パブコメ結果に関わらず、改正省令は原案通り公布へ

 22日、注目の、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」の第7回会合が開催されました。資料も掲載されています。

第7回医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会(2009年5月22日開催)
  厚労省資料(5月26日掲載)    WAMNET資料(5月25日掲載)

下記WEBニュースが詳しく報じています。

パブコメも効果なく議論終了、医薬品ネット販売規制へ – 楽天は訴訟検討も
 (マイコミジャーナル5月22日)
 http://journal.mycom.co.jp/news/2009/05/22/077/

医薬品通販規制、「離島」「継続使用」のみ認める経過措置実施へ
 (Internet Watch 5月22日)
 http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/05/22/23537.html

医薬品ネット販売巡る攻防がひとまず終結
 (健康美容EXPOニュース5月22日)
 http://news.e-expo.net/news/2009/05/post-901.html

今回の検討会では、前回検討会後に行われたパブリックコメントの結果が示されています。

「薬事法施行規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」に関する意見の募集結果について
  (第7回 医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会 資料2)
  http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0522-5b.pdf

 パブリックコメントとして寄せられた総数9,824件の意見のうち、「経過措置に賛成」は42件(0.5%)であったのに対し、「経過措置に反対」は1,146件(11.7%)、「その他」に分類された「通信販売への規制自体に反対」は総数の84.9%に当たる8,333件に達したそうです。

 また、1,146件あった「経過措置に反対」の内訳は、通販規制に賛成の立場からの「このような経過措置は不要だ」という意見(692件)と、通販規制に反対する立場からの「この経過措置では不十分だ」という意見(454件)が含まれています。

 三木谷氏の「このパブリックコメントをどのように受け止めたのか」という質問に対し、厚労省は「意見は厚生労働省として拝見した。パブリックコメントは数字ではなく、これまで気付かなかった点が無かったかを確認している」と見解を述べた他、阿南久氏の「経過措置を不要とする意見が700件近くあるのに、なぜ経過措置を認めるのか」との疑問に対しても、「(パブコメは)我々が気付かなかったことがあれば加えていくもの」と回答し、結局省令の再改正案通りに行うことで押し切ったようです。

 今回の検討会については、本サイトでも随時記事等を紹介しましたが、正直なところ何のための検討会だったのかという感が強いです。今回のパブコメも提出する気にもなりませんでした。

 また、今回のネット販売の是非についての論議(WEB上のブログなどの書き込み含む)を見ると、いろいろ考えさえられることもあります。

 ネットでの書き込みで一番多いのは、医薬品購入時に説明を受けたことがない、質問を受けたことがない、また、店頭では高い薬を買わされるかもしれない、だから自分でじっくり選んで安く買えるネットで買いたいといった意見が目立ち、また、痔や妊娠検査薬など人に知られたくないといった声も少なくありません。

 一般用医薬品の通信販売継続を求める声を伝えよう!
   http://plaza.rakuten.co.jp/medicine/diaryall

 しかし、いつから「セルフメディケーション=自分で薬を選んで買う」ということになってしまったのでしょう。

 思い起こせば、平成に入り多くのドラッグストアは、管理するべき薬剤師が不足しているのにもかかわらず規模の拡大を追い求めました。彼らは薬剤師不足に対処するため、当時「いまどき、だれでもわかっているのにOTCを対面で売るのは化石」と言い放ち、消費者の選ぶ権利に名を借りたセルフ販売をすすめてきました。 

 これでは消費者が「薬の購入にあたって、説明を受けなくてもよい」「大衆薬は安全」と思うのは当然です。そしてその一方で、OTCであっても不要な人が使ったり、誤って使えばリスクが生じるということは忘れられてしまいました。

 これに対し、従来型の薬局はドラッグストアの品揃えや規模の拡大に対抗できず、漢方などのいわゆる専門特化(相談販売・通信販売)やネット販売に活路を見出してきました。

 ですから、ドラッグストア協会が登録販売者が確保できたからといって、通信販売に強硬に反対を唱えることはあまりにも都合がよい発言ではないかと考えてしまいます。

 日薬も同様です。会員の中に通信販売を行っている薬局が決して少なくないはずなのに、ドラッグストア協会や配置薬の団体との共同歩調を合わせるために、無理な論理展開を行ってきました。これから2年間で果たして、通信販売禁止の方向を打ち出し、会員を納得させることができるのでしょうか?

 これで、第三類だけではなく実質的に第二類の販売も今後二年間は継続(暫定的とはいえいくらでも拡大解釈は可能)されることになりました。届け出をしさえすればよいというのはなく、冷静にもう少し、ネット販売における情報提供のあり方や最低限のルール作りをきちんと行うべきではなかったと考えます。今後この点について、議論を全く行わないのでしょうか?

 おそらく、楽天などは6月1日以降も法律ギリギリのことを行い、違反を指摘されたら、法廷闘争に持ち込むという構図が考えられます。

 また、店舗販売(特にドラッグストア)で6月1日からきちんと情報提供が行われるかどうかも国民から大きく注目されるでしょう。おそらく、試買が行われ、「きちんとやっていないじゃないか」という批判の声にさらされるという不安もよぎっています。

 いずれにせよ、現場の薬剤師が改正薬事法の理念に沿って、日常業務を行わなければいけないということだけは確かでしょう。

関連情報:TOPICS
 2009.05.12 医薬品のネット・通信販売の経過措置に関するパブコメ
 2009.05.11 医薬品のネット・通信販売、2年間は一部容認へ
 2008.08.07 医薬品のネット販売制限は消費者の利便を損なうか?

5月25日18:40 26日11:00 リンク追加


2009年05月23日 00:17 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    25日、22日の検討会の資料がWAMNETに掲載されています。(リンクは本文)

    厚労省の資料では、経過措置に関する賛否の割合や、パブコメに寄せられた意見も列挙されています。

    JODAの後藤氏は、「インターネットによる医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する審議会 設置」についての要望書と、JODAに寄せられた省令改正案への消費者の声をまとめて紹介しています。

    三木谷氏は、21日に行われたシンポジウム(TOPICS 2009.5.21)の資料を出しています。

  2. アポネット 小嶋

    JODAの後藤氏の資料(恣意的に選択した部分もあるのでしょうが)を見ているのですが、ドラッグストアの販売方法の現状や登録販売者制度の問題、伝統薬や配置薬を対象外とすることへの疑問など、一般消費者はこういった業界への利権を守っているのではないかという不満があふれています。

    後藤氏資料
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0522-5d.pdf

    厚労省のパブコメ結果でも同様ですね

    「薬事法施行規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」に関する意見の募集結果について
    (第7回医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会 資料2)
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0522-5b.pdf

    ※厚労省も資料をアップしました(リンクは本文)