地面積1904平方メートルの土地に4店舗入居できる鉄骨造り648平方メートル(一店舗当たり48.9坪)の平屋の建物を建設する。(病院には同じ面積の代替の土地を貸与)
  • 薬事法等をクリアするために、南側の五十部運動公園に通じる市道(延長145メートル)と公園駐車場(面積1250平方メートル)を建設する。(市道と認定するには、不特定多数が通行する駐車場へのアクセス道路にする必要がある)
  • 一定の状況を付けて、業者を選定する公募(公募型競争入札)を行い、市に最も有利な条件を提示した業者に対し、提示された金額により店舗を貸し付ける。内装工事については、決定業者が施行する。
  • 概算事業費は1億5470万円で、内訳は店舗等整備費が9870万円、道路など公共施設等整備費が4400万円、補助金返還見込額(収益をあげる事業計画など目的外に整備した土地が使用されるため)が1200万円。

いろいろとコメントをしたいところですが、地元での立場もあるので、懸念となる事項のみ示します

  • 「民間にできることは民間に」という市長のポリーシーとの整合性がない 
  • 4薬局も必要なのか
  • 上限価格を設けるなど過度の競争を防ぐ必要はないか
  • 薬剤師会に入会しない企業が獲得することはないか
  • 患者や市民に、「足利市の薬局」「足利市指定の薬局」「足利市の推奨の薬局」といった誤解を生じる可能性はないか
  • かかりつけ薬局の意味を市民が誤ってとらえることはないか
  • 優位な立場を利用して、調剤報酬といういわば税金でまかなわれるものの一部が収入になることについて問題はないか(言い換えれば、ピンハネ!)

 関係者によると、やはり「一部の業者が収益を上げる事業に市が関与していいのか」などの反対の意見は少なくなく、12月に開催される定例議会でも議論となりそうです。

 おそらく、一両日中に市長本人のブログで記事の紹介と見解を発表すると思います。(先週は海外出張だったそうです)

大豆生田実のホームページ(ブログ) http://www.j-beans.jp/

 皆さんのご意見をお待ちしています。 

関連情報:TOPICS
  2009.11.19 足利市、調剤薬局誘致に事業費1億数千万を投入か
  2009.09.10 「究極の門前薬局」実現のために国と戦う(足利市長)
  2009.08.07 足利市の「究極の門前薬局」構想は実現するか
  2009.06.01 患者さんの利便性のために、行政が調剤薬局を誘致することは必要か?
  2009.04.27 地元に地元に薬剤師の首長が誕生。でも・・


2009年11月26日 10:05 投稿

コメントが7つあります

  1. アポネット 小嶋

    足利市HPにようやく定例記者会見の要旨が掲載されました。

    市長定例記者会見11月25日
    http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/01_kakuka-page/01_soumu/04_koho/bn_kaiken/20091125kaiken.htm

    入札方法については、

    「4カ所をそれぞれ入札し、それぞれ最も高い金額を提示した事業者が入居することになります。もちろん最低価格は設定しますが、金額についてはもっと精査してからになります。」

    と答えています。市民のためというよりも、市がピンハネするためにしか見えないんですが。
    きっと全国の大手チェーンが手に入れるのでしょうね。

    一方、

    「県の薬剤師会などへは話をしてあります。」

    と話していますが、記者会見の時点では地元の一部だけに正式な話があっただけです。確かに地元は県の支部にはなりますが、県の薬剤師会の役員がこの話を聞いたら怒ってしまいますよ。

    足利市会議員の織原義明氏もこの情報をHPに掲載しています。

    おりはらよしあきホームページ
    http://www.watarase.ne.jp/orihara/

    足利競馬場跡地への調剤薬局整備について
    http://www.watarase.ne.jp/orihara/keibazyo11.htm

    織原氏は1日にこの問題についてのタウンミーティングを行い、支持者・市民と意見交換を行っています。 

    私も参加したのですが、参加者からは「利便性を考えるなら院内調剤がよい」「調剤薬局を作れば、市がかかりつけ薬局を2つ持つことを強要するようなものだ」「公平性を帰すため、入札条件を決め、くじ引きで決めるべきだ」などの意見が寄せられました。

    記者会見要旨にあるように、市長としては年度内に、地質調査委託・設計委託費の補正予算を成立したいようです。しかし、関係者の声を聞くと反対の意見が少なくなく、すでに始まっている12月議会での補正予算案の上程は難しいようです。1月にこのため補正予算案成立のために臨時議会開催といった話もあるようです。

    とりあえずは、7日からの議会一般質問が注目です。

    平成21年第5回市議会定例会 質疑及び一般質問通告一覧表
    http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/005gikai/osirase/ix2112.htm

  2. アポネット 小嶋

    市長のブログでこの件についてのコメントがでています。

    開いた口がふさがらない(大豆生田実のホームページ12月4日)
     http://www.j-beans.jp/archives/2009/12/04/220821.php

    入札にあたって、利権が絡んでいるのではないかという指摘への見解ですが、薬剤師としての立場上、疑念が持たれるのは仕方がないかと思います。

    現時点では、今後の推移を見守りたいと思いますが、

    “それは患者さんの利便性を考えれば当然だ!”とありがたいお声を沢山いただいております。

    という主張に対しては、市民の全てが必ずしもそのように考えてはいないということだけは指摘したいと思います。

  3. アポネット 小嶋

    上記ブログ記事に

    「私は、調剤薬局については、患者の利便性は、何を置いても最優先されるべきであると思います。」

    といった、市長を支持する書き込みが入りましたね。

    医薬分業について、市民に間違ったイメージを植え付けないか、本当に心配です。

    こういった政治手法で、自らの政策を実現させようとする姿勢には疑問を感じます。

    一方でこんな書き込みも

    本当に市民のためになる薬局ということであれば、最低限下記の条件を提案します。
    1.薬局が可能である業務を行うこと
      例)服薬管理業務
        在宅業務
        無菌調剤
        一般医薬品の提供
        衛生材料の提供
        介護・福祉に関する相談業務
        など
    2.その業務を24時間365日行えること
    3.地域の薬局と連携を綿密に行えること
    4.地域の医療・介護・福祉の多職種との連携を綿密に行えること

    勇気ある薬剤師の方だと思いますが、私はこの意見には同意します。

  4. アポネット 小嶋

    来週には地元住民に対する説明会、1月8日、9日には市民を対象とした説明会を行うようです。

    全ては患者さんのために(足利市長の部屋2009年12月9日)

    全ては患者さんのために(市長のブログ2009年12月9日)
    http://www.j-beans.jp/archives/2009/12/09/224505.php

    ブログを使って世論誘導という感も否めませんね。

    患者さんの利便性って何なんでしょう?

  5. アポネット 小嶋

    23日、地元で説明会が行われています。

    下野新聞12月24日
    http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/region/news/20091223/256147

    市長を支持する声がある一方、「財政難の折、なぜ1億5千万円も掛けて市が薬局を整備するのか」「旧国道50号を挟んだ反対側に民間が薬局を予定している。『近くにあった方が便利』と市長は言うが、さほど変わりない」などの意見が出されたそうです。

    地元とということで、薬局に土地を売ったり、貸したりするなど、直接影響があることもあり、厳しい意見が出されたことが想像されます。

  6. 北海道で薬剤師をしているものです。古い記事へのコメントで申し訳ありません。
    小嶋先生は、おそらく大学で1つか2つ上のメガネをかけた先輩ではないかと思います。
    大豆生田氏は、囲碁部の後輩です。

    上記の調剤薬局に関連の記事で、大豆生田氏のブログにコメントをした記憶があります。
    自治体による敷地内への調剤薬局誘致は、かかりつけ薬局という考えを否定し、第二薬局を政治が推奨しているようなもので、患者様の利益に繋がるとは思えないという内容で書きましたが、このコメントはスルーされたままコメントとして載せられておりません。
    私が足利市の市民ではないのもあるでしょうし、耳触りの悪い内容であったことも影響しているのだと思いますが、彼のブログは、肯定的な意見しか載せていない感があります。
    私は、つい昨年まで地元の日赤の門前薬局におりましたが、病院の事情に過度に協調する傾向があり、とても、患者様の利益を優先と言う状態ではありませんでした。足利日赤の門前薬局様については、そのような薬局となることなく、患者様の利益を何より優先する薬局となるよう願うばかりです。

  7. アポネット 小嶋

    確かに眼鏡をかけています。コメントありがとうございます。

    この問題、建築の是非については議会では決着しているので、ここで議論してもどうにもならない問題ですが、やはりまわりから見れば異様でしょうね。

    TOPICS 2010.03.25 「究極の門前薬局」の整備が決定(足利市)

    確かに市長のブログでコメントをしてもチェックを受ける仕組みになっている(もちろんこうしなければ荒れてしまうでしょう)ので、スルーされたかもしれませんね。

    仲間の薬剤師もコメントを書きたいといっていましたが、たぶん掲載されないだろうと結局投稿しなかったみたいです。

    近い将来、リフィル導入なんて話もあるようですが、そうなったら地域の大規模な基幹病院近くに門前薬局が立ち並ぶということも少なくなるのでしょうか?